──後楽園ホールにブロディがベートーヴェンの交響曲第五番『運命』と共に登場したシーンは衝撃的でした(1985年3月21日・後楽園ホール)。実際に猪木さんとブロディが初めて遭遇したのはいつだったんですか?
猪木 そのときですね。
──事前の顔合わせなどはなかった?
猪木 俺はそういうことはしません。それより、あの『運命』は俺の閃きでね。
──そうなんですか!? あの演出、まったく度肝を抜かれました。
猪木 ブロディが新日本に上がるという話が決まってからね、寝てる時、突然パッと「登場シーンは『運命』だ!」って閃いて。でも、みんなにその話をしたら「そんなのはお笑いですよ」って笑われて。何がお笑いなのか俺にはわからなかった。
──しかし、実際にやってみたら古舘伊知郎さんの実況と相まって劇的な効果をあげていましたね。
猪木 いや、結果的にはそうなったんだけど、同じ『運命』でも「ダダダダーン」と「ダッダッダッダ〜ンッ!」じゃ全然印象が違う! これは感性の問題だからスタッフに理解させるのが難しくて……。リングの上から見ていて「ダッダッダッダ〜ンッ!」じゃないのが不満だったことばかり憶えてます(笑)。
──もっと重厚なオーケストラの『運命』をフルボリュームでかけて欲しかったわけですね。
猪木 演出もそうだけど、音楽もトーンひとつで選手の気持ちが変わってしまうんですよ。客の入りもそう。観客が多いと自然に力が湧いてきて、選手が張り切り過ぎていつもなら5分で決まる試合がなかなか終わらなくなったりする。いつも「いい加減にしろ!」って怒ってたんだけど、大会場での試合時間がどうしても長くなってしまうのはそういう訳なんです。まあ、とにかく、おそらく俺の中のプロモーターとしての自分が、四六時中、無意識のうちに選手の力を引き出す効果や演出についても考えているんですね。
kkimura.exblog.jp
猪木「ブロディの入場のテーマに『運命』をくっつけようと夜中眠れない時に閃いた。朝一で山本小鉄に電話したら、うんいいんじゃないですかと軽い返事だった。他の連中に話したら、それは無いんじゃないですか、お笑いですよと否定された」 pic.twitter.com/uadc3DPVgo
— 昭和pasin (@Zq7H0cfDKCjUn8E) November 15, 2022
猪木「俺が頭に描いてた運命はジャジャジャジャーンじゃなくてジャッ!ジャッジャ!ジャーン‼️っていうねw」
— 昭和pasin (@Zq7H0cfDKCjUn8E) 2022年11月15日
ブルーザー・ブロディは野獣の狂乱ファイトながら「元新聞記者」で「インテリ」である、というキャラクター付けが”日本では”広まっていた。だからこそ、高尚なクラシックを冒頭に持ってくるという演出がなされたのだろうが、別に外国ではブロディをインテリ、というキャラ付けはされてないんだそうだ。
そもそも新聞記者と言っても、大学アメフットの有名選手がコラムを書いた、というたぐいだし、大学は留年を重ねて本来は3年先輩なのにハンセンと同期になったというし(笑)
その「ブロディは実は知性派」って一体、誰の主導・演出だったのだろうか。斎藤文彦が実際にインタビューをすると、言葉のチョイス、言い回しから非常に知的だった、というが、そういうレスラーがいなかったわけでもなかろう。それを、読者に伝えようと思った「X」は誰なのか? 最終的に梶原一騎原作にも登場したし、ブロディが新日に来た時に古館伊知郎は最初から「インテリジェント・モンスター」という言葉を使った。
そして週刊プロレスはその後のインタビューで間違いなく、まず「質問のテーマ選定」と、「ブロディの回答を日本語訳にするときの翻訳」「写真の選択」などで知性派ブロディ、を演出していった……この集団演出の歴史も面白いが!!
そもそも、後楽園での新日移籍表明の時、パリッとしたスーツに花束とチェーン、というのも「知的で紳士的な面と、狂乱の野獣の二面性を持つ」というキャラをトータルでコーディネートした結果ではあろう。
だが!!
それを受けて!!一番重要である、衝撃の移籍団体登場!!!のシーンに「運命」を持っていき、スタッフ全員の反対を押し切って実現させるアントニオ猪木は、やはりただものではない。
ただ、その演出家としての自信は、ブロディ全体の勝ったり負けたりという試合ドラマにおいても「俺の言うとおりにしてりゃ、もっともっとすごいドラマを生んだのに……」という思いがあり、プロモーターの提示する勝ち負けや内容に「イエス」を言わないことで知られるブロディとの心理的軋轢はやはり大きかったようだ。
結局6戦して、フォール決着が一回もない、ことは有名だ。
「こんな〝でくの棒〟はいない!」っていうのが正直な感想でしたね。相手をどうこうするというより、自分の決められたパターンしか演じないというブロディの〝型〟が出来上がっていて、誰が何と言おうとそれを崩そうとしない。絶対に相手に合わせようとしないんだから、いい試合をしようにもどうにもならない
監督と役者というか、マイク・タイソンとドン・キングの関係みたいな、第三者のプロデュースを受け入れることができていたら、ブロディは大輪の花を咲かせたと思うんですよ。あれだけのキャラクターとパワーの持ち主だったしね
ところで、猪木的には「この曲調じゃない!」と不満だった、ブロディ入場版の「運命」って誰のなのか?
再度…
同じ『運命』でも「ダダダダーン」と「ダッダッダッダ〜ンッ!」じゃ全然印象が違う! これは感性の問題だからスタッフに理解させるのが難しくて……。リングの上から見ていて「ダッダッダッダ〜ンッ!」じゃないのが不満だったことばかり憶えてます(笑)。
──もっと重厚なオーケストラの『運命』をフルボリュームでかけて欲しかったわけですね。
まあわかる。
自分の高校だか中学の音楽解説書にはまさに「同じ運命でもこんなに違う!」というコーナーがあって、著名指揮者の第一楽章演奏時間が載ってたのだが、カラヤンが一番早く(7,8分台だったと思う)、カール・ベームが一番遅かった、と記憶している。
それぐらい「運命」の第一楽章、冒頭フレーズは色々違う、というのはわかる。
だが逆に言うとそれ以上は聞いてもわからん(笑)
twitter上では、入場曲研究家で専門書も出している「コブラ」さんという方がいるのだが
twitter.com二巻に分かれたマガジンの猪木追悼号。
— コブラ@絶賛発売中!「昭和プロレステーマ曲大事典」 (@kokontezangetsu) November 12, 2022
今まで書いてたやつを二つに分けようと思ったがやめた!
猪木の名のもとにチマチマしたマネは出来ねえ。
今までのやつは丸々後の方に回して、次に出す分はこれから書き下ろす!
すごい記事になりそうですね。
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 2022年11月13日
そういえば、今回の一連の猪木追悼の中でも「ブロディ入場曲に『運命』をアレンジしたのは猪木本人のアイデアだったが、使用バージョンのテンポに不満だった」という話が出てきますが、あの「運命」は誰の指揮か、等は既に有名なのでしょうか?https://t.co/68og1gFz7G
ご期待下さいませw
— コブラ@絶賛発売中!「昭和プロレステーマ曲大事典」 (@kokontezangetsu) 2022年11月13日
当時のゴングには1958年、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮、フィラデルフィア・フィルハーモニーの演奏とあったんですが、該当するレコードや演奏記録がまだ見つからないんですよね…
アントン「俺の思ってたやつはダダダダーン!ともっと強い感じだったというか」
— イエデビ【黄色い悪魔】 (@yelldevi) 2022年11月13日
カラヤン指揮ではなかったのですか?
カラヤンについては分かりませんが、ゴングが誤情報だったらという事も視野に入れて(前科には事欠かないのでw)、いずれ改めて調査したいと思っております。
— コブラ@絶賛発売中!「昭和プロレステーマ曲大事典」 (@kokontezangetsu) 2022年11月13日
どうなんでしょう、カラヤンは運命の主要指揮者の中でも、もっともテンポが速いタイプだとも聞きますが…https://t.co/KKV03Yztxk
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 2022年11月13日
むしろ、運命のバージョンや指揮者の違いを聞き分けられる、めちゃくちゃクラシック通のひとに、ブルーザー・ブロディ登場シーンの実際の音を聞いてもらうほうがいいのかもしれませんね。https://t.co/Fh3tTSXZcyhttps://t.co/2poEyFBapW
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 2022年11月13日
青山通先生が、ウルトラセブン最終回に使われたシューマンのピアノ協奏曲イ短調を聴き比べて探し当てたようなもんですね(笑)一冊の本になりますよ。
— イエデビ【黄色い悪魔】 (@yelldevi) 2022年11月13日
最後の喩え、わかりますか?(笑)
「アンヌ。僕はね人間じゃないんだよ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ。西の空に明けの明星が輝く頃一つの光が宇宙へ飛んで行く。それが僕なんだよ。」
— parody575@音と言葉と冗談と (@parody575) 2019年9月15日
「宇宙人でもダンはダンに変わりないじゃないの。」https://t.co/17MSBITASQ
"ウルトラセブン最終回シューマンのピアノ協奏曲イ短調op.54" https://t.co/fFPSSBX1Hq pic.twitter.com/1L7jcG23W2
今宵の怪獣暦#改造パンドン
— ニューポンチ♨️repum (@555takumome) 2022年9月8日
セブンとの戦いのシーンで流れていた曲は、シューマンの「ピアノ協奏曲 イ短調 第1楽章」https://t.co/0Zk7gysCtH pic.twitter.com/tpbsE6mbnP
シューマン ピアノ協奏曲イ短調 Op 54 カラヤン指揮 ピアノ,リパッティhttps://t.co/oFqfPWWGUo @tamagono_nakami
— yuushun haha💜 (@Wf4Hahaha_) 2022年5月25日
ウルトラマンセブンの重要なシーンで使われたとか😲👍
で、やはりこのブログ記事と同様に「作品名と作曲者だけじゃなく、誰の指揮・演奏かも知りたい!」と言う人がおり、「自分で聞いて」どのバージョンか、今ではわかっている、という。
では、新日本でブロディが使った「運命」の指揮は?(ゴングで一応、仮の情報…「当時のゴングには1958年、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮、フィラデルフィア・フィルハーモニーの演奏とあった」があるわけで、これを頭から疑う必要もないかもしれないけど)
ここで、プロレスが好きであり、クラシックにもメチャ詳しい人の介入と、ご指摘を期待したいところです。
肝心の、新日でブロディが入場に使ってた(特に移籍表明の後楽園で)「運命」が流れる映像を見せたいところだが・・・・・いま、動画サイトがコンプライアンスを強化してごにょごにょ。
この映像も、どっかに…ごにょごにょ。