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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

軟禁中のイラン監督が自らを映す〜「これは映画ではない」を実際に見てきた。

まず、映画の概要は

■軟禁中のイラン監督が秘密に撮影し、データを持ち出した映画「これは映画ではない
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120927/p5

にてニューズウィーク記事を要約した話の通りですわ。

兎 2012/09/28 14:11
映画『これは映画ではないhttp://www.eigadewanai.com/ は、22日から全国順次公開中です。 
gryphon 2012/09/28 15:24
おお!情報ありがとうございます。たぶん日本では無理だろうと思っていました

と教えてもらったので行ってきました。
感想を箇条書き風に。
【注意:ややネタバレがあります】



・リンク先で見る前に書いたが・・・「笑の大学」が言論統制とそれへのとんち的な抵抗、というテーマであることや、撮影場所が限定されるから「舞台的」にならざるを得ない、との理由で、やっぱり自分の乏しい想像力で連想した「三谷幸喜作品っぽいなー」という感想は、やはり自分的には維持されました。だから、三谷ファンは一回見てみる価値があるんじゃないかな。
 
・これはドキュメンタリーなので(笑)固有名詞もいろいろあるし、何より登場人物は主観的にシリアスだが、このシチュエーションをうまく応用すると、まさに三谷的喜劇になるんじゃないかな。いや実際、ついぷっと吹き出す場面も個人的にはあった。不謹慎ながら。リメイクをしてもらいたいほど”魅力的なシチュエーション”ではある、やっぱり。
 
・自分が好きなテーマとして『ごっこ遊びもの』というジャンルにまとめ、そのうちの傑作のひとつとして考えるといいかもしれない。今後まとめてみよう。
 
・実際の監督はイラン政府の弾圧によって作品を作れないのだが「編集部の方針で、描きたいものを描けない」「商業的な問題で心血ををそそいだ作品が途中で終わる」(アバンチュリエ・・・)といった小さな、ささやかな悩みにも通じるものがあるかもしれない。
  
・軟禁はされているとはいえ、世界的に有名な映画監督だからそれなりに金持ち(あるいは外貨があってさらに相対的に富裕なのかも)。だからI-phone(かな、アレ?)をもっている。それでの動画撮影もストーリーに関わる。ただ、例のゴミ捨てアパート管理人(後述)も「それなら、自分も持ってますよ」とスマホを見せる。この人は苦学生、だが持ってる。・・・スマホの普及ぶりをあらためて実感した。
 
・そういえば軟禁前に、映画の問題で逮捕され裁判を今受けている監督が電話した弁護士って、実は女性なんだ。あとで監督の減刑署名運動に出てくる監督も女性。実はイランはイランなりの女性進出が、中東でもトップクラスであることは一部で有名だが・・・
 
・前回記事にあるように、これの骨子は「自宅軟禁され、映画製作も禁止された監督が、室内で舞台を仮に設定する(部屋の間取りをテープでつくる。「ガラスの仮面」でも学校のひとり芝居でそういうのあったね)。
そしてお蔵入りしていた幻の脚本を読み上げ、『ただ読むだから映画づくりではないよーん』と抵抗する」というストーリー。・・・だが監督は途中で脚本を放り出し、「これを読むだけで何か表現できるなら、映画なんて作る意味が無いじゃないか!!」と怒る。いやもっともだが、やる前に気づけよ(笑)。
 
・というところで、「実は監督のアタマの中にはこの『映画は撮ってこそ映画だ!脚本を読むだけでは映画ではない、と途中で投げ出す』という展開が最初からあったんじゃないか?」という”八百長説”をここで提起したい。イヤなんの根拠も無い妄想だが(笑)、ただ「そんなこと分かってただろ?」というツッコミもそこでは消化できるし、それでこそイラン神聖体制の表現抑圧への抗議、表題の意味につながってくるし、「犬を預かって」さんや「ゴミを回収に来ました」さんの登場も出来すぎているような気がするし・・・
まさに底が丸見えの底なし沼!!いや底すら見えない・・・。
 
・監督が脚本化したのは、チェーホフの短編だったそうな。
 
・最後に登場し、ドラマを大きく動かすのは、各階のごみを回収するアパートの管理人。実は正確にいうと妹だか弟の夫婦が正式な管理人で、時々手伝うのが彼。本来の身分はテヘラン芸術大学で学ぶ苦学生ながらインテリ、たぶん上流階級の子だ。そして、実は監督が「あの監督」であることは十分知っていたらしい。監督の協力者の一人とすれ違うと、「今の人、XXXの俳優ですよね?」(※これは勘違い)「ここでオーディションでもしているのかと・・・」、だから監督がカメラを向けると、シャツのボタンをしめなおすのだ(笑)。
 
・このアパートは管理人が各階のごみを回収する仕組みで、監督はアパート内の移動はOKらしく、エレベーターを使ったその「回収の旅」に同行。そして、その中で管理人代行の彼は驚くべき発言をする。
「たしか以前、あなたの部屋に警察が踏み込んで逮捕されたことがありましたね?そのときも僕は手伝いで、このアパートにいました」
しかし、話が核心に行くたびに次の階のごみ回収があり「あなたが犬を預かってよ!監督さんに断られちゃったのよ」というおばさんがあり・・・(笑)


というのが、作品を実際に見て印象に残ったシーンでした。
 
しかし八百長説があっしの濡れ衣で、この作品が完全ガチンコドキュメンタリーならば、あの管理人代行の青年はまったく意外な形で世界の芸術史に名前を残したことになるな・・・。「犬を預かっておばさん」と一緒に(笑)