統計学を知る 佐藤俊樹さんが選ぶ本
[文]佐藤俊樹(東京大教授・社会学) [掲載]2013年09月22日http://book.asahi.com/reviews/column/2013092200002.html
■どんな場合に使えないのか統計は今、何度目かのブームにある。「最強」と謳(うた)う本が30万部も売れ、一般の人向けのセミナーも好評のようだ。私も大学では1・2年生向けの統計を担当しているが、4、5年前から学生の数が急増して、教室と教員の手当てに毎年汗をかく。
「統計」の2文字には神秘的な魔力があるらしい。よく知らない人も、いやむしろ知らない人ほど変に持ち上げたりする。
すいません、「知らない人が持ち上げてる」の筆頭があたくしです(笑)。ただ弁明するなら、ブーム前から追ってました、というしか。
【文系の分野と思ったら理系の分野だよシリーズ】と称して、そのへんのアレを広く追ってます。
続けましょう。
…たしかに、統計はリスクをあつかう学問だ。統計にはいくつかの柱があるが、その一つは「おおよそを正確にみつもる」。どのくらい確かでないかをできるだけ正確に知ろうとする。不確実さをできるだけ確実にみつもる、といってもよい。
そのためには、やはり一定の知識や技術が必要で、だから「簡単にわかる」わけにはいかないが、良い本の見分け方ならいくつか簡単な基準がある。
リスクをあつかう学問である統計は、自分の限界にも敏感だ。まともな学問は大概そうなのだが、統計は論理が明確なだけに特に敏感なところがある。
■「すごい」は不要
だから、「すごい」とか「セクシー」とか連呼する本は要らない。何ができるかと何ができないかを、両方シンプルに解説した本を探すとよい。話題の、ビッグデータ関連でも同じだ。
統計は強力な道具になる。それだけに「こう使える」「ああ使える」というハウ・ツーだけが強調されやすいが、そういう入門や解説には、ときどき、大きなまちがいがある。
その点でも、どんな場合に使えないかを、真剣に解説しようとしている本がおすすめだ。そういう本は、結論だけ拾い読みしても、大けがを負いにくい。リスクが少ないのだ!
例えばD・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち』は……単なる経験則から確率論などを取り入れ「科学」へと進化した統計学の一世紀にわたるエピソードをまとめたおもしろ科学読み物。百年に一度の大洪水の確率、ドイツ軍の暗号を解読した天才、など興味深い29話を収録。
- 作者: デイヴィッド・サルツブルグ,竹内惠行、熊谷悦生
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: 文庫
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ギネスビールの社員が開発した酵母の増殖数の驚くべき検定法、死に至る“最適”な毒の量、ドイツ軍の暗号を解読した天才―。数と確率にまつわる29の統計学史上のエピソードを物語風に綴った、肩の凝らないサイエンス読み物。
というわけで、別に佐藤氏は一言もいってないが、こちらの判断で『統計学が最強の学問である」をDisる』とタイトルで要約させていただきました(笑)
あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。
- 作者: 西内啓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。
「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたしてどれだけの人が、その本当の魅力とパワフルさを知っているだろうか。
こっちの評価はどうなんだろう?

- 作者: カイザー・ファング
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2013/09/10
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