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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

『「靖国」出演者・施設管理者了承問題』再論。こんな例もあるそうだ

K-1はメインイベント以外は肩の力を抜いて見ているので、ついでにちょこちょこ小さいニュースを書いていこうか。


■「ドキュメンタリーの中の「登場人物の了承」「取材先の了承」について」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080412#p6
これの続編として。

靖国神社が「敷地内で撮影を許可する権限を持つ、施設の管理者」として正式に映画に抗議を申し入れたという話は神社の公式HPで確認できる。
http://www.yasukuni.or.jp/img/1207900481.pdf

http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY200804120197.html

…李(李纓)監督は、朝日新聞のこれまでの取材に「撮影許可は取ったものも取らなかったものもある。靖国神社の広報課長に名刺を渡し、その隣で撮影した場面もある。隠し撮りは一切していない」と説明している


神社の中での、撮影許可を出さないと言う措置でいえばこんな例も昨年あった
http://itnews.blog17.fc2.com/blog-entry-1058.html
から孫引くと

靖国神社朝日新聞の報道をめぐり、プライバシーなどを理由に「取材申請に対しては不許可とさせていただく」などと通告し、同紙の小泉純一郎首相の参拝取材を規制していたことが15日、分かった。

 朝日新聞によると、同紙は12日付朝刊に「靖国神社 懐寒し」との見出しで、記事とともに靖国神社の所有地を大まかに示す地図を掲載。

 これに対し靖国神社側から14日付で「プライバシーや身辺警護の立場から行き過ぎた報道」として謝罪などを求める抗議書が来たという。

 15日の参拝取材では事前に取材申請が必要だったが、朝日新聞の記者とカメラマンの取材は許可されず、敷地内での写真撮影などができなかった。

 朝日新聞広報部は「記事についての抗議には真摯(しんし)に対応していくが、取材規制とは別次元の問題。報道の自由に抵触する遺憾な行為だ。抗議するとともに、速やかな取材規制の撤回を求める」と話している


さて、んでどこからどこまで施設は撮影をコントロールする権限があるのか。
実は昨日、こういう本を読んだ。

ぼくの週プロ青春記 90年代プロレス全盛期と、その真実

ぼくの週プロ青春記 90年代プロレス全盛期と、その真実

この本は予想以上に面白く、懐かしく、感動的な本で、今後は詳しく書いていくが、ここにちょっと関連の話を発見したのでそういう観点から紹介しよう。いやあ、靖国問題と週プロ青春記を結んで論じられるのは「見えない道場本舗」だけです、間違いなく(笑)。



週プロ青春記では、こんなくだりがある。

女子レスラー・玉田りえ&府川由美を連れてディズニーランドに行ったことがあった。この取材にはスペル・デルフィンも同行し、遊び人キャラのデルフィンが遊び方を伝授するというのが企画の趣旨だった。
しかし、ディズニーランドは取材規制が厳しい。というより、取材をしても雑誌などに掲載する許可がまず降りない。念のため、取材意図をディズニーランドの運営会社・オリエンタルランドに伝えると「よっぽどの有名人じゃなければ掲載はお断りすることになっています」との返答が
「一応、三人ともプロレスのチャンピオンなんですが、それでは有名人になりませんか?」
「申し訳ございません」
「じゃあ、どのクラスになれば有名人と認定されるんですか?」
「そうですねぇ、マイケル・ジャクソンさんあたりでしょうか

オリエンタルランド、きれいにいいオチをつけててグッジョブ。
ただマイケルはネバーランドで遊んでるんじゃないか、との疑問もあるが。


そんなことはどうでもいい。
要はカメラもカメラマンも自前、撮られる被写体も了承していても、撮影場所がディズニーランドであったら、その雑誌への「掲載許可」なるものは、ディズニーランドが下ろす権限があり、生殺与奪は同ランドの胸先三寸だということだ。


ディズニーランドという場所も、なんつうか日本の今を映す格好の場所であり、ここにカメラを据え置いて、10年撮影したら面白い作品ができそうだが、それはさておき、そういうことでいいのかね?なしにろ権利についてはつかんだものは絶対に離さないディズニーの関連会社だ。法律的に詰めていくと理不尽な、見えないプレッシャーによってこういう既得権を業界に広めている可能性もある。


ただ、こういう合意が社会的にあるのなら、やはり靖国神社の撮影は神社の許可が必要で「撮影許可は取ったものも取らなかったものもある」じゃまずいのか、という話も出てくるかもしれない。


神社に来た人は撮影していいのか

このパンフレットにのっている制服姿の青年、この青年は現役自衛官であり、彼が靖国神社に参拝しているところを、この映画「靖国」をつくった人が無許可で撮影をし、その映像が無許可でこの映画に使われ、このパンフレットにおける掲載がされていることもこの自衛官の方は一切しらなかったんです。この現役自衛官の方がたまたま靖国神社にお参りしたときに撮られた、勝手に無許可で撮られた肖像権はまったく守られていないというのが、常態化、今も続いています。


このへんの話でありますが「今年の正月も初詣ラッシュ 色鮮やかな晴れ着の波」とか「さあ衣替え 新緑に夏服の装い」とか、そういう写真や報道ってありますね。一応、こういう街頭風景や、施設の風景を撮るというのは許可とか肖像権の主張は無い、という話だったはずだ。
だが、何しろ撮影に関する権利は機材が進歩したこともあり、権利も時代につれて変わってきているんだよな。
今現在、これはどんな感じになっているのか、判例や問題を時代に沿って追い続けないといけないかもしれない。


ついでにいうと、じゃあ秋葉原?のコスプレ女性とか、海岸の水着の女性も「街頭風景を撮っているのと同じだ、何が悪い」となるんだろうか。このへんは条例がらみだろうか。

こんな本も出ている。これは防犯カメラがらみの問題もあるのか?

勝手に撮るな!肖像権がある!増補版

勝手に撮るな!肖像権がある!増補版


むかし、ぱらぱらと拾い読みした気がするが、きちんと通読してはいない。
たぶん読めば、今回の事例に該当する話もあったと思うが。

自由は今、公権力以上に「他人(私人)の権利」によって制限される時代

プリンスホテル日教組集会拒否事件
靖国上映館キャンセル事件
そして今回の刈谷直治刀匠や、靖国神社社務所からの映画へのクレーム
もし今後あるとしたら、撮影された制服自衛官からのクレーム。


肖像権とか「施設内の撮影は許可が必要だ」というのも、時代の流れと共に一般的には強化されていくようだ。
つまり今までOKだったものがNGになるということ。

自由を狭めていくのは、私のあなたの隣の「私人が持つ権利」なのかもしれない。また自分のもつ権利も、だれかの自由を阻害しているかもしれない。
原理的には前に書いた「他者危害の原則」に沿ったもので、他人の権利を守るためには、それは自分の権利もたしかに制限されるのだが。