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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「メディアの支配者」書評紹介

今、私事ながら忙しさのピークであまり書けない。
これを転載させてほしい。
リンク先だけかいときゃイイだろ、と言われるかもしれんが、ことにナローバンドの人はそうあちこち飛ばないことが多い(特に自分もそうだ)


これはぜひ読んで欲しい、いい書評なので。

http://book.asahi.com/review/TKY200508300348.html

メディアの支配者 上・下 [著]中川一徳
[掲載]2005年08月28日
[評者]野口武彦

 この大河ドラマ的なノンフィクションの序幕では、まず三人の主要人物が紹介される。日枝久堀江貴文鹿内宏明。うち二人は今年の二月、「ライブドア事件」の報道で連日テレビに登場した顔である。おかげで読者には、本書で語られるフジサンケイ秘史から当事者の表情がごく身近に想像できる。心にくい演出だ。

 話は十三年前に戻って一九九二年七月二十一日、日枝グループがわずか十分間のクーデターで鹿内宏明産経新聞会長解任を決議する場面は、「権力を巡って待ったなしの決断」が迫られる瞬間を劇的に再現して圧巻だ。誰がトップになるかの争闘に決着を付けるなら、手段は他にもあろうに、かくも剥(む)き出しの強制手段をもって権力交替(こうたい)を実行したのはなぜか。

 このグループには創立者鹿内信隆の個人史はあっても、「社史」がないと著者はいう。

 信隆は、退役主計中尉で終戦を迎え、戦時の曰(いわ)くありげな人脈・金脈を使って戦後経済に浮上してきた人物である。一九五〇年代に電波事業に手を拡(ひろ)げ、ニッポン放送・フジテレビ・産経新聞の実権を次々に握って、着々と支配力を強め、ついに六八年、「商業右翼」を社是とするフジサンケイグループ会議議長に就任した。

 新聞論調としては反共右翼、テレビでは軽佻浮薄(けいちょうふはく)というユニークな営業路線が確立され、「彫刻の森」美術館や世界文化賞設置などの文化事業も手がけられる。美術品がいかに営利と結びつくかのカラクリは、一時有名になった「持株(もちかぶ)比率15パーセント」とは何かをはじめ、ニッポン放送とフジテレビの入り組んだ持株関係と共に図解されていてわかりやすい。

 八五年、議長職は信隆の長男春雄に世襲され、鹿内一族のグループ支配は安泰と見えた。ところが八八年、春雄が急死し、その後継者に娘婿のエリート銀行マン宏明が指名されたことから家族の内紛が勃発(ぼっぱつ)する。それとタイアップして、三代にわたる鹿内独裁への反逆を呼号し、宏明の罪状を数え上げて追放しようと日枝グループのクーデター計画が胎動しはじめる。

 息も継がせぬ展開である。宏明が最後の武器として握りしめていたニッポン放送株を無力化するために、日枝が株式上場と公開買い付けに打って出ざるをえなかった理由が、これで明快に了解される。その目論見(もくろみ)が、堀江貴文の介入という思いがけぬ事態の出現であえなく反転した経過は、まだ読者の記憶に新しい。

 本書は著者の単行本第一作の由であるが、天下の公器を私物化する勢力への怒りが行間にふつふつとたぎっていて小気味よい。驚くべき取材力を発揮して、放送・テレビ・新聞と「マスコミ三冠王」を誇ったフジサンケイグループ奥の院に踏み込んでいるだけではない。この堅固な筆力には、複雑な事件の連鎖を一望のもとに構成する独自の《史眼》が光っている。

 シカナイ伝説(サガ)ともいうべき一族の愛憎劇から昭和・平成史が見えてくる。浮かび出るのは、株主が投資先の社会的使命を問わず、ただ配当のみを追求する現代日本の縮図である。

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