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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「岩波書店がGoogleに買収される日」(補足完全版)。

(今日は一応、最後まで書きます)
あっ、なんかどこぞの新書に使えそうな題名&コンセプトだな(笑)。ひところ、ゴマブックスなんかで「●●が●●●される日」という未来予測シミュレーションがはやり、落合信彦はこのへんから出てきた。
といいつつ、出版業界の内部事情はほとんど知らないので、詳しい方の指摘を受けて修正していきたい。


「岩波包囲網」とは?

これは俺が勝手に言ってるだけだが・・・岩波のイメージ、得意分野、強み、収入源ってなんだろう?となるとこう並べられる。


岩波文庫
岩波新書
・それと被るが、日本の昔の大家の古典
・世界の、いわゆる「名作」古典
・辞書、特に「広辞苑
・「書店買い切り制」による低リスク


まだブックレットとか一定層には確実に売れる専門書とか、いろいろあるんだろうけどとりあえずね。で、今、上にあげたやつってすべて、トレンドとしては相当厳しいでしょう。

青空文庫のゲリラ戦

まず名作古典だが、昨日挙げた「青空文庫」がある。

6500作品無料配布作戦に関してはこちら。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/26/17318.html

そもそも青空文庫って何ぞや?はこちら
http://www.aozora.gr.jp/guide/nyuumon.html

俺もまだ、結局は紙世代で、読むには文庫のほうがいいと思っている。
だが、古典っていま、引用とか研究のために使うことも多いんだよね。そういうときはPC上なら検索機能もあるわけで、どっちが便利かは論を待たない。
また、ウチも中島敦名人伝」や芥川龍之介の短編などを引用しているが、ブログにエントリーするときも青空文庫のほうが便利だ。
いくら意義があるとはいえ、やっぱり従来の出版社が、あまり好意的に捉えないよねえ。そして、やっぱりつっぱり、これで本来だったら売れていた岩波文庫が売れなくなった、得べかりし利益を喪失した・・・という部分はもう断言しましょう、確実にある。すくなくともその実例一例が、今キーボードを叩いている(笑)。


次々「新訳」。海外の名作、パイの奪い合い。

くしくも昨日、朝日新聞は広告がらみのだったかな?三ページにもわたる「海外名作の新訳特集」を行っていた。
いや、最近の新訳はすごいよ。


岩波もその流れが分かっていて、ドン・キホーテを自社で新訳し、評判になっているが、たとえば「カラマーゾフの兄弟」。
はてなでは新潮文庫が紹介されているが、岩波書店米川正夫訳で全4冊を出している。


しかし現在、何を考えているのか、あの光文社がそれの新翻訳を出した。
そして大評判を取っている。
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2007/07/20070729ddm015070084000c.html

◇『カラマーゾフの兄弟 全4巻+エピローグ別巻』
 (光文社古典新訳文庫・660〜1080円)


 ◇画期的新訳で名作が「現代文学」になった
 何やら信じがたいことが起こっている。新訳版『カラマーゾフの兄弟』が爆発的な(というのはちょっと大げさだとしても)売れ行きを示しており、全五巻のトータルがもう二十五万部にも達したというのだ。『カラマーゾフの兄弟』といえば(略)名前だけは聞いたことがあっても長すぎて読み通せない、敬して遠ざけられる古典の代表格である。

 いまから考えてみると、亀山氏による新訳が出る少し前から兆候らしきものはあった・・・


http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2006/10/20061008ddm015070002000c.html

外国文学や古典の翻訳と歳月の関係性は、ファッションの流行[はや]りすたりにちょっと似ている。たとえば、六本木あたりで催されるオペラのガラコンサートに鹿鳴館時代のドレスで出かけるのは、かなり勇気がいる行為だろう(略)
翻訳の場合も、かつて一世を風靡[ふうび]した名訳が、時の流れ、言葉の移り変わりの中で古びた、近寄りがたい存在に変じてしまうことはままある。新訳を刊行する意義というのは、そんな風に近づきがたくなってしまった作品を、もう一度人々の手元に引き寄せることにあるのだ。

 この九月に創刊された「光文社古典新訳文庫」は、そうした役割を意識しつつ、さらに刺激的な工夫を凝らした好企画である。その美点を、三つほど挙げてみよう・・・


「新訳」は、旧訳も巻き込んで再度ブームをつくりだすということもそれなりにはあるが、っやっぱり基本的には古いものを駆逐していく。新訳本のやばいところは、先行者の状態を見て「やっぱり売れそうだ」「今は売れてないにしても潜在的な需要がある」と見極めて、ピンポイントでパイをわしづかみにしてむしりとっていくいくことができるつーこと。


それに、やはり岩波の訳は、かつて飛びぬけた先行者であったことが逆に災いして、表現の古さだけじゃなく、逐語的な翻訳や、外国語の構造に日本語を合わせる様なやり方でもって、普通に読みにくくなっている。
あっしのような非教養階級だけじゃなく、山本夏彦高島俊男のような人−−旧かなや文語などにノスタルジーや論理性をみとめるようなタイプでさえ、岩波翻訳本に対しては「文化の罪人」とか「日本語の敵ですぞ」とか言うている。
UWFの功罪、にもにて歴史的な制約や限界もいろいろあるんだろうが、「いま、そこにある岩波文庫」が売れるか売れないかという点ではひとつのハードルになっていることも事実だ、と思う。

「辞書」の衰退

通信機能やウェブコンテンツの充実で、辞書の需要が減ってきた・・・なんて話はしつくされてるから、よく考えたらいまさら書く気になれないや。
ウィキペディアのごくわずかな期間での充実ぶりは言うまでもないが、それじゃ信用できない、という向きには大辞林 ( http://dictionary.goo.ne.jp/ )がある。
デイリー新語辞典とも連動しているから、http://www.iwanami.co.jp/kojien/で岩波が自慢する「現代語」のほとんどがこれで対応できてるのさ、とっくに。

一応の信頼できる基点としてこれを使い,さらに詳しい情報がほしいときはウィキペディアを見た上でそこに出てくる単語をダブルチェックし、確認する。これで足らないような用件はほとんどないといっていいし、もちろんそのときに「広辞苑」一冊があったからそれが解決するという可能性はほとんど統計上の誤差といっていいほど小さいだろう。

何かの形で辞書というものは残るのだろうが、出版社で稼ぎ頭になるということはあり得ない。

文庫・新書大競争時代

多すぎ。この一点。
クズも含めてたくさんあって、そこから選んでこそ全体の質が高まるんだよ・・・というスタージェスの法則スタージョンの法則」は法則だが、もう勘弁してくれ、とこっちが悲鳴を上げる状態なんだから。
昨年も新規参入があった。
岩波新書は一部は質が高いのだろうが、それにしたって特別の権威を感じている古い世代(下手すると毎年鬼籍に入っていく)以外は、ソフトバンク新書も岩波新書も同じっちゃあ同じだ。これも、同社の体力を奪う効果は十分。

買い切り制

岩波書店ウィキペディアの「岩波書店」

・・・岩波書店は他の出版社の用いる返品制を採用しておらず、全て書店の買い切りで、かつ高正味(=出版社側の取り分が多い)であるため値下げもできず、不良在庫となっても処分が難しい。そのため書店の岩波新書の多くは隅のコーナーでありながら日焼けしていたり、小さな書店ではほとんど取り扱っていない

http://f29.aaa.livedoor.jp/~resalep/consignment.html

こちらの買い切り制度を採用したほうが、その一社自体の利益を図るにはまだ有利?という説もありますが、でもやっぱり、これが岩波の”プレゼンス”を少しずつ薄めていっているような気が素人目にはします。

飽きてきたので承前。岩波書店の経営状態。

上場企業でもないので、あそこの今の経営状態は結局のところ「不明」。
例の、”某出版関係者”に聞いても、結論としては分からないそうだ。
数年前の取次「鈴木書店」んも倒産は岩波にも打撃だったことは間違いないのだが、何しろ老舗出版社であるから、土地資産が膨大にあるとかないとか、そんな真偽不明の噂があってなんともかんとも。
今検索したら

http://www.president.co.jp/pre/20011217/02.html
朝日新聞による買収説まで流れているが
社長直撃! 岩波書店
「経営不安説」の真相


なんてのがあったが(笑)

結論

んで、
ようやく表題の「google」話ですが、基本的には勘とハッタリ(笑)。
朝日新聞のほうが、いろいろと親和性はあるし(爆笑)

だがGOOGLEと敢えて言うのは大辞林のウェブ無料公開はかなりの需要、すなわちサイトへの誘引力を発揮しているでしょう。ネット企業が、辞書コンテンツをほしい・・・というのは無理がない理屈のような気がしてます。
広辞苑がグーグルに買収され、ウェブで公開されてそこに連動広告・・・なかなかいいビジネスになると思いますわ。

そしてまた、古典というのは当然著作権は切れているけど、それをいろいろ校訂、編集したりする人の権利もついて回る。岩波をいったん通し、それをてこにすれば…。
いわゆる古典をウェブにアップし、これまたアクセス増と連動広告につなげたいという企画でも実施する場合、権利関係も今以上にスムーズになる。

すなわち青空文庫の領域に逆侵食する、ってことですかね。
そんな可能性もあるなあ、と思いました。

最後投げやりな結論になっちゃったが、部外者の考察としてこんなとこでいっぱいいっぱい。

(完)