リンク&引用集で
与良正男(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/yora/news/20101111org00m070013000c.html
かつて、ある現職閣僚の女性スキャンダルを「週刊ポスト」と写真週刊誌「フォーカス」(01年休刊)が再三報じ、その閣僚が辞任に追い込まれたことがあった。当時、首相官邸を担当していた私は、この週刊誌報道に対して新聞が手も足も出ず、ほとんど両誌を後追いするだけだったという情けない思いを込めながら、「これは『ポスト・フォーカス政局』だった」と解説記事に書いた経験がある。
政治家の「年金未納」が次々と暴露されたのは今から6年前だ。恐らく旧社会保険庁内の人間が情報提供したのだろう。あの時も報道の主役は週刊誌だった。私はこれまた「なぜ新聞にたれ込んでくれないのか」と複雑な思いにかられ、「情報提供する側が、どこが最も『効果』が上がるかを考え、メディアを選ぶようになっている気もする」とコラムに書いた。
さて、海上保安庁職員が「自分が流した」と名乗り出た「尖閣ビデオ」の流出事件だ。「これは現政権へのクーデターではないか」とか「だから最初からビデオを国民に公開しておけばよかった」とか。論点はさまざまあるが、もう一つ、私がこだわりたいのは、流出先がインターネットだった点だ。ネットという媒体が、これだけ政治を揺るがしたのは、日本では初めてだと思うからだ。 もし、映像が入ったDVDがテレビ局に送られてきたらどうだったかと考えてみる……(後略)
余禄(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20101111k0000m070132000c.html
作業中にノックがあり、ドアを見るとガラス越しに警官2人がいる。まずい! みなが思った。だがその警官が開いた扉から見たのは父親と子供2人のだんらんだった。警報機の誤動作を告げた警官は、カバーの下のコピー機に気づかずに去った▲「警官たちはとんでもない犯罪現場を目撃したのです」とその場にいた一人は語る。それは7000ページに及ぶベトナム戦争の米国防総省機密文書を世に暴露したD・エルズバーグ博士が、協力者や子供らと一緒に当の文書の一部をコピーしていた現場だったのである▲博士は勤務先の金庫から文書を小分けにして持ち出し、自宅でコピーした。子供まで巻き込んだのは、父が逮捕されても市民の良心にもとづく反戦の信念の行為と子供らに知ってほしかったからという。文書は議員に公開を働きかけたが失敗し、新聞社に手渡された▲そのニューヨーク・タイムズは3カ月をかけ公開の是非を検討し、記事を掲載した。こう振り返れば隔世の感がある。米国で、日本で、国防や外交、治安関係のデータが匿名の何者かのマウス操作一つでネットに暴露される今日だ。情報漏えいもお手軽になったものだ▲尖閣映像を流出させたと海上保安官が名乗り出た。政府の情報管理の甘さが批判される一方、情報漏えい者を英雄視する声まで出た事件である。政治的な情報謀略も、愉快犯的情報犯罪も、公益にもとづく内部通報も、みな似通った顔つきで登場するネットの世界だ▲さて映像流出の目的や背景はいかなるものか。起こったことの真相をはっきり見極め、ネット社会の情報倫理を一段掘り下げねばならぬ時である。
朝日記者twitterのまとめtogetter
◇『内部告発はぜひ報道機関へ』 (Togetter)
http://togetter.com/li/67923
それを取り上げた「やじうまWatch 」
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20101112_406208.html
今回の映像を新聞社が入手することはできなかったのだろうかという疑問と、さらにGoogleがIPを開示したことに対して、取材源の秘匿が徹底されている記者や報道機関であれば足が付くことはなかっただろうとの見解で、「マスコミを上手に使って内部告発をすることも考えてほしい」としている。
切り抜いたんでどこの新聞かわかんなくなったが、青山学院大・大石泰彦教授の談話
大石泰彦(メディア倫理) 「戦前を思い起こさせる」
政府の方針に納得できないからと言って公務員がネットに情報を流出させる行為は許されるべきではない。戦前、一部の軍人が自分の正義感に基づいて起こした勝手な行動を思い起こさせる。
それでは公務員はどうすればいいのか。民主主義社会ではジャーナリズムが政府を監視する役割があり、情報の取り扱いのプロであるジャーナリストを通じて社会に訴えるべきだった。
ただ映像だけが流れるネットでは、受け取る側は感情に流れやすい。
ジャーナリストによる見極めや十分な解説が加えられた情報の方が正しく判断ができる。取材への協力は正当な行為であり、ジャーナリズムも取材源として守るという形が望ましい。
(※写真くしゃくしゃですいません…)
最後のはエッ?って感じですね(笑)こういうのは極端ながら、ひとつ追加を。
一度自分のブログで書いたことがある。
↓
能力や使命感ではなく、過去の判例が生む利点はあるという話。
リークに関してなんですけど、取材が「正当な手段」「報道目的」でなされた場合、実は取材したほうや紙面にのせたほうは、多くはお咎めを受けないんですわ。
某最高裁判決 「それが真に報道の目的から出たものであり、その手段や方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、正当な業務行為というべきであるが、その方法が刑罰法令に触れる行為や、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等、法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合には、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる。」
なんかへんな話といえば話なんだが、そういうことで、逆にいうと情報リークというのは、いったん守秘義務のある立場の人からメディアに(正当な形で)渡されると”ろ過”されてしまう。「僕はパパを殺すことに決めた」の草薙厚子氏や、防衛機密をすっぱ抜いた読売新聞記事などでも「情報を渡した側」のみがお咎めを受けた。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200704012145200
つまり…上のtwitterでも基本は同じ趣旨だと思うけど、ジャーナリズムの使命感だ能力だとはあんまり関係なく(笑)、これまでの判例、法律論に沿っての「機密情報(守秘義務)のろ過機能」はジャーナリストにはあるんで、それを活用するというのは、それはそれで悪くない考え方ではある。
「今日からおれって、ジャーナリストです。あれ?ここに機密情報が。アップしましたー。経路はニュースソース秘匿でよろ。」
ってのはいいのかね(笑)?
■「商業ニュースサイト」と「個人のニュースブログ」の差って、今や公式リリースが来るかどうか程度の違いでは?(仮説)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091118/p3■ネットニュース再論。商業ニュースサイトと個人ニュースサイトって、ライブドアとかへの配信の有無程度の違いでは?(副題・書評「ネットの炎上力」)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100408#p4
というのをあたくしは書いていて、ニュースサイトなる定義はごくあいまいではないか?名乗ればいいだけじゃないか? と論じた。
タイトルをシミュレーション仕立てにすると今回。
保安官「おれ、映像の流出を決めたわ」
その信頼できる友人「んじゃ、おれニュースサイト作るわ。はてなに登録。『ポコペンニュース』できたー。」
保安官「んじゃ、はいこのメモリースティック」
友人「うぷぷ、UP完了。俺のサイトにyoutubeはりつけたわ。ポコペンニュースのスクープwwwうけるwwww」
保安官「んじゃ、俺のことは黙っててね」
友人「おkおk、『ジャーナリストはニュースソースを秘匿します』ってWW 超かっけーwww」
…いや…たぶんこれで完全「犯罪」(?)成立すると思うわ(笑)。
もちろん権力は交友関係を洗うだろうから、あんまり公に親しかった人との接触だと現実的にはまずいと思う。
ただ、リクツとしては
情報の流出元→<自称か他称か「ジャーナリスト」(ソース秘匿OK)>→公開、と一枚かませることで、ある程度秘匿性があがる…ということなんじゃないかな、と思う。
それとも昨日今日はじめたニュースサイトだと、検察や裁判所は「お前はジャーナリストとは言えんからソース秘匿の権利ないわ」とか認定するのかしら。このへんはわからないまま、適当になげっぱなし。
書きながら自分で疑問。聖職者の秘密保護も「俺、昨日から聖職者」となのればOKなのかな?
国によって違うのかもしれないけど、「懺悔」の仕組みがあるカトリックとかではその懺悔によって犯罪を知っても、司法にはばらせないですよね。
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カナダの都市ケベックの教会。ここの神父館で働くオットー・ケラーは、ある夜神父マイケル・ローガンに重大な告白をした。ケラーは生活苦の末、強盗を働いて弁護士ヴィレットを殺害したのだ。この事件はラルー警視が捜査に乗り出した。ケラーは犯行のとき僧衣をまとっていたので、マイケルに疑いがかかって来た。だが聖職にある彼は、告白の内容を洩らそうとはしなかった。そのうえ、兇行の夜、マイケルが……
かといって「おれ、ポコペン教の司祭になったんだわ。もちろん懺悔の内容はだれにも言えないって教義なんで、刑事さんにあの事件と容疑者のことは話せないんでよろー」
と言ったら
刑事「なにそれ超ウケるwww」
……じゃすまないよな、たぶん(笑)。日常的な積み重ねが必要なのだろうか。