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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ウルトラ・ダラー」で小説デビューの手嶋龍一氏とは?

手嶋龍一「ウルトラ・ダラー」の前評判がきわめて高い。
やや、出版界が創り・仕掛けて大ブームを作ろうとしているような匂いも感じられなくもないが、それなりに前評判やストーリーの骨格を聞くかぎりは、確かに期待していいようだ。


ジャーナリストや政治家が、ポリティカル・スリラーを書いた例はどんなものがあるか。
フレデリック・フォーサイスがそもそもそうだし、ウィリアム・サファイアの「大統領失明す」は以前紹介した。

えーとね、日本でも無いわけじゃなかったはずだ。
ああ、麻生幾「宣戦布告」「ZERO」。

加筆完全版 宣戦布告 上 (講談社文庫)

加筆完全版 宣戦布告 上 (講談社文庫)

あとなんだっけかな。もう少しいろいろあるはずだ。
で、手嶋龍一氏の「ウルトラ・ダラー」に期待がこれだけ高まっているのは、氏がイラク戦争時のワシントン特派員として(余談ながら辺見庸氏(彼も共同通信の元大スクープ記者)がこのときの手嶋氏の報道を米国よりだとか大層お怒りで「俺の同僚だったら殴ってやるのに」などと「抗暴」を示唆していた(笑))視聴者に名を知られた有名人だからというだけではない。

それ以前の、手嶋氏の「ニッポンFSXを撃て」「一九九一年、日本の敗戦」という傑作ノンフィクションをものしているからに他ならないだろう。

ニッポンFSXを撃て―たそがれゆく日米同盟 (新潮文庫)

ニッポンFSXを撃て―たそがれゆく日米同盟 (新潮文庫)


一冊しかはまぞう見つからねえ。絶版か?


このうち、みつからねえ後者について私は読了直後に感想を書いている。残っているので引用しよう。

 特報!
本を読んでいると、これだ!という作品にぶつかることがたまにある。そういう時は、形容詞では
なく本当に体が震える思いがするのだが、また一つそういう本を見つけた。
     「一九九一年 日本の敗北」手嶋龍一(新潮社)(・。・;)
1991年はご存じの通り湾岸戦争の勃発した年である。この戦争において日本は右往左往した。
「金だけで血を流さずにいいのか」「いや、独自外交こそとるべき道だ」「カネなら幾ら負担すればいいのだ」「それは戦費という形か」「そもそも憲法との整合性が・・・」侃々諤々の議論の末、いつの間にか戦争は終わり、日本では何も決まらなかった。・・その4年後、阪神大震災で我々は「日本の敗北」を再び体験するのだが、日本の政・官のシステムに潜む欠陥を、膨大かつ緻密な取材の成果をニュージャーナリズムの手法(小説のような形で情景を再現すること)を用いて表現している。まだ筆者前半しか読んでいないが、推薦するに充分値する本である。


前半の圧巻は、イラクに軟禁された邦人に差し入れの形で暗号を忍び込ませ、情報を収集する場面だ。CIAやMI6でなく日本の外務省がこういうことをやったのかと驚かされる。また、2人だけでクウェート大使館に篭城する参事官や、独断でクウェートの資産流出を止めた橋本龍太郎にも「なかなかやるな」といっておこう。

後ほど詳しく紹介出来るかもしれない。


このころから「後ほど詳しく」と言っておいて書かない小生の芸風は確立されていたようだ(笑)


で、あとひとつ。
手嶋氏本人は、きわめて優秀で取材力、文章力を持ったジャーナリストであったけれども、それと同時にNHKで陽の当たる場所を歩くには、派閥に無関係ではいられない。
そして今回、結局のことろNHKを退職しているわけで、やはりこの前のNHK海老沢体制(エビジョンイル体制)の崩壊とは何がしかの関係があるだろう。
そのへんの裏事情も、野次馬としては知りたいところだ(笑)。



【参考】http://facta.co.jp/blog/archives/20060228000093.html(からいくつか続く)

手嶋龍一公式サイト http://www.ryuichiteshima.com/

2006年02月28日
ウルトラ・ダラー」を100倍楽しむ1――BBC調査報道の真実

3月1日、畏友手嶋龍一氏のドキュメンタリー・ノベル「ウルトラ・ダラー」が刊行される。氏の長編ドキュメンタリーは「ニッポンFSXを撃て」(1991年)、「一九九一年日本の敗北」(1993年)以来だから、実に13年ぶり。彼の愛読者が長く待ちかねた作品で、しかも今回は、フィクションの要素を入れてエンタテインメント性を持たせながら、ぎりぎりまでファクツ(事実)を盛り込むという欲張りな趣向である。

実は本の構想段階から、私も取材協力を頼まれた。彼がNHKを辞めて独立することは聞いていたから、一も二もなく請け負ったが、例によって頭の回転が速すぎ・・・・