http://mainichi.jp/enta/book/hondana/news/20071104ddm015070160000c.html
今週の本棚:沼野充義・評
『緑の影、白い鯨』=レイ・ブラッドベリ著
メルヴィルの『白鯨』…(略)…を一九五六年に映画化したアメリカ映画界の巨匠、ジョン・ヒューストン監督でさえも、自伝『王になろうとした男』(宮本高晴訳、清流出版)で、こう言っているほどなのだ。「かくも壮大な視野をもつ作品をシナリオに移し替えるのも想像を絶する大事業だった」。この「大事業」のため、白羽の矢が立って当時ヒューストン監督が住んでいたアイルランドにわざわざ呼び寄せられたのが、作家のレイ・ブラッドベリだった。
ブラッドベリといえば、これまた有名な小説家である。当時彼はまだ三十三歳。SF史上に残る傑作として高く評価されることになる『火星年代記』を出したばかりの、新進気鋭の作家だった。
しかしSF界きっての繊細な抒情詩人として知られるブラッドベリと、アメリカ文学史上もっとも手ごわい巨編『白鯨』、そしてこの鯨にもまして豪放磊落(らいらく)な怪物であるヒューストンという組み合わせはなかなか想像しがたい。その想像しがたいことが起こってしまい、絶妙の化学変化が生じた。その結果が本書である・・・
ブラッドベリは好きな人だが、あまりたくさん作品を読んでいるわけではない。だが、このシチュエーションは面白そうだ。
今週は、松原隆一郎も筆を執っているし、いい書評が多かった
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発信箱もよし。
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