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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

今回の「タイガー&ドラゴン」で思い出す作品。ヤクザと堅気と。

どうも最後は、ある期間主人公は刑務所に入ることになりそうである。
ヤクザと、また別の世界にいる一般人が、何か共通の趣味やこだわり、来歴をもって心を通わせるも、(主にヤクザの側のしがらみで)否応無く別れる時が来る・・・というストーリーは結構ありまして、なかなかに感動的です。


天才柳沢教授の生活」でも、柳沢教授と元極道の親分の交流の話がある。


http://picnic.to/~ohp/diary/1999/1999_07a.htm
【雑誌】モーニング 7/22 No.32 講談社 B5中

 山下和美天才柳沢教授の生活」。毎回惚れ惚れする面白さである。今回は,柳沢教授が時折訪れて将棋を教わる代わりに英会話を教えている老人のお話。今はスッカリ普通の老人だけれど,彼は実はいくつもの修羅場をくぐってきた侠客だった。老人と柳沢教授の侠気が,緊迫した空気の中で対峙するシーンは見もの。ああ,なんともかっこよい

http://www5b.biglobe.ne.jp/~kouji/mlog/mlog10.html

■モーニング、シリーズ連載「天才柳沢教授の生活」(山下和美)。
柳沢教授が将棋を教わる代わりに英会話を教えている近所の老人。彼の背には大きな入れ墨があった。
文句なしに面白い。ポリシーを持って生きるかっこよさと、だからこそぶつかり合う苦さ。

巻数は分からないけど、1999年7月ごろに掲載されたものだから奥付の収録年度を見れば分かる。傑作選にも載っているかもしれない。

世界のすべてを理知的に把握することを求める柳沢教授(将棋を習うのも、理論と計算で賭け将棋の経験豊富な老人と対決するためだった)が、意地と元子分たちのために修羅の道に戻ろうととする老人に「あなたの行動が分かりません」と呼びかけ、老人は「もともと違う道を歩いてきた二人だったんだ、いっときでも心が通じただけで、よかったじゃありませんか・・・」といって分かれていく。
ある意味、無敵の柳沢教授の珍しい敗北であり、ほろ苦い読後感を感じさせる。



同じく、土田世紀の「俺節」。
もうだいぶ前の作品ということになってしまったなあ。
みならい演歌歌手の主人公が、同郷・津軽のヤクザと仲良くなる。しかし、そのヤクザは次の日、ヒットマンとして殺人に手を染める予定だ。よくて刑務所、悪くて返り討ち・・・・。


「俺、明日から仕事で遠くへ行かなきゃならねえんだけど・・・入院してるオフクロがいる・・・時々顔出して・・・津軽なまり聞かせてやってくんねか?」

「あンた・・・悪いことすんだべ? 遠いとこって刑務所のことだべ?
(中略)
あんた一生、津軽さ帰れねえど!それでもいいのが?
それでもいぐのがぁ? 冷たいピストルだけ抱いていぐのがぁ?」

無言で去っていくヤクザ。

この友人を止めるためには、未熟ながらも自分の歌の力しかないと考えた主人公は、ギター演奏の相棒とともに・・・

という話だった(2巻)のだが、おやまあ、この傑作はいまや絶版であるらしい。
なんてことざんしょ。
一応はまぞうにはあったから情報を張っておくが。

俺節 2 春 (ビッグコミックス)

俺節 2 春 (ビッグコミックス)


あとひとつ思い出したな、「釣りバカ日誌」でもハマちゃんとヤクザの若頭が、釣りを仲立ちに交流する話があった。(2、3年ほど前かな?)

ピストルの入ったずっしり重い鞄とハマちゃんがリール入りだと思って撮り違えて持参し、それがなぜかスーさんこと鈴木社長の手元へ渡って・・・・とこのとき、作品お家芸の「ありえねえような偶然を、二重三重の媒介にしたドタバタ劇」が展開される。
最後の場面でようやく事態を呑み込んだスーさんと若頭がハマちゃん抜きで、釣り船で背中越しに対話。
鈴木会長が「せっかくお知り合いになれたのに、二人の立場上これでお別れになりそうです」とぽつりと話しかける場面が印象に残る。



こち亀」にもクラス会にヤクザをむりやり出席させる両さん、という初期の傑作があった(15巻か16巻)。ヤクザのほうは、当然といえば当然ながら両津がカタギになってるはずはないと思い込んでいる(笑)が、最後にそれが分かり、この日ばかりはとそのヤクザは警察に協力する(というか、ヤクザのケンカに両さんが参加してるともいえるが(笑))

「ガキのころのケンカを思い出すな両津!」
「そうともハデにやれよ 今日は警視庁公認だ!」
「そいつあ ありがてぇ」

長期連載「こち亀」で個別作品の良否を論じるとき、人情話のほうがもの珍しい部分もあり、人情話であること自体で点数が「上乗せ」されるような風潮もある。
それは自分は間違いだと思うけど、これはそういう点を差し引いても心に残る。



きりがないのでこのへんでやめときます。
タイガー&ドラゴン」自体にあんまり話が及ばないで、キーワード来訪者には申し訳ない。うまく、この作品はハッピーエンド的になってもらえればいいですね。