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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

人を生む者、場を作る者−慧舟會久保vsDEEP佐伯論争(kamipro)を読む

昨日に続き、kamipro specialから。




ここに慧舟會・久保社長とDEEP・佐伯代表の誌上論争という、興味ない人には興味ないが、興味ある人には汲めども尽きぬ興味深い話が掲載されている。左の画像は本文と関係ありません。

まったくの余談だが、このマスコットキャラクターのいるお店矢場とんは、以前も取り上げたことがあるが、その当時からさらに公式サイトをリニューアル、
http://www.yabaton.com/


なんとこのブーちゃんがブログを書いている。
http://blog.livedoor.jp/yababoo/

ここはキャラクターグッズも売っているのだが、本業のみそカツ丼もンマイね。銀座シネパトスに行く機会のある人は、近いのでどうぞ。最近、あそこに行く機会もないからな・・・


ちなみにこっちは「ブーちゃん」、久保氏が佐伯氏を呼ぶ愛称?は「プーちゃん」。



本題に戻ると、以前から久保社長は佐伯代表を批判し「腹出すぎだ。太りすぎだ」と批判。kamiproはこれに対して今回、ジャーナリズム精神を発揮し、「…貴方もじゃね?」的なニュアンスをほんの少し醸し出していました。でもまあ郷野聡寛だって「ヘビー級の選手はその限りではない」と言ってたしね(笑)。そういえばファンのごく一部で、リングサイドを見て、「スターウォーズ3に出てくる、印象的なキャラクターを思い出した」とか言っていた人がいたな。
なんのキャラクターだったかは忘れた。
http://www.starwars.jp/databank/character/index.html


まあとにかく、この二人が太ってるか太ってないかとか太ってるか太ってないかとか太ってるか太ってないかとかは枝葉の話であって(じゃあこんなに書くなよ)、いまの格闘技界をひそかに動かす重要人物が、おどろくほど好対照であるということが分かる。
この前の慧舟會vsDDEEP、4対4(3対3?ここが一つの問題)にまつわる話はまあ本筋ではない。DEEPがかつて、PRIDEをぶっ潰す!と本来は対抗団体であったのに、傘下に入ったときの話は強烈だし、なぞの「○○さん」は誰だろう?という話もすごーく知りたいが、これもまた本筋ではない。
私が本筋だと思うのはここだ。

【久保氏】
DEEPっていうのはウチみたいに道場があった上で、大会をやってるところではないでしょ。(略、「DEEP道場」の名はあっても)よーく覗いてみると、DEEpの道場には他人ちから持ってきたモノしか入ってないでしょ(笑)。
(略)ある程度、名前があって実力がある子が集まってきてるだけでしょ、あの道場は。


僕からすれば”道場”っていうのは”道”を教える”場”だと思っているし、金銭面とかを含めてリスクを背負ってやらないとできないことだと思っているから(略)。ある程度のお金を出して場所を借りて、道場のていを作り、そこで道場生を募集して、なおかつ人が育って初めて道場なんだよ。

【佐伯氏】
道場に関していうなら、ウチはみんなが集まって、いい練習ができればいいと思ってやっているだけで。(略、慧舟會の選手も)着てるからね、実際に。(略)みんなで自由に練習して、切磋琢磨してレベルがあがっていけばそれでいいと思うもん。だから強制することも一切ないし。

私の考えでは、より佐伯氏のほうに共感する。久保氏の言うことは一つの正論だが、ハードル高すぎる。なにしろ全国に道場があると自負する禅道会でさえ「ほとんどが体育館とかを借りているサークル。道場とはいえないと思う」となるそうだ。

つうか、これはどっちが正しいかというか定義が違うんだな。
喩えが悪いが、ヨーロッパや米国の州の一部で議論を呼ぶ「同性愛者の結婚を認めるか?」という議論で、「そもそも”結婚”とは」を定義する時「男女間で行うのが結婚だ」という定義の下にあるなら、同性愛結婚というのはいいも悪いも無くそもそも埒外となる。



慧舟會「道場はきちんとお金を出して場所を借り、リスクを背負ったものを言う。そこから人が育ってはじめて道場である」

DEEP「みんなが集まって、一緒に練習してレベルがあがっていく場所があればそれでいいじゃん。選手がそこにマネジメントを頼むかで所属は決まるし」


こりゃあ、定義の違いだやっぱり。
ただ、「体育館を借りてやってるサークル」が道場でないにしてもあるにしても、そこから強い選手は出てきてほしいというロマンは持ちたいし、実際に出てくると思う。GRABAKAがジムをオープンさせ、久保定義による道場を発進させたのは2002年だが、その前からチームGRABAKAは隆盛を誇り、三崎和雄もデビューさせたわけだし。


で、DEEPは結局対抗戦といってもあちこちの強い選手を集めて、道場で育ったという統一性のある慧舟會勢と前回戦ったわけで、これが「『DEEP代表ってなんなのよ?』というツッコミ」になるのは、まあこれも正論なんだけど、だけどそれってそもそも対抗戦企画が最初に浮上した時に言うべき話ではある(笑)

佐伯氏の「その選手を呼ぶときに仁義を切るかも含め『XXはウチの選手』とするかには暗黙の了解がある」というのもまあ一方の正論でありつつ曖昧でもあり、だから私も「チーム猪木祭り2003最強!」とか「MARS最強!」とか「ジャングルファイト最強!」をギャグで言えている。暗黙の了解が有り、かつ曖昧でもあるからギャグになるんだよな。



まあ、どっちにしても「もう一回対抗戦だ!」「ハッキリさせてやりますよ!この業界にデブは二人いらない」とかやってるから、ユーモア含みの企画自体も含めて、生産的に転がっていくだろう。、生産的でなかったXXとXXの論争とは違っていそうだ(笑)。

それも含めて、二人の哲学・世界観の違いは非常に面白い形の違いがあってよかった。
二点から観測すると、その差からより正しい数字が導き出せる。

道場のリスクの制度化について

最後に上の「道場はきちんと場を作り、リスクもしょうべき」という議論に戻るが、よく考えるとボクシングはそれを制度化しているね。ヤングサンデーが休刊して、結局どこに行くんだっけ?の漫画「タナトス−虫けらの拳」では、主人公が所属のボクシングジムにいられなくなり、理解者の元ボクサーが自身がトレーナーとなってジムを興そうとするが、そのためには協会への加盟金を納めなくてはならないー−という展開があった。

だから仲間たちで体育館に集まり、真似事のように殴りっこをしていたらそこで天才の素質が開花し、あれよあれよとチャンプに−−といった「チームBOXBAKA」のような物語は成立しない。ただ健康管理、安全管理の問題でいえばこれが正しいのかもしれない。柔術の世界で1年ほど前にあった問題と同じだけど「組織化」というのは一面そういうものであるのかも。

池内恵が東大に入ったそうだ

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20081008

2008-10-08 池内恵氏が東大に

 池内氏が東大の先端研准教授になったことを毎日新聞で知った。日文研は優秀な研究者が流出するのだよなあ・・・。いや、いる人が優秀でないということはないのだが。しかし先端研というのは分からんところだ。ほとんど理系なのに、御厨貴がいて、今度は池内氏・・・

いやー、これは嬉しい。彼はBJペンなみの若き俊英、天才だ。これでもっと露出も増えるだろう。
さっそく毎日新聞夕刊での短期コラム(仕事の周辺)もはじまったし。

現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)

現代アラブの社会思想 (講談社現代新書)

アラブ政治の今を読む

アラブ政治の今を読む


書物の運命

書物の運命

どれも、もんのすごい、とてつもない本です。
最初のは「アラブ版 トンデモ本の世界」だし、二番目のアルジャジーラ論も秀逸。
三番目は、上の二冊はテーマ的に興味のない、という人も楽しめる書評集。「戦争広告代理店」文庫の解説もこっちに収録されている。
この解説が文庫解説史上三本の指に入る傑作なので、おれもこの本の紹介をなかなか書けないんだよなあ。

以前のこのブログでの「池内恵
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/searchdiary?word=%c3%d3%c6%e2%b7%c3

本日午後10時、修斗大会をSAMURAIで放送

夜十時から。

http://www.samurai-tv.co.jp/index.html?date=20081010
修斗 「修斗伝承03」 9.28後楽園ホール
2008年10月10日(金) 22:00〜24:00


プロフェッショナル修斗
修斗伝承03」 
9.28後楽園ホール
総合格闘技修斗」08年度シリーズ「修斗伝承」今回は、世界フェザー級チャンピオンシップをはじめ、世界トップランカー同士の対戦を多数マッチメイク。

【対戦カード】
修斗世界フェザー級チャンピオンシップ>
上田将勝×マルコ・ロウロ
●漆谷康弘×正城ユウキ
●不死身夜天慶×石渡伸太郎  他

「格闘秘宝館」11月15日開催

http://d.hatena.ne.jp/aohoshi/20081007

2008-10-07
■お待たせしました!格闘秘宝館 vol.3の開催決定です! 23:08CommentsAdd Star

渋谷アップリンクファクトリーでの開催から早3ヶ月。マンを持して11月に格闘秘宝館が帰ってきます!

イベント名称:格闘秘宝館 vol.3

開催日時:2008年11月15日(土) 18:00会場 19:00開演(予定)

開催場所:阿佐ヶ谷ロフトA

(杉並区阿佐谷南1−36−16−B1 TEL:03-5929-3445)

http://www.loft-prj.co.jp/lofta/index.html

入場料金:未定

主催・司会:高橋ターヤン映画秘宝、たまにkamiproライター)

共同司会:橋本宗洋(格闘技ライター、映画秘宝クラブレビュアー)、高崎計三(格闘技ライター)

ゲスト:期待を裏切らぬ豪華ゲスト!(が来るといいな)

告知URL:http://www.fight-hihokan.com/

談志的教育論、落語的教育論

てれびのスキマ」で、最近話題の立川談春が描いた「師匠・立川談志」についての本を紹介している。
もともと弟子をとって育てるという落語の伝統から、師匠と弟子についての多くの挿話と名言ー−つまり教育論がこの世界にはある。
そこで孫引きさせてもらう。
http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/20081007

「よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えた通り覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に理論がないからそういいいいかげんなことを云うんだ」

本日のエントリは一番上がちょうど道場論に関連しているが、司馬遼太郎が「北斗の人」で描いた、合理の北辰一刀流が古流を駆逐していくのにも通じるのだろうか。

「学校というところは思い出作りには最適な場所だ。同級生がいて遊び場がある。だが勉強は何処でもできる。俺の側にいる方が勉強になる。学校では会えないような一流の人に会える。学歴なんぞ気にしなくていい」

この談志の自信、すなわち落語が持つ強さへの自信だと思うが、私はこれを逆の読み方できると思う。
「勉強はどこでもできる。だが、同級生がいて遊び場があって思い出をつくれるのは学校だけだ」とね。これもまたひとつの学校論では。



と、こうてれびのスキマを引用した後、一度書いた読売新聞「編集手帳」からの孫引き挿話を再掲載。
落語の伝統にそって、出稽古で他の師匠に落語を学んでいた若手の噺家が、いつも稽古の後にごちそうしてもらう、その練習先の師匠の貧しさを知った。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080402#p5

・・・ある日、満腹になって帰る途中、忘れ物に気づいて戻ると、小三治(※小さんの当時の名)夫妻が子供と昼飯を食べていた。サツマイモだった。小金治さんはとまどい、胸をつかれ、帰りの電車で泣いたという。

 申し訳なさに、もう稽古に通うのをやめようと思い、師匠の桂小文治さんに相談した。師匠は言った。「大バカやな、お前は。小三治はお前に落語を教えているんやないで。落語ちゅうもんを、この世に残しているんやないか」と。

教わり、芸を受け継いだ人がやがて、おのが食を削ってまで次の世代にそれを引き継ぐ。落語に限るまい。伝統芸能は、伝統文化は、数知れない人々が「志」の細い糸をつないでここまできたのだろう。
小さんさんが87歳で亡くなって4年。今年は長男三語桜さん(59)が六代目を継ぎ、襲名披露の興行がつづいている。あの日、サツマイモの食卓にいた幼い子供だろう。芸の糸、志の糸の末永かれ。


談春の本は

赤めだか

赤めだか

談志のおかしな師匠ぶり、そして弟子たちの奇人ぶりのほうに焦点を当て、面白おかしく描いた漫画に

風とマンダラ 1 (モーニングワイドコミックス)

風とマンダラ 1 (モーニングワイドコミックス)

がある。