憲法記念日関連で、以前書こうと思ったことを手短に。
この前、「天賦人権」で盛り上がったのは昨年末ぐらいだったか。
■「天賦人権説」の議論(否定論)について、ちょっと資料を記憶で紹介しつつ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121216/p2
からリンクも貼ってありますから、過去の議論も読めますね。
そのときに紹介し切れなかった話。
「天賦人権」・・・で思い出すひとつの光景が、アメリカのある男性が答えたインタビュー。銃犯罪についてのニュースだったが、何年前の、何の事件に絡んでかは、あまりにあっちでそういう事件が勃発するので忘れてしまった。
とにかく、複数の銃規制賛成、反対論が通り一遍に並べられたインタビューだが、そこで銃規制反対の中年男性が語った言葉(記憶による大意)
銃規制には反対だよ。そもそも銃を持つ権利は、われわれが捨てたくても捨てられない、天賦の人権だからね
たしかふき替えの「てんぷのじんけん」が耳で聞くとちょっと変換に手間取って「えっ?」というか「こなれてない言葉をつかうなあ」と思ったので印象に残ったのがひとつ。あとひとつ、このごく短い言葉を覚えているのは
「それを『違いますよ』と説明して、証拠を出す論理が・・・少なくとも俺には見つからん!!」
と白旗を揚げたからだ。
もちろんそれは「いかに人権がフィクションであるか」「しかしフィクションだからこそ、そう主張すれば(されれば)崩しようが無いか」を証明しているのであります。そういえば北欧のどこかだっけ、最近「インターネットのブロードバンドに接続できるのは、人民の権利、人権である」という議論があったような、実際に成立したような・・・
記事あった
■フィンランド、「全国民ブロードバンド接続」実現に向けて前進 - 7月から法律施行
http://wirelesswire.jp/Watching_World/201205091051.html
インターネットへのブロードバンド接続を「国民の権利」とするフィンランドで、この(※2012年)7月から「国民皆接続」の実現に向けた法律が施行されるという。
■モバイルブロードバンドは基本的人権か?
http://mobile.slashdot.jp/story/12/10/13/0530228/
とにかく「銃を所持するのは天賦の人権」という人に、それは天賦の人権ではない、と説得するのは俺の力量にあまる話です(実際に会った事はないし)。どこかのだれかが、俺ならそれを出来るというなら任せた。
自分は今は、これを貼るのみ・・・
「人民主権(Government of the people)」についての呉智英論考を原文引用しときます
上の過去記事
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121216/p2
で、多くのスペースを割いて呉智英氏の論考を紹介しているのだけど、そのとき手元になくて紹介できなかった部分を、憲法記念日ということで紹介しとこうと思います。とくに「主権」に関する部分を抜き出します。
ここの文庫版48.49ページ…。
「人民のための」政治、有能な人民の力をそれぞれに発揮し得る「人民による」政治は、いつも理想とされていたのである。それは理想に過ぎなかったではないか、というならば、民主主義社会においてだって同じくらい理想にすぎない・・・(略)
- 作者: 呉智英
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ただ「人民の」という点だけは民主主義のほうにあり、封建主義のほうにない。だが「人民の」という点があったほうが、どうしてすぐれているといえるのだろうか。私には、これがそんなに大切なこととは思えない。
この「の(of)」は、所有あるいは淵源といった意味であろう。しかし、政治組織が、「人民によって」「人民のために」運営されているならば、あえて「人民の」である必要があるだろうか。
(略)
封建時代には、国家は「神の」「天の」ものであった。それがいやで「人民の」とすることに、はたして、気分以上の意味があるのだろうか。よしんば、「皇帝の」ものであったとしても「人民による」「人民のための」政治が完璧に実行されているならば、それは現代人が勝手に想像しているように不幸なことと言えるのだろうか。
さらにそれが不幸である場合でも「人民の」政治を主張せず「人民による」「人民のための」の二点だけを主張する革命によって不幸な政治組織を改変することだって、少なくとも理論上は不可能ではないはずだ。
このように考えてみると「人民の」という規定は、封建主義に対してきわめて”気分的”に宣言した規定、無理に持ち家不動産登記した規定、ということになる。この点だけでも民主主義の公理は、すでに虚構性を備えていると言えるのだ。
あ、後で見つけた。
ちょっと違うけど3分20秒ぐらいのところが関連しているトーク。