【記録する者たち】
新聞記事スクラップから
- 作者: 高田文夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/03/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ビートたけし、立川談志、三波伸介−個性豊かな喜劇人との秘話を、放送作家高田文夫さんがまとめた「誰も書けなかった『笑芸論』」(講談社)を刊行した。
「一度、死に損なったんでね。笑い一筋で60年生きてきて、俺が死んだら面白い話も全部あの世にいくことになるから」
高田さんは2012年4月に心臓疾患で倒れ、生死の境をさまよった。復帰後「芸能への恩返しのつもりで」自分しか知らない貴重な体験を書き残そうと思ったという。
幼少時代の思い出には、あの森繁久弥さんも登場。当時住んでいた東京・千歳船橋で、近所の森繁さんをからかい、追いかけ回された逸話…… 大学卒業後に飛び込んだ放送業界は目の回るような忙しさ。台本を書きまくる中でも「会いたいと思った人にはどんどん会いに行った」と言う。
喜劇人は意外に人間嫌いが多いが、三木のり平さんや渥美清さんらも、笑いに早熟だった高田青年に心を許し…評判を聞けば、無名の新人でもすぐ会いに行った。中でも不遇時代のビートたけしさんとの出会いはやはり刺激的だ。
「『ババア死ね!』なんてかわいいもんで、あのころのたけちゃんは、もっとやばかった」
飲みにいった居酒屋で、活字にするのもはばかられる毒舌のオンパレード。「放送でしゃべれる言葉が一つもないんだもん。ゲラゲラ笑いながら、この人、本当にだめだなと思った」
何とか押し上げたかったが、ネタが危なすぎてどうにもならない。“毒ガス漫才”が火を噴く前夜、当時の手詰まり感を「夜明け前というのは何も見えないものだ」と本の中で振り返って「裏話には本当は触れちゃいけないものもあるんだけど、みんなが口ごもっちゃうから、俺が言わなきゃ。まだ書きたいことはたくさんある」と話す…
自分は【記録する者たち】を準タグ的に使っている、という話は何度も書いたけど、この高田文夫氏の執筆動機は、まさに素朴にして最強最大の、記録への意思、モチベーションだろう。
自分が死ぬ、その時に話を、思い出を、証言をどれほど残していけるか。森羅万象すべては滅すといえども、やはりそれは人類への義務だと思う。
「才能ある者は、才能の奴隷となるべし」という言葉を以前聞いたけど「貴重な記憶ある者は、記憶の奴隷となるべし」とも言い換えると思う。
(いろいろそれまでも本は書いてたけど)一度死に掛けないと、そういう気持ちにはならなかっただろうから高田の野郎の心臓は、少しいい仕事したじゃねえか(笑)という気持ちにもなる。
暴言のようだが、高田氏も自分の心臓にこう言ってると思うぞ。
書いちゃゃったよ、馬鹿野郎。こんなに裏話を赤裸々に書くのは初めてだよ。俺に歴史をつくらせちゃって憎いねどうも。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100129/p7