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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

和月伸宏が復活か?フランケンシュタイン漫画

たまたま寄った書店に、増刊だか赤丸だかスペシャルだか、なんか少年ジャンプの親戚みたいなのが売ってたんでまったく期待せず手にとって見たら、和月伸宏氏の作品が載っていたよ。
タイトルも、覚えていない。
そもそも和月氏、最近の動向をあんまり知らない。たしかちょっと前までジャンプにまだ連載していたはずだが一回も読んでいない。不思議なもので漫画雑誌って、私ぐらいになりますと同一雑誌を読んでいても存在すら知らないまま済ませることも可能です。
一時期はトップを張り、天下を取り、遠く海外にもその名を知らしめた人が・・・・勝手に「ジャンプのマーク・ケアー」とか命名したりね。失礼な。



ところが、今回掲載されたこれが意外と面白かったのですよ。
以下、ネタバレも含めて話しますのでご注意を。


この世界では有名な「フランケンシュタイン」の技術というものが不完全な部分もありながら広く知れ渡っており、数々のフランケンが世にうごめいている(らしい)。そこを旅するのが、フランケンシュタインの少女と、それを管理する人間の男。
フランケンシュタインの少女は、実は人間と同じく全くの非力で、むしろ人間離れしたパワーを持つのは、男の右足の義足。ただし、少女にもパワー以外の特殊能力がある。

その秘密を、少女を解剖して暴こうとする悪人が・・・・・・・・・

って話です。
少女フランケンシュタインの能力・および出生の秘密が、二重三重に織り込まれていて、ストーリー全体ではなかなかよく出来ていると思います。
(ただ、オープニングのあれは矛盾しているような。あの事故?が囮だったのなら、必然性が少なすぎるし、何より自分の目論見どおりに行く成功の可能性が小さすぎると思うんだが。あの事故はマジに偶然?それじゃ今度はご都合主義的)

とくにフランケンシュタインというのは不老、不死、「生とは何か、死とは何か」「人間は神の領域を侵していいのか」という石ノ森章太郎手塚治虫が追い続けたテーマに容易につながるから、そこである種の悲劇性と、善悪で割り切れないもののの存在を示すことができる。ここの部分も極めて上手い。



ただなあ。
ここから先、いちゃもんっぽくなっちゃうんだが、何か、彼の作品にはそういうテーマ性の部分でとくに「つくりもの」的な違和感を感じてしまうんだよな。
いや、これは自分でも「〜〜ゆえである」というロジックを組み立てられているわけではないので、ただの感情・感想だと言われれば認めるつもりだ。「ストーリーや人物設定がどこかで見たことがある」という批判でも勿論ない。いや、確かにどこかで先行作品を見た記憶はあるのだが(笑)、新しい世代が先行フィクションを組み合わせ、ばらばらにしてパターンを使う、あるいはその裏をかくのは常套手段で、それを批判するつもりは毛頭ない。
椎名高志だってそうだろうしね。

ただ、違和感やつくりもの感を個人的に感じているのも事実で、同時に面白いという評価も事実で、なんか複雑な気分でした。

正式なタイトルも覚えていないので和月やフランケンという単語で検索したら


http://www.pinky.ne.jp/~toybox/fu/archives/2005/10/ugoodead_body_a.html
エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-」

というのがあったが、これ一年前のだな。シリーズだっけ。


ところで「不老不死」を逆手にとって、「それは本当に幸福なんだろか?」とか「それをひたずら願う人間のあさましさ、むなしさ」を書いた作品というのはいろいろとありますね。
あんまり書いてしまうとこれはこれで興ざめなので、ぱっと今思いついたところで

暗鬼 (新潮文庫)

暗鬼 (新潮文庫)

収録の「賢者の復讐」や、

フレドリック・ブラウンの「不老不死の妙薬」を挙げておきましょう。後者はかなり乾いたブラックユーモアですけどね。