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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

チャベス大統領、独自の無料表計算ソフト開発へ。「人民はマイクロソフト支配に抵抗する」(近未来SF)

2008年7月5日、ベネズエラ独立記念日
皮肉にも最大の敵、米国の独立記念日と1日違いだが、その祭典を司る主の表情はあまりにも対照的だった。
ジョージ・ブッシュ大統領の支持率は9.6%。ついに前代未聞の、一桁の支持率を記録した。民主党大統領候補バラック・オバマは、現職大統領批判の追い風を受け、終始共和党候補のジュリアーニをリード。ジュリアーニは逆転を目指し「現大統領はたしかに過ちを犯した。それを穏やかに修正したい」という、大統領批判に踏み切り、両者から挟み撃ちを受けている状態だ。
式典でも、ゲリラ的に開かれるプラカードはブッシュ批判一色。野次もひっきりなしで、同時間には同時多発の暴動が相次ぎ、テレビの中継時間はそちらが半分以上を占めていた。


一方、チャベスはその前年に行った反政府系TV局閉鎖の混乱を最小限に抑制することに成功していた。全ては、同時期の原油高騰がアシストしたと言ってもいい。国有油田からの利益は労せずして1.8倍になり、さらに貧困層への飴は甘みを増し、その圧倒的多数の支持が、言論の自由への懸念をかき消したのだ。同時期の土地改革も、補償額を上積みすることで旧支配層の中から切り崩される層も出てきた。
それでも、一時的な投機筋の動きと思われていた原油高は長引くイラン・イラクの政情不安、マラッカの海賊の活発化でやむ気配は無い。「チャベスマネー」と言われるベネズエラの保持する外貨と、多分に派手好みな面もある大統領の新事業は、ビジネス界でも注目の的だった。


チャベスは、独立記念日の式典の壇上で、熱狂的な群集の声援に時折演説を中断させられながら、自分の業績を列挙した。
スラム街の住民は安値で物が買える「社会主義スーパー」、
反米のCNNと呼ばれる「テレスール」
中国との共同油田開発、
ハリウッド映画(黒人奴隷反乱の史劇)への出資・・・

拍手の波の中、チャベスは言葉を続けた。
「我々のボリパル革命、新社会主義のとるべき道はひとつであります。それは、アメリカの帝国主義に全局面で対抗することです。軍事でも政治でも、経済でも文化でも。」
すこし間を置き、トーンを上げた。
「そしてITでも、です! いま現在、アメリカの独占資本はITの恩恵を囲い込み、自らが肥え太ることのみを考えているのが現実です。真のIT技術は、貧困の打破のためにこそ存在しなければなりません。」

「ここで、私は以下の計画を発表します。
ベネズエラ政府は、国営で、現在ビル・ゲイツなる盗賊が高値で富を収奪している『エクセル』の機能を上回る表計算ソフトを開発し、それをすべての言語で、完全に無料で世界中に供給したいと思います。ボリパル革命を記念し、その指導者シモン・ボリバルの名からそのソフトは『シモン』と呼ばれるでしょう。この計画を含め、すべてのベネズエラIT革命には、技術指導者としてヤパンの優れたエンジニアであるイサム・カネコが参加してくれます」。
大声援が飛んだ。
「さらに、ワープロソフトもベネズエラ製の無料ソフトが今後世界で使われるでしょう。ラテンアメリカ革命の先達者の名を関した『フィデル』と呼ばれるソフトが」


「そして、メールソフトもです。そのソフトの名称は・・・」


『ウーゴ!!』『名前はウーゴだ!!』
群集は、ウーゴ・チャベスの名前を、と絶叫した。自然発生的なものなのか、群衆を指導する民兵団らがたくみに先導したかは分からない。


チャベスは、大げさに困ったような顔をし、
「名前のことは後日検討しましょう」と、話をもっと民衆に身近なスポーツ振興や医療サービスの話題に振り、群集はそのつど拍手した。


ただ、各国のビジネスマンにとってはベネズエラの医療や、ましてや新メールソフトの正式名称などはどうでも良かった。それがもたらす影響を分析し、世界各国の株式市場は乱高下しつつあった・・・・


まあまあ、思いつくまま出来の悪い近未来シミュレーション小説を書いてしまいました。
自作解説をすると
イデア自体は前から考えてまして、要は

1・「パソコンソフトって開発はともかく、一度出来ちゃえばそれを量産するコストはすっげー低いよな」
2・「じゃあ、その開発を、商売っ気抜きで名誉とか意地とか国威とか自己宣伝とか、そういうことがらみでやるお金持ちの主体があれば、巨大なソフトも無料になるんじゃないか?」
3・「その場合、マイクロソフトはどうなるのかね?」


なんてことを、まだグーグルが検索一本の会社だったころから夢想してたのですよ。
今回はその夢想を

・金持ち組織で(ある面から見れば)奇矯で無駄なことに使いそうなベネズエラチャベス)が、TV局閉鎖がらみで近頃再び話題になったこと
・昨日、グーグルが実際に無料表計算ソフトを始めたうんぬんを日経新聞で読んだこと
(遅いねえ情報が。すでにhttp://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20319267,00.htm
http://www.chikawatanabe.com/blog/2005/11/post.htmlってやってたのにさ)

つーことと、独自の巨大プロジェクトとアメリカ世界支配の軋轢が隠れたテーマになった
[rakuten:book:11258374:detail]
(宇宙へ伸びる軌道エレベーターがテーマ)

ブックオフで買ったことで形になりました。

まあ、もしこんなのが実現してもそう単純にはいかんわな。
ウィンドウズで走らせるという前提なら、MSが当然特許をいろいろ持っていて、それに引っかからず表計算ソフトやメールソフトをつくれるとは思えんし、かといってリナックスとかといても、心情的には熱烈なリナックス応援団のつもりである当方が、そもそも一回もリナックスを使ったことが無い。
でもまあ、グーグルが本当に日本語版のウェブ上表計算ソフトをリリースするなら、それが世界を制覇できるか、ユーザーの一人となりつつウォッチしますよ。

実際、いまんところはどんな感じなんだろうね?