この前、
■女性に教育を施せば、次世代は豊かになると思った。だが間違っていた」〜パキスタンの事例
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120403/p5
というわたくしの華麗な釣りの妙技によって多くの人に文章が知られることとなった(←反省の色がねぇ)元世界銀行副総裁・西水美恵子さんの、待望の最新コラムです。
今回は死刑制度がテーマで、
・西水さんの夫は英国人、
・現在、西水夫婦は英国ヴァージン諸島に住んでいる
・英国は最近死刑を廃止。自治権のあるヴァージン諸島は自治権があるので独自に存続もできるが、本国と足並みを揃え死刑制度を廃止している
ということを前提にして、引用を読んでください(リンク先の原文を読めば分かる話だけど)
http://mainichi.jp/opinion/news/20120610ddm002070180000c.html
・・・今日、欧州人権条約の批准国である英国に、死刑はない。・・・(略)曲折の歴史の末、死刑廃止に拍車をかけたのは、エバンズ事件。英国では広く知られる冤罪事件だった。妻と娘を殺害した罪に問われ、無罪を主張したエバンズが死刑に処された(1950年)。数年後、検察側証人が真犯人と判明。エバンズは死後、復権されたが、命のやり直しはできない。彼が学習障害を持ち、非識字だったこともあって、国民は大きなショックを受けた。
この話になると、英国人である私の夫は、苦渋な表情のまま黙り込むのが普通だが、ブータンの雷竜王4世(先代のワンチュク国王)に賜わった謁見では違った。陛下が「仏教を国教とする我が国に、殺生禁断の戒を破る刑は矛盾そのもの」と、死刑廃止勅令(2004年)の理由を話され、英国について好意的に言及された時、夫が言った。「宗教が何であれ、死刑は人の道を外れる。母国が廃止したことはうれしいが、そこに至った動機が疎ましい。人が人を裁くことが完璧ではないからだとは、文明国の沙汰ではない。母国の品格のなさを、心底恥じている……」
はい、エントリタイトルの意味がお分かりでしょうか。
この英国人(筆者の夫)は「仮に完璧な裁判が出来たとしても死刑は廃止すべきなのに、そういう理由ではなく『死刑を廃止するのは、裁判が常に完璧には出来ないからだ』という理由付けじゃ恥ずかしい!」と言っているのです。
はい、タイトルは煽りです!!すいませんっした!!!・・・と口ではいいつつ、この前と同じことを二回繰り返してるんで、反省してないことはばれてますね(笑)、正直反省してない。うそは書いてない。
さて、そこのお客さん、お帰りはお待ち。
続きを紹介しましょう。
実はヴァージン諸島には、「歴史を変えた死刑」がある。
私たち夫婦が第二の故郷として選んだ英領バージン諸島・・・(略)・・・拙著「あなたの中のリーダーへ」(英治出版・12年)に詳しく書いたが、その背景には奴隷制度の過酷な歴史がある。
1811年、バージン諸島植民地政府の要職にあった大農園主、ホッジ郷士が、絞首刑に処された。一人の奴隷をなぶり殺しにした罪での死罪判決だった。英国奴隷制度廃止法の成立より22年前。革命的なことだった。大英帝国カリブ海域総督が、自ら軍艦を率いて来島し、戒厳令をしいての執行だった。
(略)
この絞首刑を語る時、島の長老たちは、口癖のように言う。「奴隷時代には価値などなかった我ら黒人の命が、ホッジの時以来、白人と同じ値打ちになった」
わかりる?
この島では、またカリブ海の総督が独断と軍政権(戒厳令で行っているからね)で強行した、ある種の法の枠を超えた超法規的な「死刑」が、人権と平等への大きな一歩となったということなのだ。
逆説的に、いやな表現を使えば、「死刑に祝福された島」なのである。(もっとも日本だって、江戸初期に武士の斬り捨て御免や無礼討ちの権限を、わざとせまく解釈しての厳罰化(死刑を含む)が町民の見地を拡大した)
では、そんな島なら、死刑については英国本土とは違う意識があるのではないか?
どうだろうか。実情はこうだという。
バージン諸島にも、死刑はない。英国海外領土とはいえ、外交と国防以外は独立国同様の自治権を持つ。民意次第では英国と別の道を選べたが、島民の賛意は固かった。
そして、(※島の長老たちがホッジ事件を)若者たちを相手に語る時には、「間違えるな」と必ず諭す。「死刑は正気の沙汰ではない。人を殺すことが罪だからこそ、その罪の償いとはいえ、同じく人の命を奪うことは許されない。肌の色が何であれ、たとえホッジであろうとも、命は差別なく尊いのだ……」
奴隷時代は、たった3、4世代前。高祖父母、曽祖父母らの痛みに、真摯(しんし)に我が身を重ねてこそ言えることだろう。
ニュースに死刑判決を見ると、長老を見習えと自分に言い聞かせる・・・(略)
この前、同コラム筆者の
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誰かが動かなければ、変わらない。本気で動けば、組織も社会も変えられる。――
世界銀行副総裁として、途上国の貧困と闘い、巨大組織の改革に取り組んできた著者。「国民総幸福」で知られるブータン政府や多くの企業のアドバイザーとして活動しながら、その目に今、日本と日本人はどう映るのか。働き方と組織文化、リーダーの姿勢と行動、危機や課題との向き合い方、求められる変革の本質……深い洞察と揺るがぬ信念で綴られた、心に火をつける一冊。(解説・藤沢久美)「西水さんは、本書の中で、読者に対して、何かを強いることはなく、ご自身の体験に思いを重ね、語っていらっしゃるだけだ。それなのに、自然に、読んでいる私の心が裸になっていく。そして、勇気がわいてくる。本当に不思議。こんなに優しく、そして慈愛を持って勇気というものを教えてくださるなんて」――藤沢久美(解説より)