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朝日新聞
(社説)安保法制成立10年 恣意的運用 厳格な歯止めから
2025年9月19日 5時00分
自国が直接攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国への攻撃に武力で対応できる集団的自衛権。第2次安倍政権が、歴代内閣の堅持してきた憲法解釈を変更し、その一部行使を可能にした安全保障関連法の成立からきょうで10年になる。
行使を想定した自衛隊と米軍はじめ他国軍の共同訓練が進むなど、既成事実化が進むが、当時指摘された憲法違反の疑いは残されたままだ。
日本を取り巻く安保環境が厳しさを増すなか、政府による拡大解釈の懸念も拭えない。まずは恣意(しい)的な運用に厳格な歯止めをかける議論から始めるべき時だ。
■民主主義に深い傷痕
政府は憲法9条の下では、日本が攻撃された場合に自国を守る個別的自衛権の行使のみが認められるという立場を維持してきた。
集団的自衛権の行使には憲法改正が必要としていたのに、安倍政権は内閣法制局長官を交代させ、憲法解釈の変更によって道を開いた。
他国への攻撃であっても、日本の存立が脅かされ、国民の生命などが「根底から覆される明白な危険がある」場合を「存立危機事態」と認定し、武力の行使を認める安保関連法を成立させた。
大多数の憲法学者や歴代の内閣法制局長官まで「違憲」と断じ、国会前などで大規模なデモが行われた。法案審議の強行は、権力は憲法に縛られるという立憲主義をないがしろにするもので、日本の民主主義に深い傷痕を残した。
存立危機事態とは、具体的にはどんなものか。政府は日本の原油輸入の大動脈である中東ホルムズ海峡の封鎖を例に挙げ、自衛隊による機雷掃海に言及したが、後になって「現実問題として想定されていない」とした。
しかし、もはやそれは「仮想」の事態と言い切れない。米国が6月にイランの核施設を空爆した際、政府内では、イランが対抗措置としてホルムズ海峡を封鎖した場合の海上自衛隊派遣の検討も視野に入ったという。
■「専守防衛」との矛盾
さまざまな法律を束ねた安保関連法の中に国際平和支援法がある。戦争や紛争に際し「国際平和共同対処事態」と認定すれば、自衛隊が地球のどこでも、他国軍を後方支援できるという新法だ。
ロシアとウクライナの停戦が実現した場合、ウクライナへの「安全の保証」のため、英仏などが兵士を派遣する構想がある。欧州との安保協力を強化している日本が、新法に基づいて自衛隊を送る可能性がないとは言い切れない。
安保法制が想定した事態が、10年を経て現実味を帯びだしたといっていい。
この間、政府はそれまでの抑制的な安保政策の転換を重ね、質量ともに防衛力の強化に力を注いできた。3年前の安保3文書の改定では、敵基地攻撃能力の保有や防衛関係費の「倍増」を決めた。
にもかかわらず、今年の防衛白書でも、「基本政策」の筆頭に挙げられるのは「専守防衛」だ。「武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使」するなどの定義に、安保法制は合致するのか。
個別的自衛権の行使なら、活動の範囲はおのずと日本周辺にとどまる。集団的自衛権の場合は地理的な限定がなく、政府の判断次第で、際限なく広がりかねない。この状態は放置できない。
安保法制は10年近く運用されており、米国などとの関係もあって、ただちに廃止は現実的でないというなら、まずは政府の裁量に強いタガをはめる是正措置を急ぐべきだ。
■与野党で徹底議論を
その手がかりとなる考え方を、安保法制違憲訴訟の一昨年の仙台高裁判決の中に見ることができる。
憲法に「明白に違反するとまではいえない」という結論には賛否がある。
ただ、判決は、その前提として、国民の生命などが「根底から覆される明白な危険」について、厳格かつ限定的な解釈を示した政府の国会答弁が堅持されることをあげた。「我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」とした説明などだ。
問題は、判決が前提として取り上げた以外に、多くの国会答弁があり、なかには条件を厳格に絞っているとは言えないものがあることだ。ホルムズ海峡での機雷除去が可能だとの見解が典型である。
先の衆参両院選挙を経て、国内の政治状況は様変わりした。自民、公明両党が少数与党になり、野党の責任が増した。その野党には、安保法制に反対した政党の流れをくむ立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などがある。
立憲は選挙公約に「違憲部分の廃止」を掲げたが、野田佳彦代表はどこが該当するのかを問われ、政権に就いた後で検証すると答えた。政権交代をめざす以上、あらかじめ具体的な考えを示すべきだ。
今度こそ、民主的なプロセスにのっとって、自衛隊運用の厳格な線引きを与野党が徹底的に議論し、安保法制の改善策を探らねばならない。
東京新聞
<社説>安保法成立10年 地球の裏側まで、現実に
2025年9月19日 07時11分
多くの国民が懸念を表明していたにもかかわらず、当時の安倍晋三政権が安全保障関連法の成立を強行して19日で10年。この間、他国との軍事協力は米国以外にも広がり、国内総生産(GDP)比1%程度だった防衛費は2%に向けて異様なまでに膨張を続ける。
安保法の目的は抑止力を高め、「日本国民全体のリスク」を減らすことだったが、日本周辺を見渡せば、リスク減少にはほど遠く、逆に軍拡競争を促して「安全保障のジレンマ」に陥っている。専守防衛に徹する原点に返り、安保政策を見直す時期に来ている。
安保法に基づく自衛隊と他国軍との軍事協力は拡大の一途だ。
海上自衛隊の護衛艦「かが」と「てるづき」が8月4~12日、西太平洋での共同訓練の際、英海軍空母「プリンス・オブ・ウェールズ」=写真、神奈川県の横須賀港で=を中核とする空母打撃群を対象に「武器等防護」を行った。
◆海自艦が英空母を防護
武器等防護は平時から自衛隊が他国の艦艇や航空機を警護する活動。安保法で任務に加わり、すでに米国、オーストラリアを対象に実施。英軍には初適用だが、詳しい実施日時や場所は「特定秘密」として明らかにされていない。
この訓練中、英空母艦載のF35B戦闘機が「かが」に初めて着艦した。「かが」はヘリコプター搭載型護衛艦だが、戦闘機が発着艦できるよう改造されている。
アジア・太平洋地域では中国の軍事的な台頭や海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアの軍事的圧力など緊張が高まる。
自衛隊と英軍との協力強化には中朝ロの軍事活動をけん制する意味があるのだろうが、同時に、自衛隊の活動が日本周辺にとどまらず、世界にも広がる可能性を指摘しておかねばなるまい。
中谷元・防衛相とヒーリー英国防相は8月の会談後に発表した共同声明で「日本の戦闘機及び輸送機が英国を含む欧州へ展開することを歓迎した」と明記。9月14日から航空自衛隊のF15戦闘機や空中給油機、輸送機が米国、カナダ、英国、ドイツに派遣された。
今回は親善を目的とするが、長距離航続の訓練にもなる。欧州などで緊張が高まった際、自衛隊機が「地球の裏側」にも遠方展開するための準備にほかならない。
安保法以前、日本周辺での軍事衝突や緊張に対処する旧周辺事態法は「中東とか、インド洋とか、地球の裏側は考えられない」(小渕恵三首相)としていた。
その後、自衛隊はアフガニスタンやイラクでの戦争に派遣されたが、例外措置と位置付け、その都度、特別措置法が制定された。
こうした活動が随時できるよう恒久法化し、歴代内閣が違憲としてきた「集団的自衛権の行使」を一転容認した安倍内閣の閣議決定を反映して他国同士の戦争への参加も可能にしたのが安保法だ。
その成立は、戦後日本が戦争放棄と戦力不保持の憲法9条の下で築いてきた「専守防衛」の法体系や、国民が憲法を通じて権力を律する「立憲主義」を崩壊させた。
◆違憲性は拭い去れない
安保法成立後、自衛隊の他国軍との軍事協力や海外活動の拡大に限らず、憲法の趣旨でないとされた「敵基地攻撃能力の保有」も容認され、他国領域を直接攻撃できる国産長射程ミサイルの配備も計画される。厳しく制限されてきた武器輸出も、殺傷能力を持つ戦闘機までが解禁され、英伊両国とは次期戦闘機の共同開発も進む。
GDP比1%程度で推移してきた防衛費は、関連予算を含めてGDP比2%に倍増させる方針に大きくかじを切り、26年度の概算要求は約8兆8千億円にまで膨張。米国の要求によりさらに膨らむ可能性がある。
しかし、いくら運用を拡大し、防衛費を膨張させて安保法を既成事実化しようとしても、その違憲性を拭い去ることはできない。
安保法は、軍事偏重の風潮を政治家や社会にも広げ、日本国民だけで310万人という多大の犠牲を強いた先の戦争への反省を忘れたかのような言動も相次ぐ。
厳しさを増す国際情勢には軍事的な対応ではなく、緊張緩和に知恵を絞り、外交努力を重ねることこそが、平和国家の道を歩んできた日本の役割ではないのか。
安保政策を専守防衛という本来の姿に戻すには、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定と安保法を全面的に見直すしかない。
再び軍事大国にならず、平和国家として国際社会の信頼を得てきた日本の立ち位置を、安保法成立10年を機にいま一度確認したい。
日経新聞
[社説]抑止力向上は道半ばの安保法成立10年
社説
2025年9月20日 19:05海上自衛隊の護衛艦は共同訓練に参加した豪軍艦艇に「武器等防護」を実施した=海自提供(2021年)
自衛隊の任務を広げた安全保障関連法の成立から10年を迎えた。日本と密接な関係にある他国への武力攻撃を自国への攻撃とみなして反撃する「集団的自衛権」を使えるようにし、日米同盟の強化につながった。日本をとりまく安保環境は厳しさを増しており、抑止力の向上はなお道半ばだ。安保法は2015年9月19日に成立した。日本と国際社会の領域で平時から緊急事態まで自衛隊に新たな任務を与えた。日本が受け身でなく積極的に役割を果たす意志を示し、戦後の安保政策を変えた節目と位置づけられる。
その大きなポイントが集団的自衛権の行使を限定的ながらも認めたことだった。条件として「日本の存立が脅かされ国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とみなす場合に限った。
過去に日本が集団的自衛権を行使するような事態は生じていないが、法律で使えるようにした効果は大きい。「日本は在日米軍を守ってくれるのか」という米軍内の不信感は減り、情報の共有が進んだ。抑止力の向上につながったと日本政府はみている。
実績を積んだのは、平時に他国の艦艇や航空機を守る「武器等防護」と呼ぶ任務だ。米国だけでなくオーストラリアや英国も対象になった。同志国との連携を強め「準同盟」の枠組みを広げた。
相手に行動させないようにする抑止力は、日米を軸としたネットワークづくりが課題になる。その点でトランプ米政権が内向き志向を強めているのは気がかりだ。アジア関与が揺らがないよう、日本は働きかけていく必要がある。欧州やグローバルサウス(新興国・途上国)との連携も強めたい。
安保法制に続いて政府は22年に敵のミサイル拠点をたたく「反撃能力」の保有に踏み出し、防衛費も増やしてきた。
これから世界で起きる事態に対応し、自衛隊が新任務にあたるか検討する場面も出てくるだろう。恣意的な運用と見られないよう政府には丁寧な説明が求められる。
軍事面だけに頼ると、軍拡を競い合う「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。中国、ロシア、北朝鮮は軍事力増強が著しい一方、日本との外交パイプは細っている。中国との間で合意したはずの防衛ホットラインも機能していない。有事への備えと併せて、外交の構想力もまた問われている。
共同通信 地方紙より
社説:安保法10年 議論なき軍事強化、憂う
2025年9月19日 16:05
憲法解釈を反転させ、集団的自衛権の行使に道を開いた安全保障関連法の成立から、きょうで10年となる。
戦後日本がよって立つ平和主義の大きな転換点となり、防衛力の抜本強化や米軍との運用一体化が進む。専守防衛をなし崩しにしかねない動きに歯止めをどうかけるか。民主主義の力が問われる。
安保法は、安倍晋三政権下の2015年9月に成立した。密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる事態を「存立危機事態」と定義。他に手段がないなどの要件を満たせば、日本を直接攻撃していない相手に対し武力行使できるとした。
先立つ14年7月、安倍政権は集団的自衛権の行使を認めないとしてきた歴代内閣の憲法解釈を閣議決定で強引に覆した。圧倒的多数の憲法学者が違憲との見解を示し、反対のデモが連日、国会前を埋め尽くす中で採決を強行した。
安保法制定で、自衛隊は平時から他国軍艦を守る任務を広げた。すでに米軍やオーストラリア軍への武器等防護が行われ、24年までの実績は150件に上る。護衛する艦艇が武装集団などから攻撃されれば、自衛隊は武器使用の判断を迫られるが、その運用実態は「特定秘密」を理由に明かされていない。
そうした防衛の在り方について国民的な議論を置き去りにして、「有事」への準備は進んでいる。
中国が軍拡や海洋進出を活発化し、北朝鮮が核・ミサイル開発を進める状況への対応として、岸田文雄政権は22年12月、新たな国家安全保障戦略で敵基地を攻撃する「反撃能力」の保有を明記した。
さらに防衛費を27年度までに国内総生産(GDP)比2%に増額し、自衛隊と在日米軍の一体的運用も強化。「台湾有事」を念頭に西南諸島の軍事拠点化を進める。
だが反撃能力の行使は、判断を誤れば、国際法が禁じる先制攻撃となる恐れをはらむ。米側の情報力に依拠する上、米軍指揮下に組み込まれ、他国との戦争に日本が巻き込まれるリスクを高めかねない。
何より、重大な安保政策変更にもかかわらず、情報公開は十分に行われず、国会によるチェック機能も心もとない。文民統制(シビリアンコントロール)の重要性は一段と増している。
少数与党政権では、集団的自衛権の行使を巡る判断を委ねる不安要素も大きい。与野党は外交・安保の政策を曖昧にせず、国民に開かれた形で議論する必要がある。
ざっと見ると「廃止」をいうところが…無いね。




