古い「歴史」の話なんだけど、結果的にいまにもつながるような話…こんな秘話が紹介されていました。2009年、田母神俊雄空幕長の論文と解任に関する騒動について、当時「辞めさせた側」の証言。
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田母神論文といえばプッシュしたいのが、全編グダグダの田母神論文騒動を回想している、当時の防衛事務次官だった増田好平氏のオーラルヒストリーです。https://t.co/yeACaJbEyc
— 北大西洋条約さくら (@MValdegamas) May 11, 2020※仕様の関係で、以下コピぺします
北大西洋条約さくら
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「どうしたんですか」「懸賞論文が一等賞を取って三百万円もらいました」と。後になって僕も役人だなと思いましたが、その時に発した最初の質問が、「届けを出しましたか」と。要するに、部外で講演する時は一応届けを出さないといけない。…「届けを出しましたか」「いや、出していないと思います」という答えでした。その時は、中身を見てないんですよ。その後チラチラッと見たら、ちょっとこれはあれだなという危機感がありましたね。それからもうひとつ、その日のうちに大臣にもご連絡をしたと。…
浜田大臣はまだその時読んでなくて、ただ、新聞記者からいろいろ入って来る。何故かというと、広報課に渡しちゃったらしいんですよね。一等を取った懸賞論文が積んであったというんです。多分、空幕の広報室が気をきかしたんですかね。…だから、みんな読んでいる。…
…起こったことだけ言うと、その日のうちだったと思いますが大臣に連絡をして「ちょっと困っている」と。大臣は最初、中身を見てないから「落ち着け」みたいな話をして、あ、そうですかと言って、それからこれは官邸に報告しなきゃいかんので、車に乗って官邸に向かった。…
あ、やっぱり官邸に行くということを大臣にも言わなきゃいかんなと思って、浜田大臣に電話をして「いまから官邸に報告に行きます」と言ったら、「いや、お前が行くと大事になるから、行くな」と言うんですよ。「あ、そうですか」と言って、四谷の交差点辺りからUターンして役所に戻って。…
ただ、大臣におことわりしたのは、「行きませんけど、ただ論文は送らなければいけないので届けますから」と。そんなことで戻って来て、官邸は漆間(巌)副長官でしたが、だんだん騒ぎになって。…
あと何があったかな。その日田母神さんは、昔から世話になっている弁護士さんを官舎に呼んで鍋パーティをやる日だったらしいんです。結果としては、ずっと電話をしていたということだったらしいですけどね。正直、僕がいちばんまずいなと思うのは、河野談話を批判して「だめだ」と書いてあるところ。…
これは麻生総理ですら継承すると言っておられるので、まずいなという感じで、これはなかなか持たないなと。電話で大臣と話をしていたんですが、夕方七時ちょっと過ぎくらいかな。ちょっとこれは辞めてもらうしかないんじゃないですかということで、…
僕から鍋パーティ途中の田母神空幕長に電話粗して、「これはちょっとまずいので、辞めてください」と。そうしたら、怒っているわけですよね。「何で私が辞めなきゃいけないんですか」と。おかしいな、辞めたいと言っていたのにな、この件で辞めさせられるのはかなわんということかなと。…
その後しばらくして、向こうから電話がかかって来て、「わかりました。大臣にも確認したら辞めろと言っているので辞めます」「そうですか。じゃ、これから段取りしますからちょっと待っててください」と。…
僕が考えた段取りというのは、まず大臣なり私が「こういうことがあったので空幕長から責任をとって辞めたいという辞意を受理しました。この後、田母神さんから会見があると思いますのでよろしく」というのをやる段取りをしようと思ったんです。…
だいたい何時から会見というラインができたので田母神さんに電話をしたら、もう出ない。電話に出なくて、やっとつながったら「辞めません」と言い出されて、「だって、さっき辞めると言ったじゃないですか」と言ったら、「気が変わりました」と言われたんです。…
…僕が最初に電話して辞めてくださいと言ったのは七時台だと思います。それから「辞めます」「じゃ、待ってください」と言って、それから一時間か一時間半後、九時半頃にやっと電話がつながった。…
北大西洋条約さくら…「これから何時に登庁してください」と言おうと思ったんだけれどつながらなくて、やっとつながったと思ったら「辞めません。気が変わりました」と。あ、誰かと電話で相談しちゃったのかなと思いました。その日がそれで、多分夜の十時とか十一時過ぎだったと思いますが大臣も登庁されて、…
相談して、「辞めないと言ったら困りますね」と。反発されると懲戒免職には手続きがかかるし、何するかわからないから、後で裁判になっても問題にならないように。本人が同意すれば何でもないんだけど、本人が嫌だと言えば聴聞とかしなければいけないかもしれないし、困ったなと。…
とにかくその日のうちに空幕長ではなくなったんですよ。なくなったんですけれども、まだ空将ではあるんですね。それで、定年を思いついたんですよ。幕僚長は62歳だけど、単なる空将は60歳だと。この人は60歳を超えている。じゃ、定年だと。ですから、ワーキングデイに戻る前に定年退職をしたわけです。
いちばん恐れたのは、空将でおられるということは制服を着れるんですよね。…それで万一会見を開かれたら困る訳です。クラブは、毎日でも会見を受けますということでしょう。だって、言い分があるのに防衛省が懲戒手続きをするのはけしからんと。弁護士がついたりしたら統率の問題になっちゃうし、…
幕僚長までやった空将が叛旗を翻して、制服を着て防衛省で毎日「防衛大臣はけしからん」ということで会見を言い続けると。だから私も、制服だけは早く脱ぐようにと。はずした日、既に何時から記者会見をするという連絡が入ったんですね。それに制服で出られると困るし、…
役所の会見場を使われるのも困るので、その前に発令して、自衛官の身分を外して民間人に。「だから制服を着れませんよ」と、当時の岩崎(茂)副長からお伝えしてもらって、場所も共同通信だか時事通信の会議室なんかを使って、背広で。「よく思いついたな」と思います。…
その後いろいろありましたが、要するに田母神さんはおもしろい人なんですよね。ともかくおもしろいんですよ。おもしろいんだけれども、ああいう思想の部分をお持ちだとは全然思わなかった。ちょっと変わった自衛官といった意味で、本当に幕僚長の器かなと思う面もあったのですけれども、…
でもおもしろい人だと思っていた。…でも結果として見ると、統幕学校長時代からああいう考え方等々をずっとお持ちでいた。…僕が政治的にちょっと答えづらいところがありますが、その他にも、「大東亜戦争はコミンテルンの仕業でやられた」ということを一生懸命書いてるんですよ。…
そういう要素はもちろんあるのでしょうが、でも日本人が三百万人も死んでいて騙されたって、騙されるほうも問題だし、いくら「騙された」と言ってみても何の自慢にもならないと思うんですけどね。…】
・届け出を出さずに論文を書いちゃう幕僚長
— 北大西洋条約さくら (@MValdegamas) May 11, 2020
・「300万円当たったんです!」と嬉しそうに次官に報告に来ちゃう幕僚長
・とりあえず「これチェックしてるんですか」と聞く次官
・「辞めろ」と言われてくるくる言うことが替わる幕僚長
・将官が制服で会見すると困ると併せ技で即時退職させる次官・おもしろい人だけど幕僚長の器かなと思っていたと回顧する次官
— 北大西洋条約さくら (@MValdegamas) May 11, 2020
映画の社長シリーズか?という感じの脱力系の応酬ですごいです。大事な要素を忘れてました
— 北大西洋条約さくら (@MValdegamas) May 11, 2020
・内容はよくわからないが幕僚長が懸賞に当たった!と忖度で論文を配って炎上の原因を作る広報部門
ここが本当にいいんですよね。
ふーむ、面白い。
何が面白いといって……もう、そんなに日本でも多くないのだろうけど(笑)、当方、まさに2009年の、当時のブログ記事をここで保存している。
その時に、そのへんの法律論を論じているのだ。
【田母神騒動・法律論まとめ】
・田母神の論文発表は、「法律論では」セーフ。五百旗頭氏の新聞や雑誌寄稿も「法律論的に」セーフ。
・田母神氏の場合、内容がアレだった(と、少なくとも政府が見なした)
・政府は「お前は無能(アレ)だから、幕僚長(役職)を更迭する」とした。
・一般論で言えば、政府は「幕僚長のあいつはヒゲが気に入らん」でも「黒猫が前を横切った」でも、どんな理由でも役職は更迭できる。自衛官と言う身分は公務員なので、辞めさせられない。
・ただし田母神氏はもともと幕僚長という役職に定年延長のオプションがついていたので、役職を奪われた途端に定年を過ぎていることになった。だからそのまま防衛庁を退いた。
・懲戒免職に当たるようなことではない(もっと軽い処分はあり得た)ので、退職金を払うのはやむを得ない
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だいたい、この見立て理解はきちんと沿うものだったようだけれども。
これ、結論を聞いたから、こっちもへーへー、なるほどなるほどねっ、と…といった感じですんなり腑に落ちていた。そういう状況になったらこうなるだろう、というのが、ごく自然な決め事としてそこにあり、そのルールに従って処分された、と思っていたのだ。
だが、当事者にしてみると、
「実はその理屈ね、現場でギリギリのところでぱっと思いついた頓智だったんですよ!! 今にして思えば、よく思いついたなあ……」
って、なんちゅうかこわいよ。それが無ければ、ジェネラルタモガミは現役軍人として、制服制帽に勲章ぶらさげて記者会見に臨んだだろう、というね・・・・・・・・・。
世のなか、一寸先はハプニング。
と、同時に「組織でえらい役職に就くと、その役職に伴って定年が延長される」「その役職を退くと、定年延長のオプションも無くなるからそのまま辞職となる」・・・・・・・・・うんぬんって、今、その話を聞くとすっごくタイムリーでな(笑)。