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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

ボブ・ディラン、ブリジット・バルドーがフランスで「ヘイトスピーチ」したとして刑事訴追。

ここ数日は、思想的難題ともいえる問題がなぜか目に付いた。まず列挙して、あとから感想を書こう(1)

AFP通信によると、米国人歌手ボブ・ディランさん(72)がクロアチア人をナチス・ドイツと同列にみなし憎悪をあおる発言をしたとして、先月、仏司法当局に事情聴取され、その後、刑事訴追された。

 発言は昨年、米誌ローリングストーン(フランス語版)のインタビュー記事に掲載された。ディランさんは、米国の人種問題に触れ、「奴隷主や(白人至上主義団体のクー・クラックス・)クランの血が流れていれば、黒人には分かる。ユダヤ人にナチスの血が分かり、セルビア人にクロアチア人の血が分かるように」と述べ、在仏クロアチア人団体が告訴…
 仏では人種や民族に基づく憎悪の扇動は刑事罰の対象となり、ディランさんは先月、公演のため訪仏した際、当局の事情聴取を受け…
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131203-OYT1T00352.htm

実は、有名人がフランスにおいて「集団の名誉毀損」(ヘイトスピーチ)と追及された例はこれが最初じゃない。
はい。

June 5, 2008
仏法廷:女優ブリジッド・バルドー、イスラム批判で有罪判決
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2008/06/brigitte_bardot.html
ブリジッド・バルドーと言えば……一世を風靡した女優で、今は動物愛護運動の熱心な活動家としても知られている。その彼女が「イスラム教徒がフランスを破壊しつつある」と批判したことで、先日フランスの法廷において、人種差別と憎しみを誘発した罪で有罪となり、一万五千ユーロの罰金が課せられた。…

……原因となったのは、バルドーさんが2006年の12月に当時国会議員だった現在のサルコージ大統領に向けて出した手紙の中で、イスラム教徒による羊を生け贄にする習慣について、フランスは「この人口によって鼻先で煽動されるのにはいい加減頭にきている。彼らは我々を破壊しようとしている。このような行動を我々に無理強いして我が国を破壊している。」と書いたことだ。

じぶんも何度か紹介したことある。

琉球聖地「男子禁制」はありか…伝統文化・宗教と近代的平等の対立 -
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130923/p3

ま、さてさて。自分が最初の記事で、ブクマにつけた感想だが(一部補足)

これはなあ…幕府が自己を権威づけるため導入した筈の朱子学が、どんどん自己展開して尊王攘夷となって幕府を崩壊させたような、そんな思想的皮肉がたっぷりの、逆説。
当人は「少数派の味方だからセーフ」だと思ったのだろう

これは、こういう文章を思い出して書いた。

私は怒っている、憤っている。しかし、同時に、歴史のある重要な瞬間に立ち会う喜びも感じている。それは、丸山真男が「日本政治思想史研究」を著す過程で、「封建社会における正統的な世界像がどのように内面的に崩壊して行ったか」を知りえた喜びに近い。
(略)
私は、そしてわれわれは、この民主主義社会・人権社会が、必ずしも経済や外交や軍事といった外部的な要因によってではなく、それ自身の孕むイデオロギー的な矛盾が発現することによって「内面的に崩壊」する瞬間に立ち会っているのである。
呉智英「危険な思想家」文庫173P)

危険な思想家 (双葉文庫)

危険な思想家 (双葉文庫)


「歌でノーベル文学賞をもらうかもしれない」ともいわれ、社会的活動、社会的発言に熱心だったボブ・ディランが、差別主義で刑事罰を受ける。

これが
「闘う民主主義」
「反ヘイトスピーチ(法規制)」
「自由の敵には自由を与えない」
という思想の、ある方向性をしめしていることも間違いない。この「闘う民主主義」はまさにその反対の「自由の敵にも自由を与えるのが自由」の思想と、一長一短であることもまた間違いない。


逆方向の前例も紹介しておく。

偏見が生んだ不当判決か、陰謀に打ち勝った言論の勝利か。イスラム批判?or中傷?の政党党首発言に無罪(オランダ)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110627/p2

…判決は、一連の発言を「政治的議論の一部で犯罪ではない」と述べた。
 ウィルダース党首は「言論の自由の勝利だ」と述べた。同党首は一連の批判を「イスラム教に対してであり、イスラム教徒が対象ではない」と移民への差別の意図を否定している。(略)… 同党首は、自身が作った08年の反イスラム短編映画「フィトナ」で、米同時多発テロイスラム教の聖典コーランの一部を結びつけた。イスラム教徒らが上映差し止めを求める民事訴訟を起こしたが、08年にハーグ地裁が「言論の自由」を理由に訴えを退けていた。

オランダ、フランス、どっちが人権意識が甘い?どっちが自由を重んじている?