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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ETV特集余波。「ライトノベルの歴史の流れはどう位置づけるべきか?」

昨日、おとといのETV特集に関する話にはいろいろと反応を頂いた。


その中で、1000日を超える当道場本舗のエントリの中で最も多くのブックマークをもらった
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070821#p2
■[読書][SF][漫画]ある出版関係者にライトノベルやSFのことで雑談した

やコメント欄にときどき登場する「某出版関係者」からお便りをいただきました。
内容は俺が書いた

・・・そういえばこういう小説(※筒井康隆時をかける少女」など)は以前、ジュヴナイルSFとか称されたけど、ここからいわゆる「ライトノベル」が生まれたのかね?そういう歴史認識でいいのかな。これはあとで調べよう。


ここのところははてなスターで、id:k-takahashi/さんも興味を示されていたが、正直どう手をつけていいか分からんかったので教示はありがたい。

メールより。一部改変

コメント欄に書くと長文になりそうだったのでメールにて

俺がライトノベルについていろいろ勉強する羽目にあった時に重宝したのが
ライトノベル入門」新城カズマ ソフトバンク新書


で。これが、この作者自身がライトノベル作家(最近ではハヤカワ文庫「サマー/タイム/トラベラー」の高評価で普通のSF作家としての知名度もある)で、かつ評論もやっているというありがたい人です。結構わかりやすかった。おかげでこの人の普通の小説もいろいろ読みましたです。


この人の話では、ライトノベルの起源は高千穂遥の「クラッシャージョウ」ではないか、と。
初出が1979年で、当時ガンダムで有名になっていた安彦良和がイラスト担当であった、ということで、「小説にアニメ調のイラスト」ということではこの作品が嚆矢ではないか、と。
問題は高千穂氏は「自分の作品はライトノベルではない」ときっぱり否定しているらしいことなんだけどw。

田中芳樹氏をはじめ、SF畑の人たちは、基本的にライトノベルを書いている、という意識はなかったと思うし、このあたりがライトノベルに含まれてしまうのは、「後付け」であって俺自身は非常に違和感を感じるところです。

ライトノベル」という言葉とともに認識された小説……としては富士見書房から出た神坂一の「スレイヤーズ」シリーズが最初ではなかろうか、と、そこでは言われている。


90年代(第一巻は89年)にアニメ化等がされたんだが、「このアニメの原作は漫画ではなく、イラストを多用した小説なんだよ」ということも含めて、世間への認知度を高めたんだな。
そういう意味でこの作品がメルクマールではなかろうか、ということだ。


スレイヤーズ」以降、「アニメ調のイラストがある小説がライトノベル」というおおざっぱな認識ができたことで、そこから過去のジャンルが「再定義」されたから話がややこしくなってくる。


つまり、その定義を結果的に満たしてしまう、元々は「少女向け」と認識されてきた講談社コバルト文庫だとかもライトノベルに取り込まれ、さらにはオタの女性(いわゆる腐女子)向け、と認識されてきたボーイズラブ(いわゆるやおい。男×男モノ)もライトノベルに取り込まれ、田中芳樹だとか、栗本薫だとか、微妙な線にいる方々も取り込まれ・・・という流れなのです。


また、「スレイヤーズ」以前に出ていた、まだライトノベルという言葉がなかったころに出版された富士見書房などのタイトルもライトノベルと認識され・・・と、どんどん裾野があいまいになって行き、結局ライトノベルの定義そのものが危うくなってしまう・・・というわけだね。


ふーむ「ライトノベル入門」か。
以前に当本舗が言っていた。「ライトノベルを世間に届かせる先兵、開拓者、通訳」
そういう存在になり得るのかな。

BSライトノベル夜話」……いやいや、それは難しいかな。CSならどうだろう。
あるいはロフトプラスワンで、その年一年の収穫を紹介し、賞を勝手に贈っちゃう「日本オタク大賞」的なやり方もできるよね。宝島社が成功させて以来「勝手にランキングつけて1年総括ムック」・・・「このXXがすごい!」系ムックはいろんなジャンルにあるけど、たしかこの業界にはもうあるんだよね。
書店で見たことある。
まあ、そんな業界活性化(十分活性化してるやろ)を夢想する前にこの業界の名作古典をお前が読んどけ、って話なのかもしれんが。