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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

作新ベスト4、本日準決勝で…やはり「実録たかされ」再読

そんな大陸国家・栃木で
http://www.sanspo.com/high-baseball/news/110819/hga1108190506008-n1.htm

第93回全国高校野球選手権第13日・準々決勝(作新学院7−6智弁学園、18日、甲子園)49年ぶりの頂点へ、あと2勝!! 作新学院(栃木)は智弁学園(奈良)との準々決勝に7−6で逆転勝ち。史上初の春夏連覇を達成した1962年以来となるベスト4へ進んだ。

「49年ぶり」で分かるように、既に江川卓在籍時代の作新より上位に進んでいる。ただ、高校野球の中でなお全国的な知名度が高いのは、史上初の春夏連覇に加えてやはり、怪物・江川の出身校ゆえだろう。

その江川の高校時代の逸話が、この前紹介した本宮ひろ志「実録たかされ」ではたっぷりと描かれている(というか、掲載誌の休刊もあってこの作品はいわば高校生篇・入試失敗&大学野球篇・ドラフト騒動篇の3部のみなのだ)
電子書籍あり


この話を読むと、まったく自分はこういう苦悩とは縁のない凡人ながら、「才能にあふれた天才が、その才能によって振り回され、孤独になって行く悲喜劇」を目の当たりにして、なんとも読むのが苦しい。


これがまたアメリカ的な個人主義と「突出」をよしとする雰囲気があるところならともかく、「世間」と「空気」が支配する日本だったゆえの特殊事例もあるのだろう。
まだマスコミ・メディアも、取材方法への遠慮や自粛などを考えたこともないような時代だった。
多感な高校生が、度を過ぎた注目を浴びるものも、その脇に追いやられたものも…双方が平常心を保てるわけがない。

 

今回、準決勝に挑む作新は投打にバランスよくヒーローが現れ、江川時代のようなワンマンチームではない。
だから幸せだ…とは結論は出ない。高校という時代、未完成の人格からあふれる才能をはみ出させた天才と、本気で対立し、ぶつかりあったという思い出もまた、選ばれたものだけが体験できる稀有な宝石だからだ。
怪物・江川卓は母校の準決勝を、どのような思いで見るのだろう。


なお、上に書いた様に「実録たかされ」は掲載誌が休刊したこともあり全3巻、プロデビューで終わっているが、プロになってからの江川については平成・令和の野球漫画の鬼が原作となり(原作は森高夕次、画はデラシネマ星野泰視)、同時代の同球団にいたライバル・西本聖と比較した「江川と西本」という漫画が”続編”となっている。
m-dojo.hatenadiary.com

ピッチャー、孤独なる王

何度も書いたが、どう考えても野球というスポーツでピッチャーだけに集中する仕事量や特殊性、必要な才能というのはゲームバランスの失敗の結果のような気がする(笑)。
でも、それがゆえにピッチャーには特殊なドラマが生まれる。

江川や江夏、カネヤン、野茂、伊良部…たちが見せた「王者」のドラマが、その後モデルになったり、拡大されたり、あるいは逆転の発想で正反対のキャラクターを立てられたりして

となっていった。

2023年追記 「ダイヤモンドの功罪」を連想するなど。

ああ、ツイートの反響とか見て思いついた。いま話題の漫画「ダイヤモンドの功罪」の作者って、多分この江川卓の話を知ってて、それを反転させてるんじゃないだろうか…

ダイヤモンドの功罪

平井大
運動の才に恵まれた綾瀬川次郎は何をしても孤高の存在。自分のせいで負ける人がいる、自分のせいで夢をあきらめる人がいる。その孤独に悩む中、”楽しい”がモットーの弱小・少年野球チーム「バンビーズ」を見つける。みんなで楽しく、野球ライフを謳歌する綾瀬川だったが…。一人の天才と仲間を描く野球青春劇。
ynjn.jp