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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

チェ・ホンマン徴兵で陸軍入隊…「リアル巨神兵」誕生で思うこと

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/k1/headlines/20080415-00000017-spnavi-fight.html

K−1などで活躍する“韓国の大巨人”チェ・ホンマンが4月21日、兵役のため韓国陸軍に入隊することが決定した。ホンマンは江原道(カンウォンド)・原州(ウォンジュ)にある陸軍第36歩兵師団新兵訓練場に入所し、4週間の基礎訓練を受けたあと、該当服務地で公益要員として勤務することになるという。

 韓国では兵役は国民の義務。韓国相撲・シルムで国の英雄となったホンマンも例外ではなく、今年1月には韓国内の一部報道で入隊がうわさされていた。K−1を主催するFEGの谷川貞治代表は「1月の時点では今年の入隊はないと発表しましたが、ホンマン選手と相談した結果、先送りせずこのタイミングで入隊するという結論になりました」とコメントを発表した。


K-1の現状から「挑戦者徴兵制」とか書いたら、ほんとに徴兵になっちゃった。
俺のせいじゃないよ??

格闘技的には、これもつい先日書いたように「韓国での不可解判定によりセーム・シュルトに記録上は一勝している。シュルトの目線でいえば借りを返せるし、記録的にも挑戦権があると言っていいのだから次戦の相手はホンマンだ」ということだったのだが、これではしょうがない。今現在の某仮想敵国はポンコツ核以外はガッタガタなのだから、いくら入隊とはいえ「ホンマンの野郎……俺が借りを返せないまま・・・無茶しやがって…」みたいなアレにはならんだろう(笑)


ときに、この前「ホンマン入隊は2009年」報道があった際(ホンマンは大学にも籍を置いていたので、入隊時期をその関係で選べる)に少し文章を書いている。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080109#p3
チェ・ホンマンの徴兵は2009年。

ここには関連書籍も載せてあるので目を通してもらえると幸いだ。


そこにも載せた

Fight&Life(ファイト&ライフ)04 2008年1月号[雑誌]

Fight&Life(ファイト&ライフ)04 2008年1月号[雑誌]

のこの号には、高崎計三氏の「2年間は『空白』か〜韓国人格闘家と徴兵制」という文章が載っている。
現在、日本に何度か来日(MARSで4戦全勝)し、将来性を見せていたトルネード・ソンも徴兵期間だという。
※参考までに。高崎氏は二つの格闘技ブログを持ってる。
http://blog.olga.to/solitario/
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/solitario/


日本では高度大衆消費社会・民主体制と徴兵制度が両立した時期が無い。だが大正デモクラシーの時代はそれに片足のつま先ぐらい踏み込んでいた。その時期、軍人はかなり肩身がせまく、「行きたくないもんだね」「軍隊はロクなもんじゃない」という、水面下を流れる本音もかなり表にオブラートに包みつつ出すことができた。
韓国は軍人の地位もそれなりに表層的には高いのだろうが「文重視」の伝統は儒教に由来して日本以上。
だからなかなか、一概に言えないところがある。




高崎氏の記事より

と、
韓国徴兵、オレの912日 (講談社+α文庫)

韓国徴兵、オレの912日 (講談社+α文庫)

を孫引きする。
「私」は訳者かだれかのことだろうか。

一度行ってみるのはいいかもしれない。
でも二度と行くのはゴメンだ。
それが軍隊である。

もしも日本人が韓国人に『軍隊に行ってよかったですか?』と質問をしたら、彼らの返事は、表面上は肯定的なものばかりだろう。そんな質問をするのは、私たちが軍隊を経験したことがない国民だからで、一度でも軍隊に行ったことがあるのなら、そんな質問自体をするわけがないのだ。

あとひとつは、やはり適材適所で活躍し、また多くのことを学べる時期に2年を費やすことで、結果的に社会分業に不利が出て、国家の総合力としてそれがブレーキになるのではないか?という問題もある。
例えばチェ・ホンマンだって、K-1のギャラやCM出演料を考えれば、日本から毎年、億という外貨を稼いで帰ってきている存在。数字の面だけで見れば一兵卒(でかいから1.5兵卒ぐらい?)になるよりは、選手を続けていたほうが大韓民国全体には奉仕している、ということになる。
(これが発展途上国だとその問題は無くて、軍隊は国民に「時間通りに集合する」とか「車を運転する」とか「組織として何かをやる」とか、ハードソフトで『近代』の入り口・教育機関になる、という例も珍しくない。明治日本も含めて。その段階を終えた社会でこの問題が出てくる)

軍事的合理性の側から、徴兵制の必要性を否定する理屈が成り立ち、反戦的立場の人が例えば「憲法改正で徴兵制が復活する!とキャンペーンして『いえ徴兵制は非合理だからしません』と相手がカウンターを放ったらダメージが大きい。・・・」と悩んだり、また外国で「金持ちも貧乏も平等という点では徴兵制のほうがいい!」という意味での左派的徴兵肯定論があったりとややこしい様は「週刊オブイェクト」でかなり多く取り上げられている。


徴兵制シリーズ授業
http://obiekt.hp.infoseek.co.jp/peacemaker/draft_0.html
200年前の軍隊、志願制と徴兵制
http://obiekt.seesaa.net/article/61447263.html
徴兵制についての理解はここまで広まりました
http://obiekt.seesaa.net/article/30786322.html


「シリーズ」にある米国民主党的な徴兵制の話は、町山智浩氏が例えば

9条どうでしょう

9条どうでしょう

にて書いているが、エッセンスはここでも読めるか。
http://publications.asahi.com/ronza/story/200801.shtml



韓国の徴兵は、アメリカなど海外に留学したり同国の国籍を取ると逃れることもできる。UFCに参戦するキム・ドンヒョンFIGHT&LIFEによると「諸事情で兵役は経験していない」らしい。ただ、上の話を繰り返すようだが、おそらく2年間を兵役につき、専門的な格闘技練習を途切れさせたら、UFCファイターキム・ドンヒョンは存在しなかったろう。
ここが難しいところだ。




また、個人主義コミックソング「教訓Ⅰ」的な素朴なエゴ的厭戦感情をそのまま肯定するなら、こういう徴兵忌避をも肯定しえるのかというと、やはり「それは卑怯だ」とか「軍隊にいってはじめて一人前だ」的な発想も強い。韓国では徴兵を経験、決定したときに初めて父親が酒を飲ませてくれる、一緒に飲むなんてこともあるとか。(韓国では親の前で酒を飲むのには遠慮があるという)

二重三重の矛盾と葛藤と、そしてそれでも社会の中心として、韓国的徴兵はあるようだ。


このエントリで挿絵的に挿入しているのは、過去エントリでも紹介した「軍バリ!」。この原作者、なんと徴兵終了後に留学して宮台真司の門下に入り、その縁でこの連載を日本で企画したそうだ。あちらではそのまま過ぎて面白くなく、日本でこそ「へえ、こんなことあるの?」と面白がられたのだろうな。

軍バリ! 1 (ヤングマガジンコミックス)

軍バリ! 1 (ヤングマガジンコミックス)