少年ジャンプで新連載が始まった。第一話、無料公開中。
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第1話 週刊時空をジャンプ!
※無料配信は予告なく終了する場合がございます。ストーリー&キャラクター
曇天の空に、冷たい雨が刺す。
この夢は諦めよう。そう決意した瞬間だった。
響き渡る雷鳴。
そこには、なんと「未来のジャンプ」が!週刊少年ジャンプでの連載を夢見る熱き新人漫画家・佐々木哲平。
ある日、彼のもとに「10年後のジャンプ」が届く。
時空をこえた出会いは偶然か、必然か。
数奇な運命は大きなうねりとなって、廻り始める...時限、逆流!運命、交錯!
来るはずのなかった明日へ――衝撃のタイムスペクタクル巨編、開幕‼
少年ジャンプに「少年ジャンプ編集部」が出てくるメタな展開、
日常にあるものがタイムマシン的な役割を果たす意外性
そこで得られた未来の情報(出版物)で、さえない主人公がチート的な成功(をしそう)
しかしそれを邪魔するライバル
そもそも、他人の作ったものを自分の作品とするのは「ズル」じゃないかという倫理的葛藤
しかし、そうなるとその創作者って誰?というパラドクス・・・・・・・
…ちょっと、葛藤をそのまま書きます。
「なんどめだ。」と。
しかし、別のもう一人は、これに対してこういう答えを用意している。
「いま、ジャンプの想定する本来の読者、この雑誌をリアルタイムで楽しんでいる『少年』たちには、最初なんだよ」
と。
アイデアには著作権なし。
限られた、珠玉のアイデアは、リアルタイム、現在進行形の作品として、何度でも繰り返されるべきである。
貴方が、そのアイデアに触れた「最初の作品」も、おそらくは初出じゃないんですよ・・・・・
と、いうことで、自分の内なる感情的な怒りは、自分の内なる理性的な説得で、一応鎮火いたしました。
この作品はこの作品で2020年の今、上に描かれたようなセンスオブワンダーを、いま現在の少年少女たちに届けてくれればいいんじゃないか…と思うのであります。
だから、これ以降の話は「批判の材料」ではなく、一種の暇話、へぇというような雑談知識だと思ってください。
未来の新聞を読んで、将軍が敵前逃亡?『のらくろ』劇中落語のSF性。
自分が「未来の情報を得られるようになった超能力者の苦悩(あるいはチート性)」の話で、個人的に真っ先に思い出すのは、とある作品なんだけど、それは最後に書きます。
「未来の作品、創作物をもとに、自作として発表する」ことに関して、
上に上げたような、存在自体のパラドックス(存在の環)、盗作ではないかという倫理的葛藤、世界自体の変化…などなどに関しては
僕はビートルズ 文庫版 コミックセット (講談社文庫) [マーケットプレイスセット]
- 作者:かわぐち かいじ
- 発売日: 2014/09/12
- メディア: 文庫
もちろん、短編としてのドラえもん「ライオン仮面」エピソードも推奨に値する。
しかし…それをさらにさかのぼって…「のらくろ武勇伝」という田河水泡の作品があります。
復刻版のらくろ漫画全集 1~最新巻 [マーケットプレイス コミックセット]
- 作者:田河 水泡
- メディア: コミック
戦前としては空前の長期連載大河マンガ「のらくろ」は連載が進むと同時に、のらくろの階級も上がっていきます。途中で士官学校にも入ったしね。
島耕作が部長から取締役になったとき、編集長が漫画の中で「出世のたびにタイトルが変わるのは講談社の歴史上、『のらくろ』以来ですよ」と言ったのは有名な話だ。
のらくろ武勇伝はシリーズの後半戦で、当時の日本の中国侵略をデフォルメのかたちで正当化したような描写なども数多く、その種の問題を指摘するときりがない。その一方で、軍部は逆にこの作品がお気に召さず、いろいろな圧迫もあったりしたそうだが、そういう問題とは別にストーリーや描写などを見ると、画力・演出などには円熟味を増し、何しろ敵役のぶたたちがとても愛らしい姿を見せたりする。
そんな中で、のらくろ所属する猛犬連隊は豚の国、というか軍閥の豚勝将軍とのはげしい戦闘を続け、のらくろは負傷入院するまでになる。
そのような激戦の中、彼らを激励せんと、田河水泡の他作品のキャラクターが一斉にクロスオーバー。猛犬連隊の慰問隊を結成する。
その中心人物が、たこ界で啓蒙的開明政策を進めたリーダー、蛸の八ちゃんだ。そこに凸凹黒兵衛やマメザウ(豆象)などが加わり、慰問劇場として劇中劇を繰り広げる。蛸八一座の芝居やウサギの黒兵衛、白ちゃんの漫才、そしてマメザウ演じる落語…
この、落語が、実にどうもSFとしか言いようがないのであります。
内容的には、敵国の主要人物を貶めて風刺した戦意高揚のプロパガンダ性もありつつ、しかしSF。
いかがでしたか?(まとめ風)。
しれっと、何の説明もなく「今日の新聞がないから明日の新聞でいいか。」と持ってくる未来的なガジェット。
しかも、そこに書かれている、己の運命。
そして、「未来がこうなるんじゃあ、準備は早い方がいいか」と、その記述に従って行動することで成立する予言の自己成就……
なんだよこのSF。なんだよこのセンス・オブ・ワンダー。
・・・・・・・・実はこの話、画像で紹介したのはストーリーのまだ半分。このあと後半、怒涛の展開となり、そしてみごとなまでの秀逸なオチがつくのだが…それを紹介したいのはヤマヤマなんだが!!!諸般の事情でそこまではできぬ。
この作品、戦前の作品ではあるが、著者の田河氏は大変なご長命、ご健勝であられた方でね。また、電子書籍その他での再版があることを望みます。
なぜか「蛸の八ちゃん」のとあるバージョン(いくつかあるんです)だけは、国会図書館ライブラリーでネット上で読めるのだけど。それは余談。
田河水泡は、のらくろ=軍国日本のイメージからたいへんに日本風、古風なかたかと思われがちだが、たいへんなモダニストでダダイズムとかそういうのと関係が深かった人。
というか、戦前に漫画として「怪獣もの」「ロボットもの」を描いている、それだけで話は分かるな。
m-dojo.hatenadiary.com
講談社 富士1929年4月号。田河水泡「人造人間」第1話。日本最初のロボットが主人公の漫画らしい。人造人間の発表会で発明者がひどい目にあわされる内容。1928年9月にロンドンの展示会で披露されたエリックロボットをモデルにしたようだ。 pic.twitter.com/Ef9BmLhit6
— ナム (@NAM_1974) January 11, 2015
そこにタイムパラドックスもののひとつやふたつ追加されても本来的には、ぜんぜん自然な話なのだが、まあ驚く人は驚くでしょう、ということで。
個人的にこれのベストは藤子・F・不二雄「ポストの中の明日」です
- 作者:藤子・F・不二雄
- 発売日: 2010/09/24
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藤子・F・不二雄大全集 少年SF短編 コミック 1-3巻セット (藤子・F・不二雄大全集 第2期)
- 作者:藤子・F・ 不二雄
- 発売日: 2011/07/25
- メディア: コミック
「未来の知識・情報を生かしてチート」とは別の一潮流、「未来の知識情報をもってしても、歴史は変えられず無力感にさいなまれる」というほうだけど、この「朝の新聞を、姿勢を低くして一瞬脳貧血の状態になってから読むと、日付が明日の新聞が読める」という、マネしたくなるようなリアリティはどうよ。藤子・F・不二雄のせいで壊された机の引き出しが数多いが、脳貧血で朝ぶっ倒れた少年も多かったのではないか。
まあ、そんなわけでネ。
「未来から10年後の少年ジャンプが届いた!!」漫画も、田河水泡→藤子・F・不二雄→……と続く系譜、と考えれば(´∀`人)ステキ じゃありませんか。そもそも、まだ連載2回目だか3回目。こっからとんでもなく斬新な展開を見せて、タイムパラドックスSF漫画に光り輝く金字塔を打ち立てる、かもしれないし。がんばってください。
(了)