「ブレグジット後」の経済予想が外れまくった理由は?|コリン・ジョイス|ニューズウィーク日本版 http://www.newsweekjapan.jp/joyce/2017/01/post-119.php
昨年11月、オックスフォード辞典は「post-truth(ポスト真実)」という単語を「2016年今年の言葉」に選んだ。
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これが「今年の言葉」になったのは、国民投票によるイギリスのEU離脱(ブレグジット)の決定(と、その後に続いたドナルド・トランプの米大統領選勝利)のせいだ。つまりイギリスの有権者は、EU加盟国であるのはいいことだという「客観的事実」を拒み、代わりに無知な抗議に一票を投じた、ということらしい。
だが投票後の数カ月で、ブレグジットに関する多くの「公然の事実」が間違いだったことが分かってきた。たとえば、離脱を選べば確実に、イギリスは急激な経済ショックを味わう、と言われていた。実際に離脱する前でさえ、ミニ景気後退が起こるだろう、と。
(略)ところが、ブレグジット決定後のイギリス経済は、驚くほどの耐性を見せている。株式市場は史上最高値をつけ、雇用は堅調が続き、消費は活発で、製造業は成長し…(略)投票から7カ月後の今、イギリス経済は世界有数の好景気にある。
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今月、イングランド銀行のチーフエコノミストであるアンドルー・ハルデーンは、彼らが唱えていた経済予測「ブレグジット・シナリオ」がべらぼうに外れていたから、経済学の「プロ」は今後、信頼を取り戻すために必死にがんばらなくてはいけない、と語った。……今年の言葉にふさわしいのは、「post-expert(ポスト専門家)」では?
「ポスト真実」だ「フェイクニュース」だという批判は、やはりファクトとエビデンスという錦の御旗が、われにありという自信があってこそ言えることじゃないですか。
偶然か理論に基づいているのか、まぐれか必然化はわからない。また、大きな災害はこの後に起きるのかもしれない。
実際のところ経済は政治の良しあしや政策と別に好景気や不景気になり、たまたまその時期に与党や大統領だった人々が幸不幸に見舞われているだけかもしれない。
(天災や気候不順は為政者の不徳と思われていた時代、偶然に噴火や冷害に見舞われた、本人の資質としては有能だった不運なる王もいたろうなあ…)
それでも、現在、英国の経済状態はこういうふうになっている――EU離脱反対派の予想に反して――――いうのは、直視しなきゃいかん現実だわなあ。