オーストリア・ハンガリー帝国(※誤字修正)、つまりハプスブルグ王朝が崩壊した際、最後の皇帝のその長男が、今年7月4日に98歳の天寿を全うしたオットー大公であった。
彼は欧州議会の議員になり、欧州にまたがる大帝国の遺産を精神的に継いだものとして欧州の一体化を呼びかけ、EU誕生の立役者の一人となる。そして、冷戦で東欧にとどめをさした「ヨーロッパ・ピクニック作戦」(東ドイツからの脱出を隣国経由で安全にできるようにする動き)も後押しした。
毎日新聞7月31日に、追悼記事が載っているのだが、それによると欧州議会に初当選したときは、議場がこの帝国の後継者を、「超危険人物」のような目で見たという。
「60年も昔に滅びた王家の子孫が議会政治の一員に加わるなど、欧州にとっておそろしいことである」ウイリー・ブラントのような西独の元首相でさえ、怪物でも見るような感じであったという
なるほど、議会政治の初期、旧王家のカリスマに求心力が生まれ、元王やその血縁者が独裁を生む・・・というナポレオン的な展開だって無くはない。
しかし、大公はそんな視線を気にせず、
外交委員会にひとつの動議を提出した、と新聞にある。
東欧で今も抑圧されている国の人々、本来そこに座る権利を持ちながら、我々から隔てられているため、それができない国々の代表が、いつの日にかその椅子に座ることができるよう、不存在の象徴として、議場に空席を一つ設けよう
長生きしたものこそ最大の勝者、とはよく言ったもので、東欧の不滅に見られていた壁も鉄のカーテンも粉々に打ち砕かれ、NATOやEUがとめどなく東に拡大していく様を、この帝国後継者は目にしてから旅立った。
書き手はジャーナリスト大須賀瑞夫。
「不存在」「その他もろもろ」に備える何か、について
有名なのは古代ローマが「いまだ知られていない神々」を祀っていた、という話。なるほど神様は祭って崇拝すればご利益を与え、無視すれば怒ってバチを与える・・・とするなら、知らないでほっておくとおおごとだからこう言う危機管理は必要になるわな。
あとは靖国神社の「鎮霊社」。
http://www.yasukuni.or.jp/precincts/chinreisha.html
http://jinja-kikou.net/yasukuni-tinrei.html
神社自体がまつり、祀られることに議論がある中、それ以外のものを広く祀った社がある。ただ、つい最近まで一般の人は参拝出来なかった。
靖国神社本殿で祀る戦没者、それ以外を広く・・・、というのはまことに結構だが、そうすると今度はなぜ区別するのか?という議論が出てくる、というお馴染みの話。
筑波宮司の時代に作られたが、一説にはA級戦犯合祀に反対だった同宮司が、ここを「防波堤」とし、戦犯の霊はこっちでお祭しましょうね、とやろうとしたとも言われる。