人間発電所 ブルーノ・サンマルチノさんの訃報がTL上に流れている。
— 悪役商会@新・悪役商会(仙台限定) (@akuyaku_syoukai) 2018年4月18日
ジャイアント馬場さんとはニューヨーク修行時代に親友になって、その友情は生涯続きました。
全日本プロレスの旗揚げに際して真っ先に協力を約束してくれたそうで、馬場対サンマルチノは旗揚げシリーズの目玉になりました。 pic.twitter.com/SMQfctPjVh
サンマルチノが亡くなったそうな…273キロのヘイスタック・カルホーンを担いでリングを六周半、初代WWWF(現・WWE)王者バディ・ロジャースを48秒KO、首折り事件とプロレスが幻想に満ちてた頃の最高の怪力選手の一人だったと思う。世界一の怪力、偉大なるマジソンの帝王、人間発電所よ永遠なれ… pic.twitter.com/KFJNSIJaso
— B.L (@blqueen3) 2018年4月18日
※その後、まとめつくりました
さらば人間発電所〜ブルーノ・サンマルチノ逝去と、その反応 - Togetter https://togetter.com/li/1220359
「さらば人間発電所〜ブルーノ・サンマルチノ逝去と、その反応」をトゥギャりました。 https://t.co/5lJoS4BEzX
— gryphon(まとめ用RT多) (@gryphonjapan) 2018年4月22日
自分も世代的にずれているので、ブルーノサンマルチノの試合は1回も見たことがない。
いや牽強付会すれば…一試合だけ見ている。
それはジャイアント馬場が亡くなった時、直後に行われた東京ドームの大会の追悼セレモニーが”引退試合”と銘打たれ、 サンマルチノはジン・キニスキー、ザ・デストロイヤーらとともにリングに上がり、モニターに流れる往年のジャイアント馬場の映像を見守った。
それを1試合とすれば、見たことになるのだろう。
ではなぜ、そんな選手のことがすごく印象に残るかといえば、それはわがバイブル「プロレススーパースター列伝」 のおかげである、 としか言いようがない。
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しかしどうでもいいが
日付に「蒸し暑い夜―」と付け加える、梶原一騎の才能のほとばしりはどうよ。いや、本当に蒸し暑かったかどうかは知らんが(笑)、そこで生まれる臨場感たるや。
と同時に、ほんの一行なんだが、梶原一騎が書いた「アントニオ猪木談」の中で、ブッチャーがなんとか最後にはカウンターの地獄突きで失神 KOを奪い、大逆転勝利したものの…、苦戦に次ぐ苦戦を強いられた「人間空母」 ヘイスタック・カルホーンに ついて、「気絶させたブッチャーもすごい」が「人間発電所ブルーノ・サンマルチノがカルホーンを抱えてリングを6周して名をあげた」 と書いていて、たったその一行が幻想を膨らませたのであります。一方でミル・マスカラスのNY登場には「サンマルチノに全盛期を過ぎた夕映えが訪れつつあった」ので、彼の空中殺法が新鮮に見えた、と書いたり…
梶原一騎は、手持ちのレスラー幻想が晩年には微妙に時代とずれたりして、また何作も書いたわけだから、 A という作品では一人のレスラーを強い勝ち役に振り分け、Bという作品では負け役でジョブさせている。いや、一人のレスラーがそんなふうに勝ち役にも負け役にも なるのは現実のプロレス界を見れば至極当然なのだが、 これが困ったことにテキスト、作品として残るとなんか整合性の点で居心地が悪いんだよね(笑)
さらに言うと…、 これは俺の邪推だが、梶原一騎は総会屋のように全日本プロレス、新日本プロレス双方に「俺のペンの加減一つで、お前達が高いギャラを払って呼んでくる外国人レスラーを、ageることもsageることもできるんだよなぁ……そんな俺に、君たちは何で報いてくれるのかな?」みたいな牽制球を投げていた、という気がするんだよね。
サンマルチノに全日本プロレスの総帥、ジャイアント馬場はビジネスを超えた友情を感じていることは周知の事実で、そのサンマルチノを上げたり下げたりというのは、ちょっとそんなところがあったんじゃないかなあと…
まあその真偽はともかく、プロレススーパースター列伝で、主人公として登場するレスラーの相手役に回って、そこで存在感を見せたレスラーの中で五本の指に入る存在だろう。そのおかげで、こうやって試法を見たことない人でも、訃報に対して色々思うところがあるのだから、 やはり最後の勝者は「物語」なのだろうか。
物語が最後の勝者、という話で言えば、サンマルチノと「ハンセン首折り伝説」 については、やはり語らざるを得ない。…ただこれについては既に言及されているのでこの記事を読んでもらった方が早い。
WWE殿堂入りを果たしたスタン・ハンセン「首折り事件」の真相は、もはやタブーではない - エキレビ!(1/5) https://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20160617/E1466102789490.html
…ハンセンのWWE殿堂入りが発表され、それと同時にWWEは「Stan Hansen joins the WWE Hall of Fame Class of 2016」なる公式動画をアップ。そこには、件の「サンマルチノーハンセン戦」中の1シーンが収められていた。噂には聞いていたものの、初めて目にした人は多かったと思う。ハンセンが異常な急角度のボディスラムでサンマルチノを投げ落とし、サンマルチノが受け身を取り損なっている場面である…
その公式動画はこれ。
Stan Hansen remembers those who made him one of the most vicious competitors : WWE Hall of Fame 2016
開始後1分の映像だ。
あー、こりゃねえ…
夢枕獏は、「仰天・プロレス和歌集」でこう歌った。
一番よく効くのはヘタな技ですと言ってから 頭を掻いているインタビューである.
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ただ、ハンセンのために弁明するなら、本当に聞いたのはこのハンセンの下手な技ではなかった。
まだ医者の診断では安静にしているべきだと言われたのに、「アントニオ猪木vsモハメド・アリのクローズド・サーキットに合わせて、お前の復帰戦を組んだから出場してくれ!猪木の試合はしょっぱくなりそうだから、お前がお客さんを満足させて帰らせないと困るんだ」と言い出して、強引に退院させたビンス・マクマホン・シニアの無理難題こそ、一番効いた技だったらしい(笑)
実際ここでは、首折りの因縁のあるハンセンをサンマルチノが爽快にやっつけ、観客も大いに溜飲を下げたそうだ。
にしても……彼、ハンセンの得意技が偶然、首を攻撃するラリアットで、この事故を「ギミック」に出来たのは運命としかいいようがない。そして、よく考えたらシャレにならない、このアクシデントのギミックへの変換を、プロモーターもケガさせた側もさせられた側も、一致して押しすすめたのだから、プロレス界の底なし沼っぷりときたら。この時、ドル箱スターを技の下手さゆえにぶっこわして、団体とそこで働くレスラー全体に金銭的な被害をも与えたハンセンは、かなり居心地悪い思いをしたらしいが、そこで当事者のサンマルチノが温かくも寛容な心で許し、重要登場人物としてその後のMSGでも扱ったからこその、その後のハンセンの未来もある。
そんなサンマルチノは代替わりしたビンスマクマホン・ジュニアの考える、今現在のスポーツエンターテイメントたるWWEのプロレスは全く相容れず、長くニューヨークマットとは距離を置いていた。しかしビンスは、あまりにもあまりにも強欲で、プロレス界を現在と未来だけでなく、 過去まで全て支配したいと言う強い欲望があった。
そこで粘り強く様々な人脈を駆使して交渉、心からの和解かどうかはともかく、最終的にはビンスとサンマルチノは握手し、殿堂入りや映像のアーカイブ化なども生前に完了した。
これは最終的にプロレス界にとっても一番良かったのではないか。
最後に、プロレススーパースター列伝を超えるインパクトを残した漫画についても紹介したい。
みのもけんじ「プロレススターウォーズ」で描かれた幻の対決、ジャイアント馬場対アンドレ・ザ・ジャイアントの『ジャイアント決戦』は、最初から最後まで、とにかく漫画や小説などで架空の対決を描きたい人にとってはお手本中のお手本になる傑作だが、
(以下、ややネタバレにつき、OKな人だけ読んでください)
両者 KO の引き分けという形で決着がついた後のボーナストラックにサンマルチノが登場する。これが本当にすごくて……
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アンドレ・ザ・ジャイアント
がともに KO状態。当然自力ではリングを降りられない。
しかし二人の大巨人を運ぶ担架なんて、当然そのへんには転がってないし、人手も必要。大館のリングサイドに…
「タンカは必要ない、私が彼らを運んで行こう」
と言って!!
背広姿の、すでに引退した!
人間発電所ブルーノ・サンマルチノがリングに入るのですよ!!
そして!!
馬場とアンドレをそれぞれ片方の肩に乗せて、かるがるとリングを降り、 花道を通って控え室まで運んでゆくのです。
そこに浴びせられる惜しみない拍手!!
怪力無双のサンマルチノの特性…さらにいえば、前述のお化けカボチャことヘイスタック・カルホ−ンを抱えてリングを6周半したと言うプロレス伝説を活用して描かれるこのシーン。
ほんのちょっとだけ、ゲストキャラが見せ場を作る…というフィクションの中での作劇術のお手本と言ってもいい、一場面でした。
そんな形で、極東の1プロレスファンが、実際の試合を見てもいないのに幻想の世界で生きずいた大物プロレスラーでした。
ブルーノ・サンマルチノ、人間発電所(この異名の芸術性はナンシー関も絶賛した)。
安らかに眠れ。
ブルーノ・サンマルチノvsスタン・ハンセン「首折り事件」の真相は、もはやタブーではない(2016)https://t.co/s39wMH3Tak 「あなたの首の骨折はウエスタン・ラリアットによるものではなく、ボディスラムによるものではないでしょうか?」との質問にサンマルチノは
— アヒール (@keep_on_mono) 2018年4月19日
「そのとおりだよ」と答えた。
ブルーノ・サンマルチノといえばプラッシー自伝に書いてあった話が好き。
— ぶる〜の (@shin10276707) 2018年4月18日
抗争中の試合後、間違えてサンマルチノの控え室前を通ってしまい、立場上「次も血祭りにしてやるぜ!」と吠える。
支援者(イタリア移民マフィア)の顔色変わるが「奴はオレが倒す」とサンマルチノが止めて事なきを得たと。
ボボ・ブラジル「ヘーイ、ブルーノ!ジャイアント‼︎」
— ジャイアント台風bot (@gianttyphoonbot) 2018年4月21日
馬場「・・・・・・・・・・・・」
サンマルチノ「ヤア」
ガン
馬場「はっ‼︎」
ブラジル「今ノレンガガユータチノ今夜ノ運命ネ ケッケケケケケ!」 pic.twitter.com/PjNE91J4Z6
"人間発電所"ブルーノ・サンマルチノが亡くなった。60年代、私の少年時代の世界チャンピオンと言えばサンマルチノとジン・キニスキーだった。何度か会ったことがあるが、身長はそれほど高くなかったが、分厚い胸元ははち切れそうだった。必殺技はベアハッグ。プロレスごっこで、よく使ったものだ…合掌 pic.twitter.com/M9k0JKgbg5
— ロッシー小川 (@rossystardom) 2018年4月19日
ボディスラムの投げミスを「ブルーノ・サンマルチノはラリアットで首を折られた」ことにしてスタン・ハンセンがブレイクするんだからプロレスって奥深いし、その展開を受け入れたサンマルチノの度量も広いです! pic.twitter.com/redUdKcpIg
— ジャン斉藤 (@majan_saitou) 2018年4月19日