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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

学校図書館の「ストライクゾーン」に入るような、入らないような漫画を妄想してみると…

こっからのスピンオフ。

政治的に正しいグロテスク」と、その教え方に関する考察(「はだしのゲン」&「銀の匙」…または「肉喰う人々」考察編 -
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130824/p2

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130826/edc13082616570001-n1.htm
松江市教委が市内の小中学校に漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を求めたことをめぐり、市教委は26日、臨時の教育委員会会議を開き、暴力描写や歴史認識について内容に踏み込む突っ込んだ議論は避け、「手続きの不備がある」として制限要請の撤回を決めた。
…暴力描写や歴史認識については「過激な描写はあるが物語全体に影響することではない」「歴史認識は制限の理由ではなく、改めて問題にする必要はない」などの意見が出て、突っ込んだ議論はされなかった。一方、制限要請に至った過程を問題視する声は相次ぎ、制限要請を撤回して各学校の判断にゆだねる形で決着した。

オトナの解決で、正直おもろしい展開にはならなかった。

さて。
今回の騒動で「図書館の自由」宣言などがあらためてクローズアップされ、例えば左右の弁別なく、記録と智を蓄えるのが図書館である、ということは広く知られるようになってきた。
だが、とはいえすべての図書館はスペースも予算も有限で、無限に本を買って並べることはできない。
そして、特に漫画…は、理論や理屈はさておいて、実際に棚に並んだ本を見れば、ある種の基準やラインがあるんだろーな、ということはまさに子供でも分かります。
左右だ平和だ人権だ…ということでは必ずしもないが(その実、大いに関係してくるが)、要は「歴史」だ「科学」だ、「社会(政経)」だ、という、そういうエクスキューズがあってはじめて図書館、さらには学校図書室に並ぶ。
ただ、性表現や残酷描写も、大いに関係してくる(これは以前、直接司書に聞いたので間違いない)が、一方で今回の「ゲン」のようなこともあるのだ。それに実際、司書だってすみからすみまでずずずいと、購入図書に目を通しているわけではない。

そんな現状から
「図書館にナニカのまちがいがあれば置かれかねいが、置かれたら置かれたでいろいろタイヘン」な漫画は何かなー?と妄想してみました。野球で例えると「ストライクゾーンからボールひとつ外す」ような感じの(笑)。
では推薦。

闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

  • 作者:真鍋 昌平
  • 発売日: 2004/07/30
  • メディア: コミック
いきなりストライクゾーンどころか、ビーンボールじゃねえか(笑)。でも今回の騒動で出てきた「描写が残酷なのは残酷な現実を描いたからだ。目を背けてはいけない」論法が通用するなら、これも通用しまくりのような。子供に読ませれば、たしかに成人してからカードやサラ金を野放図に利用することは無くなる様な気がしないでもでもでもない。性表現、暴力表現やや多し。

東西奇ッ怪紳士録 (小学館文庫)

東西奇ッ怪紳士録 (小学館文庫)

水木御大はなにしろNHKの朝ドラにもなっている。図書館で決定権を握るエライさんの目を欺くことなどたやすい(笑)。精霊などオカルトの話も、性表現もそれなりにあるが、それより長編「劇画ヒットラー」をセルフリメイクした中篇「国家をもてあそぶ男」がね。もちろんヒトラーを表題のように批判しているのだが、なんかその他の登場人物と同じ地平で「面白がっている」感も……いやいや実際の戦争体験者で片腕まで失ったかたなんだから、そんなことはないっ。ありえないっ。考えるのをやめろっ。
 
寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス)

寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス)

  • 作者:岩明 均
  • 発売日: 2003/01/21
  • メディア: コミック
実は自分、ことしは「夏休みにSFをはじめたい中学生が最初に読むSF入門編」的な紹介記事を書きたいと思っていて、そのリストにもあがっていた。だから珍しく?中学生に読ませたい、というのは本気の作品なのだ。だが、ご存知の通りぐしゃり、バサリ、そしてパックン……な描写がアレなわけだからして。この前の話で言えば、「グロい。」と拒否する子は確実に一定の割合でいるだろうな。 しかし「生命」というテーマについて深く訴えるものがある、という点では手塚治虫にもはだしのゲンにもひけをとらんぜ?これはある意味、図書館への挑戦だな。寄生獣」と同様。こっちのほうがある意味「厨二」性が高いので(笑)「生きるとは」「人間とは」のようなしゃらくさいテーマは前面に出てるし。性表現、暴力表現は言わずもがな。社会的な素材を扱っていることは間違いないわけだが、軍国だ戦争をおもちゃだという声に耐えられるか。あと「潜水艦の構造上、このような動きをすることはあり得ない」的な声もだいぶうるさい(笑)。読者がまず沈黙しろ(笑)

手塚治虫アドルフに告ぐ」が、独裁者ヒットラーがやった人類への犯罪に対して多くの少年少女に知ってもらう、という意味で図書館に並んでいるなら、金正日毛沢東についても同じことがいえるわけで。ちなみに話題となった、チベットとおぼしき地域(旧国家)を描いた「慈悲と修羅」も収録されているわけだが。
マンガ 金正日の正体 (小学館文庫)

マンガ 金正日の正体 (小学館文庫)

  • 作者:李 友情
  • 発売日: 2006/09/06
  • メディア: 文庫
上と同様。
鏡の国の戦争 (潮ビジュアル文庫)

鏡の国の戦争 (潮ビジュアル文庫)

「戦争を風刺する、といってもテーマは反戦とかじゃなくて、ひたすら笑わせるだけだ!」ということに関係者が気づかなければ勝ち。ちなみに双葉文庫の、いしいひさいち文庫全集にももう収録済みのはずだが、出てこなかった(今入手可能なのはたぶんそっちの版。)

[asin:4575298255:detail]

本そういちの「拉致問題漫画三部作」。これは図書館に置かない理由がなさすぎて、ふつうにストライクゾーンに入っちゃうかな。失敗だ(ただ、置いてある図書館を実際にはみたことない)

加治隆介の議(1) (講談社漫画文庫)

加治隆介の議(1) (講談社漫画文庫)

社会のことについて、よいこに興味を持たせる本を、とかいう、図書館のエライさんにはすんなり通じすぎてしまう本。てか、「課長島耕作」が”社会を知るいい本”?と評価されて並んでた図書館を知っててな…ならこれも載るか。図書館は面白いつまらないを判定する場所ではないっ。性表現も多少あったようなないような.歴史と機械について学ぶことが悪い、と言えようはずがない。はずがないんだが…これが学校図書館にある図を想像せよ。


はい、ゴー宣。今回の騒動でも、最初の陳情者か誰かが「はだしのゲンとゴー宣を一緒に置く解決策もある」と言ったとか言わなかったとか。PHの中和じゃないんだよ(笑)。ゴー宣シリーズなら別にお好みで「反差別論」でも「運動論」でも「戦争論」「靖国論」「原発論」でもいいんだが…図書館(学校図書室)にゴー宣を置くことを許容するかどうか、という、名前だけで象徴的な意味が出てくるかな。この本を選んだのは、そこだけ切り取ると「独裁者率いる侵略軍に抵抗する自衛国民戦争」になってしまう「占守島戦争」を描いているからだ。いや実際、これは漫画自体としてもかなり迫力のあるものでね…。
鬼平犯科帳 57 (SPコミックス)

鬼平犯科帳 57 (SPコミックス)

図書館のエライさん、を勝手に想定して勝手にバカにする藁人形論法もあれだが、「鬼平」と聞いただけで連中はフリーパスさ(笑)。濡れ場(性表現とは言わない)多し、暴力も多し。

1989年に実際に発生した「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の事実をかなり取り入れた作品。もちろん性描写も暴力描写も多いのだが、それが残酷だとしたら実際の事件が残酷だったのであり、目を背けてはならない。むしろ多感な思春期の少年少女にこそ読んでもらい、考えてほしい…という論は通用するかどうか。
http://d.hatena.ne.jp/rna/20040506/p1
に少し詳しい。

創価学会と対立した大石寺門主がいかにけしからんかを描く社会的漫画。それも親の代までさかのぼって……まあ法力、じゃなかった迫力はあるっつえばある。

[asin:4047290254:detail]
社会問題を語っているじゃないか。これもまあ、ふつうにストライクゾーンで、学校図書館に置かない理由がない。2012年の衆院選の「不正選挙」についても語られていて、子供が社会に目を開くきっかけにはたいへんよろしい。

戦場漫画シリーズは「反戦漫画」です。だって最後に「戦争はむなしい」とか言ってるもん。ほかがかっこよくても、それは平和を願うための演出っ。

新カラテ地獄変 孤狼放浪編 上 (KCデラックス)

新カラテ地獄変 孤狼放浪編 上 (KCデラックス)

  • 作者:中城 健
  • 発売日: 2012/06/07
  • メディア: コミック
武道、スポーツを通じた国際理解っ。…二度目のビーンボール、危険球退場かな(笑)。さすがにこれが図書館で開架措置をされてたら、エライさんも引責レベル。