今年3月に語られたスピーチなのだが、なぜか最近話題になって自分も知った。
この「文字起こし」もある。
【全文起こし】小泉進次郎:自衛隊学校卒業式での素晴らしい祝辞
2012年3月12日に行われた陸上自衛隊高等工科学校の第55期卒業式。地元・横須賀出身の議員、小泉進次郎氏の祝辞が素晴らしかったです。7分間、メモを読むこともなく、堂々としたスピーチでした。その全文起こしです。 更新日: 2012年12月20日RSS
http://matome.naver.jp/odai/2135598069227859201
「滑舌と政治家」について
国会議員だけでなく、地方政治家、自治体の長らの話を聞くとなんとなく分かるのだが、やはり「声の良さ」を持っている政治家は上に行く可能性が高いっぽい。(もちろん、例外も多い)
これは理不尽だといえば理不尽だ。政策、識見と「声がいいか」は基本的に別のもののはず・・・
だが、政治家の仕事において、とくに民主主義国家であるならば・・・、演説と討論が占める割合が多い以上、そこで評価されてしまうのはいいか悪いか、道理があるか理不尽であるかを超えて「しかたない」としか言いようがない。
声の良さは政治家の武器であったし、これからもあり続けるだろう。もちろん声そのものというよりは、落語で言われる「リズムとメロディ」だ。話にも歌と同様に、リズムとメロディがある、と落語家が言っていて、ああそうだな、と気づかされたんだが、その心地好さがあると、だみ声もむしろ個性になる。
ちなみに声で上にいった人に、別の業界だが姜尚中がいると思う(笑)。
でまあ、小泉ジュニアの語りの「リズムとメロディ」は、さすがに優れていると言わざるをえない。そこは家業だからな。小泉屋四代目だからな。また、かなり長い文章をプロンプターや原稿を読まずにやっているのも驚き・・・思想や政策が問われる前に、こういうところばかり見られるのもアレだし、逆に無名の一年生議員でも、同じぐらいのスピーチが出きる人もいるのだろうけど、ネットで注目されて全文起こしされ、こうやって話題になるというのは、梶原一騎いうところの「人気とゼニは集まっているところにさらに集まりやがるゼ・・・」ということだったか。
で、滑舌(この「滑舌」ってIMEにないですよね)ということですと、安倍晋三次期首相は「例外」に属する。
選挙期間中
「日本を取り戻す」というテレビCMが流れたが、あれで
「みなさまとともに・・・・(タメる) XXXXXXで!!」
と決めていたが、あれ後半、何て言ってるのかよくわからなかった。「あれ?なんて言ったのかな?まあ、あとで流れたときによく注意して聞こう」と思っているうちに、選挙期間が終わってしまった(笑)。
そうやって意識に止めることを狙ったステマだったか?
聞きなおすか。
「ソウルフル」?「総合力」?
てか、最後だけじゃなくて、全体的に彼は滑舌が悪かった。
自分も滑舌は非常に悪いほうだから、同情するしかない。
内容について
twitterにもかいたが、やはり評価できるのは、「ここを卒業しつつ自衛隊への道を選ばなかった生徒」への言及部分だと思います。
最後に私が一言申し上げたいのは、自衛隊の道をこれから選ばなかった5名。依願退職をなされた5名の皆さん。私はその5名の皆さんが両肩に担っている使命は非常に大きいと思っています。多くの国民は高等工科学校という存在を知りません。皆さんのような年でこれだけの日々を、厳しい訓練を乗り越え、社会に出る皆さんの存在を知りません。その皆さんの存在を社会に届ける、そしてこの本校で学んだことをこれから民間の世界で生かし、活躍される5名の皆さんは、3年間学んだこと、そして同期がこれからも自衛隊で頑張る姿を、多くの出会う皆さんに伝えてください。それが皆さんの役割です。
それを思うと、自衛隊の道をこれからも進む多くの方、そしてそうではない方、私は両方とも大きな意義があると思います。
これは、杉山隆男の「兵士」シリーズで読んだのだが・・・
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そこに目配りしたことは、良かった。(中学・高校でも進学者と就労者に分かれるわけで、祝辞のひとつの「型」なのかもしれないけど)
行く側と行かせる側、そして「共感」について
最近、これがホットエントリで話題になりました。山形浩生ブログ。
■三浦『シビリアンの戦争』:シビリアンコントロールは本当に有効か?
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20121219/1355900200
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・・・軍人たちは、戦闘で真っ先に死傷するのは自分たちだ。だから勝算のない無意味な戦争にはきわめて慎重だ。むしろ文民たちのほうが、独裁政権打倒とか対テロとか、その時の勝手な思い込みと勢いで、軍人たちを(民主主義のおかげで!)戦争に引きずり込んでいる、と。すると、文民統制というのは本当に有効なのか?
恐ろしいながら、これが正鵠を射ていることは否定できない・・・
別に小泉四世のスピーチは好戦的でもなんでもないのだが、四世が「行かせる側」にあり、卒業生が「行く側」であることも、これは否定できない。
と言っておきながら、自分はその区分について
「政治家も国民も『心しておく』べき戒めではあるけれど、究極的に突き詰めていけば無効な言説」
であると結論していた。
下の記事は、過去の記事にも飛んでいるリンク集になっているので活用してください。
■「あなたはどこにいます?」のジェシカ主義(銀英伝)は、菅直人がとどめを刺した。しかしそれでも…
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120304/p2
そのあと、もうひとつ記事を書いた。
■国会事故調、東電撤退問題…「きれいな清水社長」が全面撤退論を語ったら、どう反論する?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120620/p3
さて、「じゃあ政治家はどうすべきか」という話なんだが・・・佐々淳行というひとがいるよね。元警察官僚だが、東大闘争やあさま山荘事件、にもかかわり、70年代の極左暴力による肉体的な危機にはなんども遭遇した。
もちろん警察キャリア、幹部職ではあったのだが、太平洋戦争中は少年だったとはいえ「俺も<戦場>を経験したよ、『行く側』も経験したよ」と言われれば、平和な時代に暮らしたわれわれとしては反論しにくい相手だ。
この人の結論としては・・・「我々を行かせる政治家は「共感」を示してくれ。そうしてくれればわれわれは喜んで行く」と。
過去に書いてたが、この本だ。
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http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070214/p4
同書には
「小泉首相の『涙』が警官を奮いたたせた」
「老戦士を発奮させた女闘士の『蔭の偉功』」
という、警官や軍人(自衛官)の名誉を論じた2本の論文がある。最初の論文は、自分が原作の『突入せよ!「あさま山荘」事件』の試写会で小泉純一郎が涙を流しているのを見たという、ちょっと自慢が入っている話(ついでだが、この原作本は面白いものの、映画は涙を呼ぶような出来だったかなあ・・・)。
だが、ここからこう話が発展する。これをみた私は、勇を鼓してこれまでの総理が殉職警察官慰霊祭に一人も出席したことがない旨を告げ、今年度の式典への御出席を懇望した。小泉総理は「私は必ず行きます」と約束をし、そしてその約束は果たされたのだ。
冒頭に戻ると、小泉首相(当時)が出席したのは平成・・・
このへん、父親ゆずりなのかもしれない。
「共感」すればいいってもんじゃない。しかし「共感」がないのも実にまずい。
そんなもろもろを感じさせた、一本のスピーチでありました。