2人の大物の、緊張感あふれるやり取りの背景にはこういう真実もあった。
「殺るんだよ!村井知事を!!」
そう、脇差を懐に宮城県庁に赴いた松本大臣だったのである!
はじめはサングラスを掛けたりとかぶいた服装だったのだが、宮城の役人が「知事は当節はやりのチームドラゴンが見たいと申されておる、そのままでも差し支えあるまい」
というんでボディチェック無しで会見できたのはラッキーだった。
しかし村井知事も、元はいくさ人(※ホント)。幾多の戦場をくぐりぬけたその「いくさ人」としての勘が、握手しようと近づいた時、あと半歩近づけば松本復興相の間合いだったのだが…そこで押し留めてしまった。
そこで、村井知事暗殺の一件は成功しなかったのだった。
村井 「で・・・何故だ」「わけがない筈があるまい!よく考えろ!!」
松本 「強いて申さば、意地とでも申しましょうか」
村井 「それは復興大臣としての意地か!?」
松本 「人としての意地でござる!!」
村井 「そ、そうか・・・!わかった!!」
この男は獣だった。絶対に飼い慣らすことの出来ぬ自然の獣だった。さすがの村井知事が一瞬恐怖を味わったほど恐ろしい獣だった。
だが、知事は痺れた。久しぶりに感銘した。
「見事かぶいたものよ」
会見を終えた村井知事は満足そうな笑みを浮かべていた。
「そうだ・・・松本大臣に笹かまぼこを取らすのを忘れていた。呼べ」
そう部下が松本に伝えると
「2日後に参上いたすとお伝えあれ!!」
そして再度宮城県庁に上がったときは・・・
『可観小説』にあるこのくだりの描写を引用して見よう。
『今度は成程くすみたる程に古代に作り、髪をも常に結直し、上下衣服等迄平生に改め、御前へ出で笹かまぼこを拝領し、前後進退度に当り、見事なる体也』。
きちんと礼儀を守った、げにも床しい前大臣ぶりだったのである。
「先ほどは大臣として、今度は地位を持たぬ前大臣として…松本龍、まかりこしました」
※もう、このパロディも通じにくくなってるよね…。
でも新版が沢山出ていて、けっこう入手しやすいか。好みで文庫版を紹介
天下をほぼその手中におさめた関白・豊臣秀吉は、後陽成天皇の聚楽第への行幸を実現させ、みずからの権威を磐石なものとした。前田利家を呼びつけた秀吉は、かねてから"天下の傾奇者"と評判の慶次に会わせるようにと命じた----。お目見えを承知した慶次だったが、死を覚悟し、ひそかに奇想天外な悪戯を計画していた...。
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原作小説のそのくだりが、ネット上で見つかった。
http://www.geocities.co.jp/SweetHome/6968/itimuan/favorites.html
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