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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「神や聖人が敢えて地獄に降り、亡者を救う」という発想は、東洋にも西洋にもあったみたいね(鳥獣戯画展)

鯖 @s_abagashira
https://twitter.com/s_abagashira/status/599754829733371906
鳥獣戯画も面白かったんだけど、個人的に明恵上人のお弟子さんが亡くなられた後、地獄の鬼たち目がけて、口から五色の真言ビームを放ちながら、片っ端から鬼たちを往生させたせいで、弱り切った閻魔大王から「…おまえ、もう国へ還れ」って言われて、生き返る「光明真言功徳絵」が楽しかったです。
 
鯖 @s_abagashira 10:54
口から五色の真言ビーム。 pic.twitter.com/e3FuCrNhAN

 
そんで、ぼくの感想ツイート。

gryphonjapan @gryphonjapan 23 時間23 時間前

へー、以前教わったんだけど、キリストの解釈にも「十字架上で一度殺されたイエスは、いったん地獄に降り、自分が降臨する前の死者たちをそこから解き放った」という解釈がある【新約外典ニコデモ福音書】んだって。
発想が似てたのか、まさかその伝説が伝わった?

140字じゃ書き切れないので、その過去記事をこれからリンクで

「ザビエルへの日本人の質問」と「キリスト処刑」を結びつけるある異伝説

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130210/p5


こんな解釈が、一部のキリスト教異端?にあることを聞いた。

とある地獄の一日・・・
ある日、「やつ」は地獄へ落ちてきた。
処刑された一庶民、とか聞いていたから何の警戒もしてなかったが・・・
「お、おい、こいつ・・・」
「なっ、なんだア!?俺たちが罪人をいたぶる根拠となる『原罪』が、こいつにはねえッ!!!」
「そんな馬鹿なっ!!そんな人間なんて、地球上にはただの一人もいないはずだ!どんな善人だってこの地獄に来てるんだゼッ」
「そ、そんなやつがもしいるとしたら・・・『神の子』しかいねえっ」

「そう、ぼくは神の子。なぜ奇跡で抵抗もせず、おとなしく人間の手によって処刑されたのか・・・それはいったん地獄に下りて、ぼくの生まれる前に死んだ人々にチャンスと救いを与えるため!!!」

つぎつぎと地獄の鍵を開けるキリスト!!!
「や、やつをと、止めろ」
「アワワワッ、ダメですう、何しろ相手は無原罪・・・こっちの攻撃はすべて無効です!!」
「うぬぬぬ」

ルシフェル・・・ぼくが生まれるはるか前だが、君の働きには父も助けられたようだね。父からの伝言だ、堕ちても身体は大切に、とね。ぼくもふたたび地上に降り、千年の王国を築いたあと、ふたたび君と出会うことになるだろう・・・ハルマゲドンで!!」

そして、聖書とキリストの教えが説かれる前の死者はみな、地獄から解放されました。だから「キリスト来る前の死者はかわいそうじゃん!」と心配しなくてもいいのです・・・・(完)

まあ、この話自体はよくできていると思う。
「刑務所に秘密の目的でヒーローが、敢えてニセの罪状で入獄する」というオープニングで始まるドラマや漫画も結構あった気がするが、たぶんその元祖だ。

んだけど、この話をでっちあ・・・創・・・発見したときは、まだ地球を東に東に進むと黄金の島や絹の国があるとは気づいてなかっただろうから(笑)。「キリスト死んだの、西暦30何年だよ!!1549年にザビエル来るまで、また知らないまま死んだ人多すぎだろ!!」と突っ込まれたときにどう答えるかはしらん。
ソースはどこか、は学生時代の読書なので実に記憶あいまいだが・・

これに、ブクマがついた。

id:machida77 ちょっと違うけど最後のエピソードは新約外典のニコデモ福音書(ピラト行伝)かな。地獄に降りたキリストがキリスト誕生以前の義人を地獄で救う。教義についてはwikipedia:キリストの地獄への降下


主ハリストス(キリスト)がアダムとエヴァの手を取り、地獄から引き上げる情景を描いたもの。


洋の東西を問わず、「あの地獄にいる人たちはかわいそうだから、誰か何とかしてあげられないか」という発想はあったのでしょうか。特にキリスト教は、リンク先にあるように「聖書とキリストを信じないと救われないなら、キリストの前の時代の人は?宣教師が伝えた地域の、その前の時代の人は?」という問いにも繋がるので切実な問題だ。

しかし、「XXX伝説の伝播」という、もうひとつ別の魅力的な仮説もある……どうなんでしょう、明恵のお弟子さんのこの話と、キリストの地獄(辺獄)への降下は何かのつながりがあるのですかね? さあどうでしょう。

鳥獣戯画展、この前作品の入れ替えがあったけど…見られるのかな?
ふーむ、「場面がえ」をした、とのこと。

http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1707

62 重文 光明真言功徳絵 巻下 1巻
室町時代・応永5年(1398) 滋賀・明王院 前・後期で場面替え

真言ビームを発するお弟子さんを持つ明恵和尚は、もちろんすっごく強い。北条泰時を動かす「灰色の枢機卿」。 浄土門徒に立ちはだかるラスボス。水木しげるがリスペクト。

・・・承久の乱の時、落人をかくまったとして幕府から目を付けられ、秋田城ノ介というさむらいが栂尾の山中を捜索したあげく、明恵上人を捕らえて六波羅北条泰時のもとへ連行した。
北条泰時は上人のことをよく聞き知っていたので、驚いて上人を上座へ移した。そのとき上人は次のようなことを述べている。

「(略)……高山寺三宝に寄進された殺生禁断の地である。鷹に追われた鳥や、猟師から逃げてきた獣は、皆ここに隠れて命をつないでいる。ましてや敵から逃れてきた軍士が木の下や岩のはざまに隠れているのを、とがめられたら自分が難にあうからと無下に追い出すことが出来ようか。
釈尊はその過去世に、鳩の身代わりとなって全身を鷹の餌とされたり、飢えたる虎に身を与えたりしたこともあったという。
それほどの大慈悲心には及ばなくとも、困っている人々を追い出すようなことはしないし、出来ることなら袖の中にも袈裟の下にも隠してあげたいと思っている。また今後もそうするつもりである。もしもそれが政道のために難儀な事ならば、即時に愚僧の首をはねられよ」

北条泰時には返す言葉がなかった。これが縁で泰時は明恵上人と親しくなり、しばしば高山寺をおとずれ……

法然vs明恵の論争史が本になっているらしい - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120303/p4

法然対明恵 (講談社選書メチエ)

法然対明恵 (講談社選書メチエ)

人はいかにすれば救われるか。法然明恵――鎌倉新旧仏教を代表する両者の思想対決は、私たちを根源的な問いへと誘う。現実か理想か。他力か自力か。そして、生と死の究極の姿とは。最新の宗教学の成果を踏まえ、2人の対決の彼方に宗教のアクチュアルな「力」の再生の可能性を探る、宗教のポストモダン

まだ青空文庫ではテキスト化されていないが(予定はあるっぽい)同氏の「親鸞記」で、ほんとにラスボスのような感じで、あの明恵が、念仏批判の「催邪輪」を書いた!!みたいな描写がされてた…と記憶する。

http://www.tokensoft.co.jp/manpo2008/manp0062.html

吉川英治の「親鸞」に明恵について以下のようなくだりがある。

「この上人は、そこらにざらにあるいわゆる碩学とは断じてちがう。満身精神の人だった。学問の深さも並ぶ者がまずあるまいという人物だ。

(栂尾の上人がこういった)といえば、その一言は、思想界をうごかす力があった。しかも、明恵は、めったに言論を弄ぶような人ではなかった。自重して、深く晩節を持し、権力とか、名聞とか、そんなことに軽々しくうごく人でもなかった。」

その明恵が奮然、起ち上がって法然の浄土宗を攻撃した・・・という文をよんで、私ははじめて明恵を知ったわけである

親鸞(一) (吉川英治歴史時代文庫)

親鸞(一) (吉川英治歴史時代文庫)

親鸞(二) (吉川英治歴史時代文庫)

親鸞(二) (吉川英治歴史時代文庫)

親鸞(三) (吉川英治歴史時代文庫)

親鸞(三) (吉川英治歴史時代文庫)


そして水木しげるサンまで、この人に興味津々。フハッ。

神秘家列伝〈其ノ壱〉 (角川ソフィア文庫)

神秘家列伝〈其ノ壱〉 (角川ソフィア文庫)


ここに、もすこし詳しい作品解説がある。ビビビビ。
http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/mizuki00.html