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および、そのブクマ。
[B! 雑学] ホームズに出てくる謎の武術「バリツ」、その正体はただの「誤字」だったらしい「実在したのか…」「面白い逸話」
「コンプリート・シャーロック・ホームズ」より 「空き家の冒険」の一節
「…彼(モリアーティ教授)は武器を出さなかったが、僕に体当たりをして長い腕を巻きつけた。彼は自分が終わりだと知っていて、ただ僕に直接復讐することだけを望んでいた。我々は滝の崖っぷちでよろめいた。しかし僕にはバリツという日本の格闘技の心得があった。これが役に立ったことはそれまでにも何度となくあった。僕はしがみついていた彼の手をすり抜けた。すると彼は恐ろしい悲鳴を上げ、数秒間狂ったように地団太を踏みながら、両手で虚空を掻きむしった。しかしどれほど頑張ってもバランスを保てず、落ちて行った。僕は断崖を覗き込んで、彼が遥か下まで落ちて行くのを見た。その後彼は岩にぶつかり、跳ね返り、しぶきを上げて水の中に落ちた」
まったくはてなブックマーク諸君も、こういう素敵なテーマに多数のブクマをつけてホットエントリに挙げてくれるんだから、うれしくなっちゃうね。
そして憚りながら、このブログはたぶんそのはてな界で、ベスト100に入るぐらいにはバーティツのことを書いたブログだと思う(ほかにそんなのあるか知らんけど。)
上記画像は2巻収録だったはずブクマで紹介したいところだけど、書ききれないのでここにポータルのリンク集を作り、飛んでいただこう。
ちなみに時系列というか、ナゾが解けていく経緯が重要なんだが、1980年代は、ごく少数の主張はともかく、だいたいの傾向でいえば間違いなく、このバリツの正体は「なぞ」とされていた。当時のどの日本語での研究書にも、そう書いてある筈。
そして1990年代、というか具体的には30年前の1993年、第一回UFCにてセンセーションを巻き起こしたグレイシー柔術=ブラジリアン柔術が、他流試合をする時のルールが「バーリ=トゥード(なんでもあり)」と呼ばれていた、と紹介され、夢枕獏や大槻ケンヂのような有名人から俺のような無名人まで「ムムッ!!これこそがバリツの語源なり!!」と思った(笑)。彼らは活字にもしたんだから、まだこの時点でも正体は明らかになってなかったと思う。ただ、ぽつぽつと指摘が増えていた…この場合、研究自体の進展もさることながら、紙の出版にこぎつけなくても世に訴えることができる「インターネット」が普及した、という別の要素も決定的に重要だけれども。
発見者が、誰かはけっきょくわからんけど、自分が知ったのは、その後新書でホームズ研究書も出した植村昌夫氏の運営する「翻訳blog」だった。
しかし残念なことに、そのブログは現在閉鎖され、まったく痕跡が無いのよ。
本当だったら、このリンク集を作る際に、何本も記事にリンクを貼れたのだが…
ただ、その本にはブログで展開されてた「バリツの正体」論が、詳しく活字として残っている。お勧めの新書
ある方の感想。
…著者がブログで発表していたホームズ関係の文章から主要なトピックを抜粋してまとめたものです。
著名人のホームズ・エッセイ&論考。「バリツ」とは何か? 「プロの美女」「アーミー・コーチ」の訳語の問題。大まかに言ってこの三部から構成されています。
エッセイのなかにはすでに翻訳のある著名なものもありますが、新訳でまとめて読めるのはありがたい。
バリツとは何か? 「武術」の訛り、「バーティツ」の書き誤り――これだけでは単なる註釈の域を出ません。著者は当時のイギリスにおける柔術の受容にまで踏み込み、「ホームズ」がいつどこでバリツを学んだのか、を考察します。柔術と柔道はどう違うのか――についても、辞書的な定義が必ずしも正しいとは限らないことを教えてくれます。
doshin.hatenablog.jp
ただそういうわけで、21世紀に入って、この「バリツとはバーティツである」が、日本で広まり、定説になったと思しい。
この研究は、最後の結論だけじゃなく、それが「分かっていく過程」こそ興趣に満ちているのでした。
そんな痕跡。ご用とお急ぎの方は(2)と(4)と(5)だけ読んでいただいてもいい。
(4)
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(5)
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(6)
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なお、当時の柔術の世界的ーーとくにアメリカでの流行について。(※ホームズの時代とはやや時差あり)
そしてバートンに協力後、英国に残って本当の意味で大暴れしたスモール・タニこと谷幸雄という快男児も、この機会に知って!
本当にとんでもない強さを見せつけ、新興国・日本の印象を英国に植え付けた一人です
ja.wikipedia.org
提案~今後は「バリツ(バーティツ)」が他の創作に応用として登場した例、を集めようぜ!
バリツは「ホームズに登場したからロマンや英国風の香りがある」「バーティツが本当の元ネタだったとしても、誤記のおかげで架空の武術として空想を広げられる」という使い勝手の良さで、いくつかの創作に登場している。
これも複数にまたがっているので、今のうちからコツコツと一覧化していくべきかもしれない。
「黒博物館」
「ケンガンアシュラ」
「FGO」とかにあるとかないとか(未確認多し)