SF的想像力、のひとつに、新しい機械や新しい乗り物、などの想像と同様に「未来の世界(または歴史がある時代で変化していたら)地図はどうなっているか?」というのがある。それこそ少年向けジュブナイルから古典の名作までいろいろあるので、いちいち紹介はしないけど、現実世界でも現在の激動を反映し、中東のそれを想像・分析する人が出始めたらしい。
http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/2012/08/no_1394.html
…2006年にアメリカの退役軍人のラルフ・ピーターズ氏が発表した『新中東地図』・・・。その地図に描かれた新たな国境線構想は、今日の中東世界の変化のなかで、実現しつつあるのではないか。
『新中東地図』に描かれていたように、イラクが実質的に3分割され、リビアも東西に深い溝が生まれている。そして大国エジプトですら、いま4分割されるという話が、識者の間で語られているのだ。ラルフ・ピーターズの論文のなかには、サウジアラビアの3分割という考えも、含まれている。
このラルフ・ピーターズの発表した『新中東地図』の後を追う形で、パトリック・ブキャナン氏が『中東の自然地図』なるものを発表している。
(略)
イスラム勢力の台頭は同時に、宗派間の対立を色濃くしてきてもいる。スンニー派とシーア派の対立であり、シリアの場合はスンニー派対アラウイ派(シーア派の一派)の対立構造がそれだ。
加えて、宗派対立は人種的な対立にも火を付けたようだ。最近になって特に、トルコ、シリア、イラク、イランなどで、これらの国のマイノリテイの、クルド人の動きが活発になってきている。また、イスラム原理主義と名乗るアルカーイダの活動は、非常に広範囲にわたるものになってきていることも、昨今のイスラム世界、中東世界の社会状況の特徴であろう。
彼らアルカーイダは、宗派対立や民族対立で、不安定化が進むアラブ世界にあって、大きなファクターとなりつつある。いわば、伏兵的な存在に・・・(略)
ブキャナンって、1992年大統領選挙の共和党内予備選で「冷戦は終わったのだ、アメリカは世界から手を引こう」という孤立主義政策を掲げて父ブッシュを悩ませ、同氏の敗退の一因となった、あのパット・ブキャナンのことなのかね。
それはともかく、文中にあるように、中東の地図はそもそも直線で引かれた、あまりに不自然なものだった。たしかに今の国境が、そのまま維持されるのか。・・・「される」とするなら、その想像もまたSF的シミュレーションのひとつだろう。