「大晦日 首でも取ってくる気なり」
「大晦日 首でよければくれてやり。」
たぶん、この寄付金300円を出さないとこう言われる。
なにをぬかしやがるんだ、この丸太ん棒め!てめえなんざあ丸太ん棒に
ちげえねえじゃあねえか。血も涙もねえのっぺらぼうな野郎だから丸太ん
棒てんだ。てめえなんざ人間の皮を着た畜生だ.。呆助、ちんけいとう、
株っかじり、芋っぽりめ!てめえっちにあたまをさげるような
おあにいさんとおあにいさんのできがすこうしばかりちがうんだ。なにぬかしゃがんでえ。大きなつらするない。大家さんとか旦那とか
おだてりゃあつけのぼせやがって、ごたくがすぎらい。どこの町内の
おかげで大家とか町役とか膏薬とかいわれるようになったんでえ、ばかっ
、むかしのことを知らねえとおもってやがるか?このあんにゃもんにゃ!
てめえの氏素姓を並べて聞かしてやるからな。びっくりして座り小便して
ばかになるな。やい、よく聞けよ。どこの馬の骨だか、牛の骨だかわから
ねえ野郎が、この町内にころがりこんできやがって....そのときのてめえのざまはわすれやしめえ。寒空にむかって洗いざらし
のゆかた一枚でもってがたがたふるえてやがったろう?さいわいと町内
にはお慈悲深えかたがたそろっておいでにならあ。あっちの用を聞いたり
、こっちの使いをしたりしてまごまごしてやがって、冷や飯の残りをひと口
もらって、細く短く命をつないだことをわすれやしめえ。てめえの運のむいた
のはなあ、ここの六兵衛さんが死んだからだそこにいるばばあは、
六兵衛のかかあじゃねえか。その時分にゃあ、ぶくぶくふとって黒油
なんぞつけて、おつに気取りやあがっていやらしいばばあだ。ばばあがひとりでもってさびしいばかりじゃあねえや。人手がたりなくて
こまっているところへつけこみやがって、「おかみさん、水くみましょう。
いもをあらいましょう薪を割りましょう」と、てめえ、ずるずるべったり、
そのばばあとくっついて、入夫とへえりこみゃあがったろう?その時分の
ことをよく知ってるんだい。こっちゃあ。六兵衛はなあ、町内でも評判の焼きいも屋だ。川越の本場のを厚く
切って安く売るから、みろい、子供は正直だい。ほかのいも屋を五軒も
六軒も通りこして遠くから買いに来たもんだ。
それをてめえの代になってからはなんてえざまだい。
そんな気のきいたものを売ったことがあるか?場ちげえのいもを売りや
がって、たきつけを惜しみやがるから、なま焼けのガリガリのいもで
もってな、そのいもを買って食って、腹をくだして死んだやつが何人
いるかわからねえんだ。この人殺し!