えええ、信じられん!!と思ったのだが69歳になられていたのか。
勿論若いが、そういう事が有り得てもおかしくない年齢でもあった。こちらが油断し過ぎだったのだ。でも、まだ描きたいものは沢山あったろうなあ…
自分は最初に、「餓狼伝」の漫画化で知った。
「餓狼伝」という格闘技に特化した珍しい小説がある、ということを知っていたんだっけかな?たぶん、別冊宝島のインタビューか何かで知ったはずだ。
ハードカバーの漫画をいきなり買うなんてのも珍しかったから、たぶんそういう流れだったはずだ。
それが実に面白くて、原作の餓狼伝を読み始めた・・・・・・・・と記憶している。
そのあと、マンガ評論的な本を読むようになると「坊ちゃんの時代」が絶賛されていたので、おっかけて読むようになり…そして「孤独のグルメ」はPANJAという総合雑誌に載っていたから読んだのだっけ。その当時は、なんか変わった漫画だなー、とオチとかないの?と思ったぐらいで、ここまで長く愛される漫画になるとか、まさか谷口ジロー氏の代表作になるとは思うはずもなかった(笑)。
「犬を飼う」も話題作だったし、その他いくつも作品は読んできたけど、谷口ジローが一番好き!とかジローが書いてるからこの雑誌買う!という人ではなかった、ということは率直な話だ。でも、あとから読み返すと実に味わい深い。そんな人だったのですよ。
そういえば、いま手元に現物がないけど、谷口ジロー画による「餓狼伝」コミカライズの際の夢枕獏のあとがきだと、獏氏のほうから熱烈にラブコールしたそうな。その理由は「谷口ジローはプロレスラー、プロボクサー、アマレスラーの肉体を描き分けられる。今、それができるのは彼しかいない。」
とのことだった…ああ、ここでも書いてある。
http://mayanomanga.blog.fc2.com/blog-entry-6.html
ちなみに夢枕獏氏自身も無類のマンガ好きで、自作品の漫画化の内容には注文は付けない方らしいのですが、作家選定の段階で谷口ジロー氏を推薦されたそうです。いわく、「プロボクサー、アマレスラー、プロレスラーの肉体の違いを描き分けられる稀有な作家」であるとのこと。
「餓狼伝」については一般的には掲載誌を変えつつ、中断も多い「バキ」の“板垣恵介版”が知られていると思いますが、こちらはそれよりも約10年早く連載をされていました。原作クラッシャー(笑)でハラハラさせる板垣版とは異なり、小説の内容に忠実に描かれています。全一巻ということで物語としてはごく序盤しか描かれていませんが…、
そう、板垣版と谷口版はまったく別方向すぎるコミカライズだった。どっちも許容する原作者は懐が深いのか無節操なのか(笑)。
あの人の筋肉の描きわけは、また別次元だし(笑)。
その後の、「神々の山嶺」での再タッグ結成についてはいわずもがな。
同じ原作の、某映画とくらべても勝ちだ、圧勝だ。
ここでの食べ物描写も話題になったりした(うまそうだと)
【訃報】 「孤独のグルメ」谷口ジローさんが死去 https://t.co/ifSoAAen5O
— vavaroa (@vavaroa) 2017年2月11日
夢枕獏は昭和62年に漫画をトーク形式で紹介する「ガキのころから漫画まんがマンガ」という本を出している。
そこでの谷口ジロー評
- 作者:夢枕 獏
- メディア: 単行本
追悼 谷口ジロー
— gryphonjapan (@gryphonjapan) 2017年2月11日
夢枕獏が座談会本で紹介した、谷口初期の傑作「青の戦士(ブルーファイター)」。
強すぎて本気を出せないボクサーの才能を、ある男が見抜き… pic.twitter.com/LEDmURKf1N
「青の戦士(ブルーファイター)」というほうはね、強すぎて、いつもいいかげんな試合をやって負けている男がね…(略)つまり相手が弱いと燃えないわけ、主人公の霊柱(レゲ)は。だからいつもね、ああ、相手に殴らせちゃえとか言って負けてるんだけどね、こいつはほんとはもっと強いというのを見抜くやつがいて、そいつがね、外国へレゲを連れて行って、それで強い相手を見つけて闘わせるの。で、彼が本当に燃えるんだよね、そのときに。これもすごい話ですよ。
で、最後にね、すごくいいセリフがあるんだね。
その外国のチャンピオンとやるときにね、このシゲという主人公を向こうのすごく強いチャンピンがリングで見て、トレーナーに言うんだよね、「俺は奴ほどにミステリアスでセクシーだったか?」って。これはいいせりふだな。
(略)
ああ、これなんだな、格闘技の小説を書くときはこの感覚なんだなって、こういうふうに書くんだなっていう。(後略)
追悼 谷口ジロー
— gryphonjapan (@gryphonjapan) 2017年2月11日
夢枕獏が評す「事件屋稼業」。
「男は観念してさ、ふたりで見つめ合うんだ。で、最後に「じゃあな」っていうシーンがいいんだよね。もうお巡りさんが来てるんだよね、すぐそこまで。来た時ときに「じゃあな」って言った後でむかしの水泳のシーンがあって、男が自分の頭に拳銃を…」 pic.twitter.com/vLZXmsD4Gn
むかしの水泳部の友人とのからみの話のラストシーンは好きだなあ。
「若干の決意あり」、ああこれか。
むかしのダチ公が犯罪にこの主人公を巻き込んでね、陥れようと売るんだけど、それがバレちゃうんだよね。バレた最後のシーンに、ちょうど女と逃げようとしているところへその深町丈太郎が来て、なんていうんだろうね。すごく密度の濃い話だから説明がむずかしいな。
深町丈太郎が来て、にんげられなくなっちまうのよね。そこで深町が、友人に、元水泳部だったかもんでね。
「お前水から上がったら、心が汚れたなあ」って雨の中で言うんだよね。
(略)
男は観念してさ、ふたりで見つめ合うんだ。で、最後に「じゃあな」っていうシーンがいいんだよね。もうお巡りさんが来てるんだよね、すぐそこまで。来た時ときに「じゃあな」って言った後でむかしの水泳のシーンがあって、男が自分の頭に拳銃を当てるシーンがあって、それを見つめている深町丈太郎がいて、その後、弾の音のあるコマをふつうやるじゃない、ダーンとかね。
そいうのをやらずにここで終わらせるセンスっていうかね、そういうのに満ち満ちているんですね、この話は。
どこかとぼけていて、それでいてリアルで、登場人物がみんな存在感あるの。これは最高のコンビだよ、この関川夏央作、谷口ジロー画「新事件屋稼業」。うらやましいな。
過去の自分の、実にしょーもなさすぎる「孤独のグルメ」関係記事。
お前ら「孤独のグルメ」でアームロックって技知ってるだろうけど、実際にあれ使えるかい?という話。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140613/p1
- 作者:久住 昌之
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: コミック
わたしのtwitter上でのアカウントではニュースや反響を多数リツイート、自分もおくやみをツイートしています。
https://twitter.com/gryphonjapan
あとでそれらも取り込みつつ、追悼を書きましたが、一番印象に残る「遙かな町へ」は、別建てにしようと思います。
※のちに書いた
m-dojo.hatenadiary.com
ほかのかたがつくったtogetter
漫画家・谷口ジローさん死去…『孤独のグルメ』だけではない傑作の数々、フランスでも高い人気 - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1080223