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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

バクマン。が「僕らの漫画が社会問題に?」篇突入。藤子不二雄Aの「魔太郎」回想を参考に

バクマン。がこの前から新章に入りましたね。前の章は、始まった時にこのブログで紹介したけど、終わった今から振り返ると、正直残念な出来になりました。それは敵役が本当に「悪役のための悪役」のような言動をすることで自滅しただけで、最初に本当の敵役として登場させたはずの「ネットの集合知」との攻防は無かった気がするのでね。
まあ、それはそれとして今回の章について。
 
何度となく世間で問題になってきた「漫画を子供が真似して困ります」という話題ですな。なにしろ「サルでも描ける漫画教室」でも「とんちポーズを子供が真似して怪我」というネタで登場している。
ストーリーの結論としては、そういう批判の理不尽さを訴え、漫画の自由な表現を守ろう、ということになるのだろう。
それはあまりにも当然である。
私も、そういう結論になってほしいと思う。
ただね。
バクマン。」を描いている大場つぐみ小畑健コンビの前作は、いわずと知れた世界的大ヒット「デスノート」だ。
 
デスノート」本作については、自分は何度も書いているけど「名前をノートに書くと相手が死ぬ」という能力を扱いながら「悪人の命を奪うことは許されるのか?」といった哲学論は脇に置き、乾いた純粋な戦略・駆け引きだけを描いたところにあると思っています。
ただ覚えているけど、連載開始前にパイロット的な読みきりがあったと思うんですが(単行本のどこかに収録されているかな)・・・そちらのほうは駆け引きもあるけど、命を奪うノートの倫理問題も前面に出し「人の命を奪えるノートがあったら、あなたは使いますか?」と読者にも問いかけるような作品だったと記憶している。

それを最初に読んだときに…規制しろとか何とかはつゆほども思わなかったが、「ああ、これは読者の、特に子供に対しては…実際の人間関係(いじめなど)を反映した、復讐心を刺激されるだろうな」と感じたんだよね。

そのかなり後で、読売新聞の聞き書きシリーズ「時代の証言者」で、藤子不二雄Aのインタビュー記事が長期連載された。
以前、この記事から「僕はこのままだと藤本弘君のマネジャーになってしまう」と危機感を持ち、発奮したという話を紹介した。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100709#p8
そんな危機感のなかで大ヒットを飛ばしたのが「魔太郎がくる!!」だったという。しかし、このヒットが意外な展開を見せる。
以下、「時代の証言者」を直接紹介

 
・・・ね?
私のスタンスとしては
「そこまで読者の心を揺らしたことは、むしろ作品の誇り」
「実際のいじめが生む復讐や自殺への暴発を『魔太郎がやっつけてくれれば…』といった空想によって”ベントを開く”ことで防げる効果もあるんじゃないの?」
「『政のたすけとなる歌もあるべし、身のいましめとなる歌もあるべし、また国家の害ともなるべし、身のわざわいともなるべし 〜本居宣長』だよ」

と言いたいところだけど、まず現状認識としては、「復讐」や「犯罪」を描いた漫画やフィクションが、現実の恨みや復讐心を増幅?…かどうかは知らないけど、少なくともシンクロすることもある、ということを踏まえてもいい。

藤子A先生は、そういうことで魔太郎のアニメ化のオファーを断り続けているそうだが、中学時代に相思相愛となった恋人がいて、自分の作品がアニメ化されれば結婚できる・・・という状況だったらどうだったんですかね(笑)。
でも余談ながら、A先生も一目ぼれで結婚したとのこと。



話を戻すと、超能力やオカルトは、そこで特に復讐心などに親和的なのでしょうか?
うーん、どうなのかな。
実は大槻ケンヂが「BSマンガ夜話」の「バビル二世」でちょっと類似した話をしていた。(「僕とフリオと校庭で」でも同じ琴を言ってたかな)
(大意)「学校で勉強でもスポーツでもパッとしない子にとって、ある日突然超能力が使えて、地球を救ったりいやなやつに復讐するといった妄想は非常に甘美なものなのだ」

「現実が充実していない、自信の無いやつらがオカルトに興味を持つ」というのは一面的なステレオタイプの気もするが、一面的ということは一面ではそうである、ということでもある(言葉遊びだなこりゃ)。何より大槻氏は、自分の体験を踏まえてそう言っているのだろうしね。


デスノートについては、実は自分の知る限り、国内では目だった形で倫理的批判は無かった気がするが・・・
ウィキペより

2007年9月28日、ベルギーのブリュッセル市内で起こった男性と推定される遺体が放置された事件ではWATASHI WA KIRA DESS(私はキラです)とローマ字のように書かれたメモが、切断された死体の一部と共に発見されている。
この「KIRA」はDEATH NOTEの登場人物の一人、キラのことを指すのではないか、およびこの事件は、同漫画に触発された猟奇殺人事件ではないかと見て、地元警察では調べを進めている。
事件から3年後の2010年9月25日にデスノートファンの男が逮捕された。

中国でデスノートの模倣品、コミックスなどが出回り、未成年者のその国の教育上思わしくない等の関係で当局が回収中(香港や台湾は除く)。韓国でも、模した製品、コミックスなどが出回っている(

こういうことで言われ無き非難を浴びたであろう作者コンビには、この問題では言いたい事も結構あるでしょう。それが作品内でどう昇華されているのか、注目したいと思います。

余談

これを書くために「時代の証言者」を通して読み直してみたら、うーんやっぱり面白い。連載時は基本的に知ってる事ばかりと思っていたが、通しで読むとまた違う。
http://resetsu.mangadou.net/
の中で探して見て。
http://ameblo.jp/mituo-papapa/entry-10590325564.html
もあって、今回検索のついでに藤子系ブログがいろいろ見つかったのが思わぬ収穫だった。

その中の一つ、
ドラえもん+デスノート
http://k-wa.jugem.jp/?eid=6#
必読!!