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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「スターウォーズ」ディズニー売却と、故ヤマグチノボル氏の話から「創作世界継承」を考える…本日SW新作公開、第1作TV放送

【記録する者たち】

https://kinro.jointv.jp/lineup/151218
スター・ウォーズ/フォースの覚醒」公開当日!
「2週連続スター・ウォーズ祭り」、開幕!!

スター・ウォーズ、伝説の「すべてのはじまり」
究極のシリーズ第一作を最新作公開当日に独占放送!!

世界中が待ちに待った「スター・ウォーズ」シリーズの最新作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」がいよいよ12月18日に全世界同時公開!! その公開当日、「フォースの覚醒」の原点である劇場1作目を独占放送。物語の主人公は、小さな惑星で育った青年・ルーク。2体のロボットに導かれて元ジェダイ騎士の老人・ベン(オビ=ワン)と…(略)

ほんのかすかに、SW第一作の、やや擬似イベントめいた「熱狂」を覚えている。コカコーラの蓋のうらに、キャラクターの写真が載ってたんだよね。
小林信彦「唐獅子株式会社」の一作「唐獅子星間戦争」に、その名残なんかも残っている。


そして今回、公開に際してこれが話題になっている。

町山智浩 スターウォーズ6部作に隠されたジョージ・ルーカスの人生を語る http://miyearnzzlabo.com/archives/32101

まったく複雑な人生の投影だけれども(そういえばコナン・ドイルシャーロック・ホームズにも、こういう実人生の投影があるという説を小林司氏はしていたっけ)、しかし、非常に肝心なことは、そんな人生を丸ごと投影した作品を、結局ルーカスはすべて諸権利まとめてディズニーに売却したということだ。
町山記事から

町山智浩)今回は、初めて『スターウォーズ』シリーズがジョージ・ルーカスの個人的な心の闇と全く無関係に作られる最初の作品なんですよ。

ラサール石井ジョージ・ルーカス、一応台本を書いたんだけど、却下されちゃったんですよ。

町山智浩)そう(笑)。

赤江珠緒)えっ?ジョージ・ルーカスのが?

ラサール石井)のが。で、これからはディズニーだから。もっと子供も楽しめるようなものになっていくんじゃないか?と。

町山智浩)言われてるんですよ。で、今回はジョージ・ルーカスは完全に、知らない他の人が作った知らない作品として楽しんだそうですよ。

山里亮太)あ、もうそんな軽い感じなんだ。
〜(略)
ラサール石井)そうなんだな。要するに『スターウォーズ』はもう一人歩きを始めて。手を離れて。これからまた、どんどんと発展して行くわけですね。これね、ディズニーのことだからこの『スターウォーズ』ね、死ぬほどやりますよ。これから。

赤江珠緒)ああー!そうですね。これから、いろんな形でね。へー!

上の町山氏解説には、あれ?と思うところがあって、自分が最近どっかで読んだルーカスのインタビューでは、自作脚本却下にすっごく不満たらたらで、その怒りをぶちまけてたはずなんだが・・・ただ、今は探し出せないっす。

しかし、それよりやっぱり「ああ、ディズニーに売却された以上は、ルーカスに関係なく作られていくんだな」「今後も長く作られていくんだろうな」というところに、大きな感慨を持ったのです。
それは「創作世界の継承」という点です。
ルーカスがディズニーにスターウォーズを売った、という話を聞いた直後から、それを考えていました。

■ルーカス・フィルム、ディズニーに売却・・・で思うこと http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121104/p3


(前略)
そんなスターウォーズが・・・思うに、キャラクターとして生きるためには、やはり寂しいし、そもそも「ディズニー」を会社として自分はあまり評価してないけど、そこに売るというのは最良の選択だったんだと思う。
権利として生きる、博物館にフィルムとして保管される、あるいは30年か50年ごとに、古い映画マニアが研究書を発表する・・・そういうことでなく、キャラクターとして常に愛され、生き残るというのは本当に難しく、ひとにぎりのエリートのみに許されたことだ。


ジョージ・ルーカスという個性は経済的にも文化的にもすばらしい成功を収めたが・・・自身も年をとり、「スターウォーズサーガ」をどうつむいでいくかを考えていく時期だったのだと思う。
かつての文学作品、シャーロック・ホームズや三銃士のように、ひろく皆が楽しめるパブリック・ドメイン化することもひとつの生き残り策だけど、ディズニー的なガチガチの権利保持によって常におもちゃやゲーム、遊園地のアトラクションになっていけば、おそらく米国での権利独占期間が終わるまで、それは生きながらえていくでしょう。

(中略。とあるウルトラマンの研究書では)
円谷プロの三代目社長、円谷皐の采配の失敗が描かれている。彼はウルトラマンの権利をがっちりにぎりキャラクタービジネスを回す才能はあったが、新しい作品を生み出す力が無かった・・・それはいい。
だが、それ以上にウルトラマンを私物化し(円谷プロ筆頭株主なのだから、その範囲でどうしようと仕方ないが)、私的な裏金ほしさにタイと不透明な取引をしたのではないか?という疑惑を本書は提起している。タイとの裁判、別に根拠があるわけじゃないが、三代目を知る人は「あいつならやりかねないよ!」と口をそろえたとか・・・

ルーカスフィルムと円谷では規模がまるで違うが(キャラクターでは負けないと思うが!)、そんな興亡を見るとき、ルーカスフィルムスターウォーズインディ・ジョーンズを末永く伝えようとするとき、下手に独立独歩でいくことはむしろ障害なのではなかろうか・・・
そんな、仮説を出しておきたい。

このとき、
「ルーカスがその後長生きするなら、存命中に、自分のコントロールスターウォーズに効かなくなるのを後悔することも1、2回あるんだろうな」と思ったのだが、その時期が来るの早かったな(笑)!!



しかし、やはり基本的には、上の話はそうなると思うんだわ。
で、わたくしなんかが個人的に子供の頃好きだったエンターテインメント、フィクションは、当然クリエイターが人生の先輩なのだから、肉体的、年齢的な黄昏を迎えている。
手塚治虫などは、お子さんがなかなかの(創作に関する)才人ぞろいで、賛否はあろうがそれなりに権利使用に判断をくだせる立場にあるし、相応の報酬を貰っている。
しかし、多くのクリエイターの中には、著作権を継承すべきお子さんがいない人もあろうし、子供が「自分は父親母親の創作物に興味はないし、翻案やキャラクター使用に関して、その是非とかクオリティとかわかんねーよ」という人がいよう。


そういう人は、ディズニー的なエンターテインメント…ま、一番身近にいるのは出版社かねえ。映画会社とかテレビ局かもしれない。
あるいは、そういう著作権を預かって転売や貸し出しで儲けるような会社も今後生まれる(今もあるんだろうか?)かもしれない。パチンコに関しては、そういうクリエーターからいったん権利を買って、それを再度売り歩く「商社」もあるんだって!!



これを、具体的に想像してください。ちょっと名前を挙げた人やそのファンは不快かもしれませんが、これ具体的に考えるのとそうでないのでは段違いなんで…

シミュレーション

【おしらせ】
作家・田中芳樹と『らいとすたっふ』社は20XX年X月、カドカワホールディングスに「銀河英雄伝説」「アルスラーン戦記」「創竜伝」に関する一切の権利を売却することで、同社と合意したことをお知らせいたします。
カドカワは今後、銀河英雄伝説の続編「銀河英雄伝説後伝」の制作に乗り出すことも、合わせてお知らせします…

【おしらせ】
小学館は20XX年、藤田和日郎氏から「うしおととら」「からくりサーカス」に関するすべての権利を購入いたしました。
ビッグコミックシルバー」に、期待の新人ぽこ山ぺけ太郎先生描く「うしおととら復活編」が始まります!!


…いや、すでに似たような話はやまほどあるか。田中氏は「銀英伝の後編は絶対あり得ない」と、シリーズ完結時のあとがきで書いているが、権利を売却すればそんな意思はねえ、反故になるわけで。司馬遼太郎はきちんと財団まであるが、生前の意志であった「坂の上の雲の映像化はNG」は、仕事上のパートナーでもあり深く愛した妻の手によって見事解禁された。出来は良かったと私は評価するが、それは司馬の意志を、遺志を破った上でのものであることはわきまえている。


著作権が継承される」ということは、作品世界をコントロールできるということで、それは善にも悪にもなるだろう。

■新作のホームズ映画に著作権者が怒る「ホームズとワトソンを、同性愛っぽく描くな!」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120321/p3
 「(略)……彼らが将来的作品で同性愛のテーマに触れた場合、映画化は撤回します。わたしは同性愛者に敵意を持っているわけではありませんが、シャーロック・ホームズの本の精神に忠実ではない人には敵意を抱きます」とアンドレアはコメント・・・



町山智浩キング牧師の映画が50年もの間制作できなかったワケ「演説の著作権を遺族が管理している」 http://numbers2007.blog123.fc2.com/blog-entry-6931.html
町山智浩:このキング牧師の映画が、今まで作られなかった理由も、そこにあるんですよ。キング牧師の演説は、全部、キング牧師の遺族が著作権を管理してるんですよ。
赤江珠緒:あの"I have a dream"ですか?
町山智浩:そうなんです。有名な演説は、全て管理していて。遺族の許可がないと、映画で演説が一切使えなくなるんですよ。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:遺族は何人もいて、その全員の許可を取らないとダメなんです。スティーブン・スピルバーグは…



本多猪四郎監督の遺族「ゴジラの権利」で東宝と紛争(取材:安藤健二http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111201/p3
「……このCMは本多監督の意に反する改変をしている。ゴジラ関係著作物の本質の一つである“好戦的ではない性格の生き物”としてのゴジラの表現を改変し、“破壊を好む好戦的な生き物”としてのゴジラという相反する表現を含んでいるからだ。本多監督の同一性保持権侵害となるべき行為…」

しかし、あえて「作品世界を(権利的に)自由に開放します。誰でも続編・二次創作、キャラ活用を自由にやってください」とやる方法も?ヤマグチノボル作品

ゼロの使い魔』二次創作解禁へ 小説投稿サイト「カクヨム」で誰でも自由に | ORICON STYLE http://www.oricon.co.jp/news/2063678/full/

KADOKAWAは11日、はてなと共同で開発した新しい小説投稿サイト「カクヨム」内で、2013年4月に亡くなった、ヤマグチノボル氏の人気ライトノベルゼロの使い魔』の二次創作を解禁することを発表した。

 「カクヨム」は、誰でも自由なスタイルで物語を書ける、読める、お気に入りの物語をほかの人に伝えられる、新たな「場所」の創出を目指して開発された小説投稿サイト。(略)
 そして、中でも許諾を受けた人気小説の二次創作小説が投稿可能という点が最大のポイントで、現在の許諾タイトルは計11作品… 『ゼロの使い魔』は、ヤマグチノボル氏により、2004年に第1巻が上梓された、ライトノベルブームを支えた金字塔的作品。13年にヤマグチノボル氏が亡くなった後は絶筆状態となっていたが、闘病中「プロットを託すので誰かに完結させてほしい」と依頼していた

この記事への、私のブックマーク。

gryphon 自分はこの作者も作品も知らないけど、一般的にこういうこともあるかも、と想像はした。作者さんやその遺族がキャラクターや作品世界を末永く残したいと思う時、「オープン化するので続編や外伝を自由に書いて」と…


いや、作品と作者さんを知らないでいうのは大変申し訳ない。
ただ、自分の肉体的限界によって、自分が生み出した創作世界を完結させられない悔しさ、無念さ。これは門外漢にもわかる気はする。
それを他の人に託す、開放して自由な人々に託す。
(まあ、今回は権利をカドカワが握った上での公開だよね?)
「クトルゥフ神話」が、ラブクラフト死後に自由に他の作家が書き継いでいったのは、どんな経緯があるのだろうか?

それは調べてみる。
wikipedia:クトルゥフ神話

一連の小説世界はラヴクラフトとフランク・ベルナップ・ロング、クラーク・アシュトン・スミスオーガスト・ダーレスらの固有名詞・設定のやり取りによって創始され、彼の死後、ダーレスやリン・カーターらがそれらの設定を整理して「クトゥルフ神話」として体系化していった。…(略)ダーレスはアーカム・ハウスという出版社を創設してラヴクラフトの作品を出版する一方、「クトゥルフ神話」体系の普及に努め、他の作家が「クトゥルフ神話」作品を書くように働きかけた。これによってラヴクラフトという作家は広く認知されることとなったが、ダーレスは、ラヴクラフトの文学を後世に伝え広めた最大の貢献者として称賛される一方で、ラヴクラフトのコズミック・ホラーを世俗的な善vs悪の図式に単純化したという理由で死後に批判されることにもなったが、ダーレスの存命中、アーカム・ハウスから刊行された新たな作家によるクトゥルフ神話作品は、必ずしも旧神や四大属性などのダーレスの独自設定に準拠しておらず、ダーレスがその「体系」を強要した形跡は見られない。


だけど…どうなんだろう、架空世界を生み出した作者さんは、その世界を「ほかの人々に継承してもらいたい」と思うのだろうか「この世界ははじめから終わりまで俺のもの。他の連中は触るな!!」と思うのだろうか。

「末永く継承してもらいたいけど、俺が創造した世界そのままにな!指一本触れずにそのままを保て!」みたいなわがままもあるんだろうか。

そのへんは創作力のない凡夫のわかるところではない。
宇野常寛氏は、ひとつの仮説として、「富野監督は、あまりにガンダムの設定や世界が、自分の創造した範囲を超えたひろがりになったので嫌悪感を覚えたのではないか」というようなことを語ったことがある。

(仮説)「ファンがある作品の、架空の歴史や設定を余りにも緻密に詳細化すると、元の作者はそれに”嫉妬”する」 - ) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130215/p4

おまけ この「ファン映画」はすごくおもしろそう。熱狂的ファンの前には「創作者本人が内容を改変する」のも裏切りなのだ

スター・ウォーズ フォースの覚醒』の前にこれを観ろ! - 1年で365本ひたすら映画を観まくる日記 (id:type-r / @hitasuraeiga) http://d.hatena.ne.jp/type-r/20151211#p1


ピープルVSジョージ・ルーカス コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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この前

「ファン漫画」の歴史を年表化してたどってみる【創作系譜論】 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151004/p2

という記事を書いたけど、「ファン映画」も作れるんだねえ(笑)…

あっ、創作者自身の改変に、ファンが納得いかなかった、といえば

wikipedia:山椒魚 (小説)

山椒魚」(さんしょううお)は、井伏鱒二の短編小説。成長しすぎて自分の棲家である岩屋から出られなくなってしまった山椒魚の悲嘆をユーモラスに描いた作品で、井伏の代表的な短編作品である。井伏の学生時代の習作「幽閉」(1923年)を改稿したもので、1929年、同人雑誌『文芸都市』5月号に初出、その後作品集『夜ふけと梅の花』に収録され、以降たびたび井伏の著作集の巻頭を飾った。国語教科書にも採用され広く親しまれている作品であったが、1985年、自選全集に収録する際に井伏自身によって結末部分が大幅に削除されたことで議論も呼んだ。
(略)
この突然の改稿は大きな波紋を呼び、削除に対する賛否や作者の真意、そして「作品」はいったい誰のものか、といったことをめぐって文壇を賑わわせただけでなく、その騒動はマスメディアからも注目を受けた[28][29][30]。井伏作品を愛読していた野坂昭如は『週刊朝日』誌上で、「山椒魚」はもはや書き手を離れている作品であるはずだと書き、これまでの読者はどうなるのかと強く反発した[注釈 8]。井伏の伝記を執筆した安岡章太郎も、当時の講演で…(後略)

山椒魚・遙拝隊長 他7編 (岩波文庫 緑 77-1)

山椒魚・遙拝隊長 他7編 (岩波文庫 緑 77-1)