イブニングが2023年2月28日発売号をもって休刊と発表したので、青年マンガ誌発行部数のここ15年間の推移をまとめました(日本雑誌協会調べ)
— すずき (@michsuzu) December 27, 2022
イブニングだけでなく、どの雑誌も3分の1以下の部数に減少。一方で近年はマンガアプリへの移行も進んでいるようです pic.twitter.com/EYmnCV8cvN
以下、箇条書きに
・サブスク「コミックDAYS」で楽しく読んでいました。あらためて確認すると、読む作品の本数、比率は今でもかなり多かった。
・巷間言われているはなしでは、そもそも、漫画雑誌の発行というのは構造的に赤字なのだそうだ。
・じゃあ、なんで出しているか…といえば、そこから連載が生まれ単行本になるから。その単行本で、赤字をうめるどころか大幅な黒字、会社経営を左右するようなヒットを飛ばせる
・連載雑誌の部数規模と単行本、アニメ化などの利益の差でいえば「進撃の巨人」とかを見よ、である。
・…で、あるなら、そのヒット作を生むホームが「漫画アプリ」で代用できるとなったら、出版社にとってはこれほどうれしいことはない。
・製本、印刷、配本…紙代、インク代、そんなもろもろも合わせてゼロになる。締切直前に「輪転機とめろおお」で大揉めすることもない。「間に合わない? じゃあ今週はお休みするか、1枚イラストだけ描いて」というジャンプラ方式もできる。
・ここは重要なので、過去記事から再録する。
そもそも単行本は別にして、漫画も含めた「雑誌」とは「不備のある抱き合わせ商法」なのである。大人気作品と、そこそこの人気作品と、不人気作品と(笑)、新人の研修をセットにして、数百円で月1回、週1回販売する。へんなシステムなんですよ。人気漫画が、不人気漫画の500倍(雑誌上で)読まれようとも、おそらくはページ当たりの原稿料がちょっと高い低いの違いぐらいしかない。
これは2013年の指摘。
マンガ雑誌の意味ってのは売れてる作家と売れてない作家、新人作家をパッケージングして「抱き合わせ」することに意味があるわけで、これが崩壊すると売れてない作家がどう生計たてるかという問題が浮上してくる。
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) April 2, 2013
・雑誌という形式がなくなった時の「新しい作品との出会い」について
雑誌が売れなくなると「新しい作品との出会い」が少なくなるので、特に新人が不利になる。これを解消するためには、例えば「電子書籍の単行本を20冊買うと、無関係な新人の単行本が1冊付いてくる」ような形が考えられる。できればAIで「別ジャンルだけど好きそうな作品」を推薦できると良い。
— 赤松 健 ⋈(参議院議員・全国比例) (@KenAkamatsu) July 12, 2017
・雑誌は当然ながら、それぞれのブランド力がある。ジャンプ漫画と聞けばそれだけで後光がさし、「おっ」という感じになる。イブニングにだってもちろんそのジャンプにひけをとらぬ独自ブランドがある。上にかいたように、その雑誌で「抱き合わせ」されるからこそ無名の新人作品に目を通してくれる人もいるのだ(自分だってそうだ)
・ただ、イブニングが今4万5000〜2万5000部だとかいう報道を見る限りでいうと、逆に「もっと売れる可能性がある作品が、イブニングという掲載誌の枠を超えられない」という事例も発生するのだろう。
・それは以前「吼えろペン」だったかな、島本和彦が描いてた。「この作品は大部数のXXXで連載されてれば大ヒットだったろう!だが〇〇の雑誌だからイマイチ売れん!」みたいな(笑)
・んだから、いま講談社は必死こいて・・・・・・おそらく社内的な軋轢も相当にありつつ……全作品を横断的にリリースする「コミックDAYS」を立ち上げ、このコミックDAYS自体をイブニングやモーニング、マガジンに匹敵するような「ブランド」にしたがっているのだろう。
・何しろ漫画サイトは、上に述べたような製本印刷のスキップや本数制限なし、締め切り休載の柔軟性などのアドバンテージがある。そのプラスマイナスの差し引きで…
・コミックDAYSがそれなりに拡大する今は、計算の結果「よし!この雑誌は(一定のブランドがあったとしても)終えて、掲載作品は漫画アプリで連載継続の方が黒字!!」という計算結果が出てくることは、今後も増える一方だろう。
・また、そもそも話だが、コミックDAYSは確かにお得である。自分が始めt絵講談社で定期購読した「雑誌」だと言っていい。加入したのは2018年だったか。その後、非講談社(角川テイスト強い)のブックウォーカーにも入った。皆も入ろう。
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・で、あれだけの雑誌が定期的にサブスク購読できるコミックDAYS,これのおかげで講談社の各雑誌は部数が減って当たり前のはずなのだ!!というかコミックDAYSが、雑誌の部数に影響を与えなかったら失敗の筈だよ!!!その影響について数字で語ってるところないかな。
・こんなグラフのもろもろ。
イブニング休刊で、漫画家さんが「やっぱり紙媒体で」みたいな発言してたりもするが、紙の漫画雑誌は200誌を切ってるのが現状。また、どの出版社もWEB配信や電子版・アプリ版販売をしてるので「紙だけ」でって漫画は減ってるんだよね。特殊例として、大友克洋全集とかもあるけど。 pic.twitter.com/oL00D98oaJ
— soorce (@soorce) December 27, 2022
各誌の平均発行部数を改めて見ると、3000部でも休刊しない月刊スピリッツの粘りは凄いですねhttps://t.co/xSwvkT7fnZ
— nekojita (@nekojita) December 26, 2022
講談社漫画誌「イブニング」、2月28日発売号で休刊へ…平均発行部数は約4万2000部 : 読売新聞オンライン https://t.co/j29TYn7oPu pic.twitter.com/t9MPTVLFNH
講談社『イブニング』が4.2万部で休刊とのことで2022上半期のACB部数から4.2万部以下の雑誌をマーク。なんと13誌にも及ぶ。マンガ誌とは生態系が違うとはいえ来年休刊候補の最右翼たちであることは間違いないですね。特に減少が激しい女性誌は厳しそうです。 pic.twitter.com/sdVKTPCEaD
— 特攻の紀谷理馬 (@motokisha) December 27, 2022
イブニングが発行部数4万部で休刊との事なので、ウルジャンも調べてみたら、既に2万部を切っていた。グラフだと2018年〜2019年にかけて急激に落ち込んでるのは何故だろう? あと、ジョジョリオン完結の2021年9月号以降で、目立った落ち込みが無かったのが逆に意外だった。https://t.co/3yR2x9NBMx pic.twitter.com/4Z3BHyI4uo
— シャト (@SHATO) December 27, 2022
・漫画業界が紙雑誌⇒漫画アプリへの転身を華麗に成し遂げられるかどうかはわからん…だが、もし成功したとするね……町の本屋さんは??????
・最後に「イブニング」といえば遠藤浩輝「オールラウンダー廻」に20巻以上の連載期間を与えてくれたことにあらためて感謝したい。あのジャンルを扱えたことこそ「イブニングらしさ」じゃないかな。
過去記事の、ほんの一部。
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過去記事。
「オールラウンダー廻」難波死闘編の行く末は?その他。 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120222/p3
格闘技漫画最前線。「廻」8巻&大阪大会、「鉄風」魔女の狂気、「セスタス」トーナメント… http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120314/p1
「オールラウンダー廻」最強レスラー狩りへ!5.20のジョシュvsコーミアにも似て(?) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120511/p1
「オールラウンダー廻」一流レスラー相手にどう戦う、どう倒す? http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120611/p3
オールラウンダー廻、三ツ矢との死闘続く。「鉄風」は長期休載か? http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120713/p1
マップ形式で格闘技漫画を位置付けてみる http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110907/p3
「オールラウンダー廻は『格闘技漫画』でなく『スポーツ漫画』の流れにある」(作者:遠藤浩輝) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120818/p1
「オールラウンダー廻」9巻発売に際し色々&「格闘技漫画とスポーツ漫画」考その2 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120824/p1
「オールラウンダー廻」宣伝動画?を勝手に試作してみた。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121230/p1
今夜「オールラウンダー廻」の遠藤浩輝氏ゲストで「修斗UST」。放送前に事前質問 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120919/p1
「オールラウンダー廻」、ついにポイントで逆転!されど・・・? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121128/p2
「オールラウンダー廻」二次創作?--- 「言えなかった、言葉を…今。」 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130108/p2
今号の「オールラウンダー廻」99話がすばらしいと、各方面から賞賛の声多数。次回は100回記念、表紙。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130109/p3
「オールラウンダー廻」を読んだ男性ファンと女性ファンの会話(部分的に実話) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130919/p2
遠藤浩輝×諌山創対談…見た試合をどう「物語」に還元するか(※緊急ニュースのため執筆中断しました)。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130928/p1
「オールラウンダー廻」13巻2月に発売&最新号にみた「引き算せりふ」の笑い - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140130/p1
オールラウンダー廻14巻発売記念(?)『最近の漫画に「成長をじっくり描く時間」はあるか?』 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140626/p2
佐々木憂流迦、遂にUFC参戦。駿河天狗、世界に羽ばたく - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140716/p1
「刃牙道」と「オールラウンダー廻」単行本、11月発売/おるめぐの女子決勝カード決まる - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141104/p2
太田モアレ「鉄風」は現在のトーナメントをもって連載が終了してしまうのだろうか?そしてオールラウンダー廻 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141211/p2
「オールラウンダー廻」16巻が3/23に発売 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150306/p1
「修羅の門 第弐門」完結。格闘技漫画の枠が、また一つ減?(※メグルの話も出てくる) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150504/p2