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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「涼宮ハルヒ」シリーズって「学園お騒がせ集団のリーダーが女性」な点が斬新だったのでは?(めちゃくちゃ初歩的なところから語る)

はてなブログの人気の書き手が、これまたとあるブログに刺激されて「涼宮ハルヒ」 シリーズについて長文を書き、またそれに刺激されて書かれた匿名ダイアリーが人気を読んだりしています。

再考・『涼宮ハルヒの憂鬱』のどこが新しかったのか - シロクマの屑籠 https://p-shirokuma.hatenadiary.com/entry/20181211/1544515200
 
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の流行を振り返る https://anond.hatelabo.jp/20181212171225


※その大本には、さらに http://moegirls4ever.hatenablog.com/entry/2018/11/30/220328(現在削除) https://togetter.com/li/1295732というのがあるらしい。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

  • 作者:谷川 流
  • 発売日: 2003/06/07
  • メディア: 文庫
涼宮ハルヒの消失

涼宮ハルヒの消失

  • メディア: Prime Video
自分はこの作品を一応は読んだり見たりしているけれども、非常に浅い読者、視聴者であります。何しろ、皆に言われて(格闘技観戦記ひとすじのid:lutalivreさんにすら薦められたのは、今となっては自慢だ(笑))ようやく2011年に見たのだもの。ただ今回の話題は同作品が「どの点で画期的だったのか?」が議論の中心となっています。

創作物の系譜や起源、そのパターン化を辿るのは、このブログの過去記事にも多数あるように自分は大好きだった。(この記事にもつけた、タグの「創作論」をたどってもらえると多くは見られる)
こんなまとめも作っては現在も更新してるしね

【追加可能】元祖や系譜、お約束などに関する「まとめのまとめ」&関連リンク 『初出・系譜ポータル』 - Togetter https://togetter.com/li/902024


だから元々、「涼宮ハルヒ」を見る動機もその確認という意味が大きくあったんですよね。だから偉そうにいうなら、ある意味で、先行して考えていた、と言ってもいいかもしれない。
ゆえに、ぜひこの機会に、自分としての過去の「筋読み」を披露させていただき、広くご批判ご指摘をいただきたいと思うのです。

と、いっても
実に自分の感想は凡庸、平凡でね… ほかのブログは、それを既に大前提としている可能性も大いにあるんだけど。

簡単に箇条書きします

涼宮ハルヒ」の画期的なところは

・既にあった「学園変人もの(お騒がせ集団もの)」で
 
・「学園を大騒動に巻き込む、お騒がせ人間」のリーダーが女性で
 
・それに戸惑いながらもつきあう、巻き込まれ方の語り手が男性

だったことが、何より画期的だったんじゃないか?と思うのですけど。



「学園お騒がせ集団」については、その裏になる「生徒会」のほうを一度しらべて、まとめたことがありました。

強大な権力を持ち、主人公のライバルになる『非実在生徒会』の歴史、元祖は?【創作系譜論】 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150118/p3
 
非実在生徒会」の歴史や特徴について、頂いた情報をまとめます【創作系譜論】 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150119/p2


そこの一覧の中で、「学園名物のお騒がせグループ」的に物語で語られていた(主人公の周りに人が集まり、徐々にグループ化していくものも含む)のは1、2の三四郎(1978) 3年奇面組(1980)コータローまかりとおる!(1982)究極超人あ〜る(1985)…などかと思うし、グループとも言い難いけど、「マカロニほうれん荘」なんかも、自分のイメージとしてはこの中に入る(観測範囲のバイアスがあることは認める!!)。


「学園お騒がせ集団もの」としての涼宮ハルヒは、見立てとして以前から「要はSOS団光画部で、ハルヒ鳥坂センパイなんだ」とずっと言い続けてきました。何しろちゃんと作品を読む前から(笑)読んだ後も、その見立ては変わらない…というか自信を深めました。そういう過去記事がこちら。

今月WOWOWで放送した「涼宮ハルヒ」シリーズをほんのちょっとだけ見た感想 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110527/p3
  
■評論家・浅羽通明が「涼宮ハルヒの憂鬱」を論じたよ(メールマガジン流行神」) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101009/p3
 
弊衣破帽のバンカラ→「むわーかして!」→「ただの人間に…」の系譜 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090116#p4
 
世の中の漫画やライトノベルには「学園変人もの」というジャンルがある。 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091105/p4
 
■「学園お騒がせ集団vs生徒会」のシチュエーションの源流をたどるとどこへ行く? http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101125/p4
 
■<ヤクザが○○をしたら・・・>ものの系譜 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100303/p2
 
■考察・「あ〜る」の光画部スクールカーストの上位?下位?外? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151021/p1

ただ、こういうお騒がせ集団のイケイケどんどんな暴走リーダー、主人公が女性(まあ「美少女」なんだろうけど)であることは、やはり画期的だったのではないでしょうか。
それはジェンダー的、フェミニズム的な意味においても。

といいつつも、自分は「これまで男のキャラクターだった『学園名物、お騒がせ集団のリーダー』が女性になった」ということを、ジェンダーフェミニズム的にいいことと手放しで評価できるかといえば、「単純なパターン破り」とか「どうせならこの役、女の子にしたほうが受ける(いわゆる「性的消費」?も含めて)よね」ということもあるだろうから、留保はしたいと思います。そのへんは、以下に書いた通り。

キャラクターの「パターンを破る」のと「偏見の打破」の関係について(再論)〜「進撃の巨人」を例に - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160603/p1

高度に発達した「テンプレ破り」は、ポリコレと区別がつかない(俺は)。女性、民族キャラクターなどを例に…… - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160508/p3

シン・ゴジラで女性性を強調しない登場人物(尾頭課長補佐)が人気に見えるのは、ポリコレ的に大変いいこと…なのかしら? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160810/p2



だけれども、やはりこういう感じのステロタイプの打破に、意識してか無意識的にかは分からないが、なっていたと思うのです。

理系学習マンガは誰を先生役にし、誰を生徒役にしてきたか。−NHKキズナアイ騒動をうけて
http://adenoi-today.hatenablog.com/entry/20181009/1539098342
 
もう一つの「性別役割分担」と偏見〜『昔の学習漫画って男の子がバカ役、女の子がお利口役が定番だったよね?』 - Togetter
https://togetter.com/li/1275743




「学園もの」で、別に女性陣がそんなにお飾り的だったわけではない。マカロニほうれん荘の時代から、お騒がせがわのやることに、 女性陣はツッコミ役として大活躍し、ついでに言うとそのツッコミは、一部でどんどん暴力的にもなっていきました(笑)。※先鋭的なギャグマンガが多かったから、ツッコミ表現も非現実的な暴力制裁みたいな描写が結果的に多くなった。

また少女漫画だと、たぶん「あんみつ姫」や「はいからさんが通る」のような「おてんば娘」の物語も多数あったはずで、このへんが主人公のパートナーとどういうふうな関係があったかも本来は追ってかなければいけないだろうけど、力不足につき略す。(おてんば娘の相手役は、キョン君的に振り回されるのでなく、おてんば娘よりさらに一枚上手で、包容力を持って見守ってくれる…みたいなパターンもあるし。)

ただまあ、80年代なのかなあ…、上に書いたようにフェミニズムジェンダーというよりは「どうせならこの役も、可愛い女の子にやってもらった方がいいよね」という発想でどんどん女性の活躍が広がり、主人公も女性にやってもらうような作品まで生まれました。

また観測範囲バイアスたっぷりなんだけど、 女性人の主人公が「暴走するおっちょこちょい」、冷静な男性がそれをハラハラしながらサポートしていく、ということでは藤子 F 不二雄「エスパー魔美」(1977年)「機動警察パトレイバー」(1988年)などがあるわけでしょ。
  

エスパー魔美 (1) (てんとう虫コミックス)

エスパー魔美 (1) (てんとう虫コミックス)

そしてなんだ、「スレイヤーズ」が1990年、「GS美神 極楽大作戦」が1991年か。(これらは主人公とは別方向に補佐役がバカ)

[asin:B07KW5NPSZ:detail]
第45話 GSより愛をこめて

第45話 GSより愛をこめて

  • 発売日: 2018/08/30
  • メディア: Prime Video
スレイヤーズ 1 (ファンタジア文庫)

スレイヤーズ 1 (ファンタジア文庫)

  • 作者:神坂 一
  • 発売日: 2008/05/17
  • メディア: 文庫

2003年の「涼宮ハルヒ」は、こういう流れを受け継いで「学園もの」に持ってきたことが画期的だったんじゃないかと、すっごく浅いレベルで仮説を立ててるんですが、いかがでしょう?

お知らせ

一つ前のエントリで「2018年のマンガ10本」を選定しているので、よければどうぞ

【完成】「2018年マンガ10傑」(第3回「内山安二賞」も)を選定します。 - ) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20181210/p1

追記 コメント欄で宮澤英夫氏からこういう指摘を頂きました

コメント欄だから下を見ればそのままあるんですが(笑)、検索などもできるようになるので本文に転載します

宮澤英夫 (https://twitter.com/miyazawa_hideo)2018/12/14 03:13

私も確かにメジャーシーンでは、非実在強大生徒会の源流は「究極超人あ〜る」で間違いないと思います。
しかしそれは「あ〜る」とハルヒとの比較のみにて立証するものではなく、ゆうきまさみ先生の過去作『時をかける学園(ねらわれた少女)』と、その元ネタになったドラマ版『ねらわれた学園』の存在が大きいと考えるのです。
ねらわれた学園 (1982年のテレビドラマ)

1982年の原田知世版『ねらわれた学園』で主人公グループと敵対する生徒会長・高見沢みちる(伊藤かずえ)は超能力で生徒会を我がものにし、学園を支配しようとします。
これまでの弁舌のみを武器とする生徒会と違い、インテリ層にありるながらも物理を超える超能力で教師の影響力を無化し、同じく超能力を持つ楠本和美(原田知世)や関耕児一派と対決します。
そして高見沢みちるの背後には未来から来た京極がおり、ドラマの展開はギャグが加算されつつ原作通りでありながらも、そのラストは今の若者が見ても度肝を抜く超展開でした。


これと映画『時をかける少女』に感化されまくったゆうきまさみ先生は、二つの原田知世主演ドラマを元に『時をかける学園』を月刊OUT内で二次創作マンガとして発表します。

この漫画では「時をかける少女」と「ねらわれた学園」が混ぜこぜになった構成を採っていますが、大筋は「ねらわれた学園」で原田知世絡みのオチとラストは「時をかける少女」に沿います。
ここでも伊藤かずみに似せた超能力生徒会長が出てきますが、会長や京極、ケン・ソゴルや関耕児ら戦ってる連中がボケ倒すので、原田知世まんまの楠本和美は突っ込み役に回り、収拾の付かないままケン・ソゴルのラベンダーで眠らされ、その面影を追って天国にいちばん近い島に行くというメタオチで閉めます。この『時をかける学園(ねらわれた少女)』が更にベースとなって『究極超人あ〜る』が産み出されるのです。


一方、ドラマ版『ねらわれた学園』に影響を受け『ヤヌスの鏡』などの実写ドラマ、大映ドラマが強権生徒会を描くようになり、生徒vs教師陣という教育問題に到る大枠対決を発生させなくてよいという利便性から、漫画やアニメも生徒会を対抗勢力として描く事を取り入れるようになります。その背後には『究極超人あ〜る』が挟撃し文脈を補完した影響がかなり大きいように見えます。


実はドラマ版『ねらわれた学園』には新人の頃の伊藤和典先生が各話担当で参加しており、後にゆうき先生と組んで『起動警察パトレイバー』を企画したり、『究極超人あ〜る』でも文芸部長・伊東としてキャラ化されています。この時期に伊藤・ゆうきらパラクリ一派(他にとりみき河森正治先生等)がSFマガジンやSFアドベンチャー(徳間書店)などでギャグテイストのSSや中編を発表、これが後にライトノベルの先駆けとなった作家陣に影響を与えることとなります。
つまり現在に至る非実在生徒会の源流はドラマ版『ねらわれた学園』にあり、ゆうき・伊藤先生らのフィルターを通して女性生徒会長のイメージが漫画・アニメに浸透した、というのが私の見方です。

追記2

その後、ブクマで浮上したハルヒ論。正直、このへんの感覚は「世代の差」と「リアルタイムで見てない」、そして「当方の思い入れが浅い」ことで、実感を持って共感するというのとは違うのですが、面白く読みました

当時16歳の私から見た『涼宮ハルヒの憂鬱https://anond.hatelabo.jp/20181213160908
 
ハルヒ)個人的には海外オタクとの緩やかな交流を挙げる https://anond.hatelabo.jp/20181213232336

togetterでの関連まとめ 実にありがたく参考になります。あらかじめ上で書いてますけど、少女漫画の方面の先行例などは特に不案内なので。
まとめ者はhttp://d.hatena.ne.jp/mizunotori/、現在はtwitterに主戦場を移して https://twitter.com/mizunotori のかた。

涼宮ハルヒの「お騒がせ集団の女性リーダー」像は斬新だったか? - Togetter https://togetter.com/li/1297996