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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

未婚の母、非摘出子(婚外子)への意識が変わる…なら「鈴木先生」の”鈴木裁判”も過去のものになるか?

【日曜民俗学

「非嫡出子」の相続格差は違憲か? 弁護士が注目する「判例変更」の可能性
弁護士ドットコム 7月10日(水)19時41分配信
「非嫡出子」の相続格差は違憲か? 弁護士が注目する「判例変更」の可能性
結婚をしていない男女の間に生まれた子に認められる遺産相続の額は、法律上の夫婦の間に生まれた子の半分とされているが・・・

結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の相続分は、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする――。明治時代から続いてきたこの民法の規定が、見直されるかもしれない。この規定の合憲性が争点となっている裁判の「特別抗告審」の弁論が7月10日、最高裁大法廷で開かれた。大法廷は主に憲法判断や判例変更などを行う場合に開かれる。

民法900条4号では、遺言などがない場合、結婚をしていない男女の間に生まれた子(非嫡出子)に認められる遺産相続の額は、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の半分とされている。この規定が憲法14条で保障される「法の下の平等」に反して、無効なのではないかというのが争点だ

この判決が、本日ありますね。

婚外子相続格差規定、4日に憲法判断へ - MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130828/trl13082816310002-n1.htm

違憲判決はほぼ間違いない、と言われる。
さて、くしくも?
東京スポーツが大スクープを飛ばした。
「イノキ抹殺へ 狂虎新必殺技用意した」…じゃなかったか。

山本太郎氏に子供生まれていた ベビーとの2ショットも公開 | 東スポWeb –
http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/179468/

ふわっとした支持層はどうか知らないけど、中核層も含めとくに問題なく、政治活動は続くだろう。それはひとつには、同様に非摘出子がいる石原慎太郎と同じようなスター性もあるのだろうが、ひとつには「非摘出子」(婚外子)に対する感覚の変化、も大きくあると思う。
それはこの前の安藤美姫の「未婚の母」騒動もしかりだ。
つまりですね。

・既婚者が、配偶者以外の人と交際し、子供をもうける
・未婚者が、結婚前に交際中の人と子供をもうける

これはもともと、違法でもなんでもない。そして「モラル」の面からは…不道徳とたたかれる回数は、どんどん減っているし、その道徳の正当性もどんどん減っている。民事上の貞節義務はあるのだけど、まあ当事者間の問題ですな。後者に至っては、しごく健全にも、いまは「不道徳だ」とたたく側が反撃を食らって叩かれる時代になっている。いい時代ですね。まあ「個々人のライフスタイルの問題だ」、という話になるのです。
 
アメリカにおいては、政治家の離婚結婚、不倫交際は「政治家の資質の話」と無条件に見なされて公の場での追及を受けるのだが、おそらく世界の大勢は、それを「性のマッカーシズム」と揶揄するフランスなどヨーロッパ的な風潮になっていくのだろうし、日本も山本・安藤のようになっていくのでしょう。細野豪志氏も、そろそろ無罪放免となっていいような(笑)。

「結婚前に妊娠(させる)なんてふしだらだ」と生徒が先生を責める「鈴木先生」クラス討議編は、いつ過去のものとなるのか?

ただ。
上のような話は非常にいい方向だろうと個人的には思うが、それでふと思い出したことが。

ここ10年の日本漫画の中で、もっとも重要な作品群のなかのひとつである武富健治氏の「鈴木先生」。
自分は何度か、「論理のマジック、論理の迷宮を描く面白さ」「『THE WAVE』にもつながる、人間心理や人間関係の操作」「演劇的心理操作」など自分が興味をひく話題でかいたことがあった…けど、この作品のすごさや、自分が何を面白かったのかはまだ書ききってないな。
いちど試論として、映画評に絡めてかいたぐらいだ。

■映画「THE WAVE ザ・ウェイヴ」を見て、思い出したのは「鈴木先生
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091204/p5

さて、この「鈴木先生」の中盤から後半にかけて…「@鈴木裁判」と題された章がある。裁判と言ってもクラス討議なのだが…。
話はけっこう単純で、主人公鈴木先生は、かねてから交際中だった女性が妊娠したことがわかり、その後婚約、結婚することを決める。
鈴木先生は的確なクラスの把握や、思慮深い生徒指導で、多くの生徒から慕われていた先生。
だが、多感な中学生から見て、
「結婚前に女性を妊娠させて、その後に結婚するなんてふしだらだ!」
「授業では避妊指導をしているくせに」
となってしまい……やや現実の中学校から見ると突飛な気もするが(笑)その議題をクラス討議しよう!!という展開になる。

鈴木先生 6 (アクションコミックス)

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  • 作者:武富 健治
  • 発売日: 2008/11/28
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鈴木先生(7) (アクションコミックス)

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  • 作者:武富 健治
  • 発売日: 2009/04/28
  • メディア: コミック
その後の討議は、
実際の中学生や先生がそういう思考や議論をするか、という意味でのリアリティはやや欠けている(意図的に捨てている)ものの、その分で別の、討議や議論にともなう”リアリティ”が浮き彫りになっていて、実にスリリングだ(これは同作品全体にいえると思う)。
自分はこの「鈴木先生」とくに鈴木裁判編を、岩明均「雪の峠」と並んで、「日本三大会議漫画」の二つと思っている。あとの一つはこの前、仮に選んだんだけど…忘れた(笑)。おいおい思い出すか、あとで選びなおします。
雪の峠・剣の舞 (講談社漫画文庫)

雪の峠・剣の舞 (講談社漫画文庫)

  • 作者:岩明 均
  • 発売日: 2004/10/08
  • メディア: 文庫


ただ…これからの流れ的に、または「あるべき」論としては、鈴木裁判の大前提となる「先生が、女性を妊娠させてからその人と結婚するなんて!!不道徳だし、裏切られた!!」という理論や感覚は消えていくし、消えていくべきなのだろう、と思うのです。

鈴木先生、相手が妊娠してから結婚するんだって」
「それが何か?」
と、生徒や保護者、同僚教師などがごく自然にスルーする…ようになっていくのでしょうかね。「できちゃった婚」が「授かり婚」に、やや人工的に言い換えられてきたのも、ちょっとそういう言い換えには抵抗があるが、自然な変化としてならあり得る話だとは思う。
ちなみに「日曜民俗学」的に記録するなら、中村和裕選手が結婚した2008年は、まだ中村が敢えて説明する、なじみのない言葉でした。彼の造語かな?と思ったぐらいで。

http://blog.livedoor.jp/nhbnews/archives/51630064.html
2008年07月19日
【国内総合】 中村和裕が結婚。式は 20 日に < Gryphon
http://ameblo.jp/kazism/entry-10117728250.html
…7月20日
わたくし結婚式を行います。
結婚します。
あわせて子供もいます。

できちゃった婚と言われがちですが
私の場合は
さずかり婚です。
(略)
そんなこんなで父親に・・

鈴木先生」は今後も長く読み継がれていく作品だと思うが、将来文庫や全集になったとき「編注 2000年代初頭には、妊娠後にその相手と結婚するのは『ふしだら』だと考える感覚が一部にはあった。」と注釈が必要になっていくんじゃないかなあ。



これは近い将来、「カ、カテエ…まるで溶岩石のように凝り固まったご両親のアタマ!」、いやそれは表現が変だ、「実に古くて因循姑息、愚か極まりないご両親(特に父親)だね」「この生徒キモッ!なにこの発想…ヘンなカルト教団のヒト?」と受け止められていくのではないか、という予想です。
いや今って、まさにその「過渡期」じゃないかな?みなさんの周囲ではどうだろう。


たしかドラマでも、この章は映像化されているよね?

鈴木先生 完全版 DVD-BOX

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  • 発売日: 2011/09/07
  • メディア: DVD


「これまでの相続、ぜーんぶやりなおし!!」になるのか?

これは朝日新聞の、7月ごろの解説記事だったけど「もし違憲判決が出たら、これまで過去の規定に従って決められてきた相続はすべてやり直しとなりかねない」という懸念が一部の法曹界であるとか。
どうなんだろうね?時効やら、関係者が亡くなったなどは別にして、コストがかかっても、やり直すしかないかもですね。

そもそも民事上の、夫婦の「貞節義務」って、国家権力が道徳で人を縛るものじゃないですかね?

結局、結婚した夫婦が別の人に好意を抱いて、そのパートナーシップが変わるとしても、それが「個人のライフスタイル」であるというのは定着している。
しかし、そうなるとそれに対して賠償なりの義務まで発生する。突き詰めて考えていけば、それは「結婚とは何ぞや」とか「結婚はなぜ法が保障しなければならないのか」という話になり、同性婚や複数婚の問題ともつながるような気がした、のでした。

そういえば福田恆存も、それに関する面白い文章を書いていたな。
「浮気を(不道徳ではないと)認めるなら、もともと結婚制度をやめて乱婚制にすればいい」という、過激を気取った作家のエッセイを斬る形で書いた評論文だった。