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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

【敗将列伝】瀬島龍三がいかにパネぇやつであるかの資料( 完全版 )

※ http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100122#p8からの続き
ドラマ、「不毛地帯」3月まで放送しているまだみたいですね。


文春新書の、保坂正康・半藤一利の対談本「昭和の名将と愚将」より、そのドラマのモデルとされる瀬島龍三氏が、いかに細やかな心遣いができる人だったかを紹介しましょう。

保坂  ・・・全国抑留者補償協議会の会長の斎藤六郎は、たびたびソ連に足を運んで貴重な資料を探し出しています。あるとき彼は、シベリア抑留をていねいに調べて研究しているアカデミーの旧軍人と知り合って、彼の原稿をもって帰った。東京外大の学生グループに訳させて本にしようとしたのです。するとそれを瀬島さんが聞きつけて、見せてくれというので入稿直前に見せてあげたのだそうです。そのあと原稿が印刷所に渡って本になった・・・

すると。

その本を読んだある新聞社の記者から斎藤のところへ電話がかかってきて「斎藤さん、ソ連の研究者でさえ、関東軍層参謀長の秦彦三郎は8月19日のジャリコーヴォでの停戦交渉のとき、ちゃんと日本軍の将兵をしっかり保護してくれ、食料を十分に提供してくれと主張したと記しているじゃないですか」と言ったんだそうです。

なるほどなるほど・・・だが?

ちょっと待てと。東京外大の学生が訳した文面を見ると、そんな文章が入っていなかったというので、斎藤六郎は調べたんです。そしたら入稿原稿に瀬島が手を入れていた(笑)
僕は、瀬島が手を入れたその生原稿を見せてもらってびっくりしましたよ。たしかに元の原稿に加筆されていました。「たしかに給養、保養については保証するよう申し入れがあった」と。

半藤  それはソ連極東軍総司令官のワシレフスキーが言っていることになっているのですか。


保坂  ええ、それはワシレフスキーがモスクワのスターリンに打つ電報文なのです。しかもそのパラグラフには「瀬島参謀の光と影」という小見出しがついていたのですが、「瀬島参謀の苦悩」に変わっていた(笑)。のみならず「瀬島参謀」には「いかに有能といえども」という形容節を自分でつけている(笑)。ウソのような本当の話です。

実は原稿に手を入れたあとに、瀬島から斎藤に書簡がきていたんでんです。それも見せてもらいましたが、「この本はなるべく一般公開してほしくない」とありました。「一般公開して私に取材がきても一切答えない」と。そして「事実関係で違っていたところは直しておきました」と書いてありました(笑)。・・・(略)瀬島という人はこういうことを平気でやるんですよ。

すばらしいですね。
さらりと人の仕事をフォローしてあげて、おくゆかしく相手にそれを伝えずに済ませる。ちょっと文章に形容詞を加えたり、見出しを変えたりして、より美しい文章にする努力、美の追求を怠らない。

こんな行動こそ不毛地帯だよ!とか言ってはイケナイ。

この本は、ほかは愚将でいえば、一度紹介した牟田口廉也中将、辻正信参謀がそれぞれ期待を裏切らない(笑)し、名将・・・でもないが山口多聞についてはちょっと泣かせる。

「燃え狂ふ 炎を浴みて艦橋に 立つくせしかわが提督は」
山本五十六の追悼歌。山口多聞は山本に先立ち、ミッドウェーで戦死した)

昭和の名将と愚将 (文春新書 618)

昭和の名将と愚将 (文春新書 618)

※この「敗将列伝」は連続シリーズです。
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