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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

『厳密な基準・条件を設定するより、単純な一括化の方が効率的』な政策って世の中に多いのかも。ユタ州のホームレス対策より

元記事は
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1806B_Q4A220C1CR8000/
ですが、有料などでそこから考察している個人ブログを公開しよう。

http://blog.livedoor.jp/sho923utg/archives/51803664.html

州政府が打ち出したのが「ハウジング・ファースト(家・第一主義)」政策だ。
従来のホームレス支援は飲酒や薬物の禁止といった条件に従うことが前提で、自由気ままに生きる人たちの中には支援をこばむ人も多かった
そこで発想を転換して、何の条件も課さずにまず家に住んでもらうことを優先した
きっかけは財政コストの試算だった。ホームレスの緊急医療や警察出動といった行政経費は、ホームレス一人当たり年間約190万円…(略)住宅を無償提供すれば、治安が改善するなどして行政経費はホームレス一人約75万円ですむことが分かった。
「これまでのホームレス対策は社会福祉や人道援助の発想だったが、じつは経済・財政政策だったのです」。
州のホームレス政策の責任者はそう話す。ユタ州のホームレスの数は…(略)2013年には約500人と4分の1に減少した。(略)入居後、ホームレスにもどる比率は10%未満だという。


ふーむ、面白いなあ…と思ったのは、結果的なホームレスの減少もさることながらmそれが統計をとると「ホームレスがじっさいに街を放浪している時より安上がりだ」という話だった。

自分はこの話に持った興味とかなり似た感じの興味を「ベーシック・インカム」が論壇の話題になり始めたときに持ったことを思い出す。

過去のこの記事だな。

新聞備忘2 もし最低限、食える所得がもらえる社会なら?「ベーシック・インカム」論じた本が出版。毎日新聞で大型書評。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080223/p5

そこで書いた感想。

…「善意の政治のわな」つーかパーキンソンの法則応用編というか、
「親切で善意に満ちた複雑な政治制度」を「不親切だけどシンプルな政治制度」が上回る可能性というか。
これは逆に取るほう、税金のほうでしょっちゅう、それこそ新自由主義に近い立場の人が言っているらしいけど、「福祉を考えるとして扶養者控除だとか必要経費なんとかとか、子ども減税とか、いろんな特典をつけたり、また企業でも輸出促進免除だとかなんだとか、とにかくいろんな優遇措置がある。それは、複雑になればなるほど悪用されやすいし、また悪用されなくても、それをいちいち検証、受け付け、判断していくと徴税官僚組織が膨大になり、そこの人件費などが国庫を消耗させるだけだ、ばかばかしい。極論を言えば税金は一律2割。例外は認めない。こういうシンプルなシステムは、強者に甘く弱者に冷たいようだが、そのシンプルさゆえに一番いい税体系なのだ」
 
なんてな理屈がハイエクフリードマン…というよりその亜流のような人々によって俗論的に言われていたこともあった。これらはラディカルな思想、「天下の暴論」というか、頭の体操・机上の空論として言われていた(現実政治としては2000年大統領予備選でこういう主張をする共和党候補が4番手ぐらいにつけたはず)。
ベーシック・インカムは書評引用部にもあるように、この一律税金論を、払うほう、生活保護や高齢者福祉のバージョンとして考えた…とみることもできて、それはなるほど面白いんじゃないかなー、とは思うのでした。

その書評の部分も再度引用しておくね。元は毎日新聞の同書書評。

ベーシック・インカム―基本所得のある社会へ

ベーシック・インカム―基本所得のある社会へ

意外なことに、市場原理主義的な新自由主義者から賛意の声があがる。BIが保障されるのであれば、最低賃金などの配慮なしに、賃金は市場の自由な調整にゆだねることができるというのである。一方、エコロジストからは、人々を賃労働・生産至上・経済成長からの離脱を促すものとして支持される。


生活保護の問題で「それで酒場に直行したり、パチンコをやる人間がいる!」とかあったでしょう。それもまた、だからといって使い道を監視したり、保護の金額や対象に差をつけたりすると、それを判断する手間=コスト=具体的には職員の人件費、がどんどん増えてしまい、「Who Watches the Watchmen? 」という問題も出てきてしまう。
それぐらいだったら「勝手に使え、あとはしらん。」という感じで一律化すると、行政コストの部分で下がって元が取れる…かもしれないし、そうでないかもしれない。

ここは計算力、試算力が試されるところであり、ビッグデータも腕の見せ所だ。
だがしかし本当に「勝手に使え、あとはしらん」と「不親切でシンプル」な制度にして、死者やトラブルが増えてしまっては失敗ということになる。

こちらのカードの話にも関係するんだよな

大阪市生活保護プリペイドカード化は有害無益 犠牲になる生活保護当事者のプライバシーに配慮せよ――政策ウォッチ編・第92回|生活保護のリアル みわよしこ|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/65565

生活保護費のプリペイドカードでの支給を決めた大阪市に賛否「政治活動費もプリカにすべき」との意見も http://huff.to/1xq4VO7
 
大阪市生活保護費の一部をプリペイドカードで支給…に関するコメント - Togetterまとめ http://togetter.com/li/762427 @togetter_jpさんから

だけどユタ州の場合、条件をつけずに困窮したホームレスには無条件で住まいを提供…という点では一律に近いが、「家賃分のお金の支給」ではなく現物供与のほうが効果的だった、という例になるのかもしれないんだよね。「住む所」といった根本的なところは、現物給与のほうがいいのかもしれないし、ホームレスが定住するということに関わる派生的な問題(近所の偏見など)の解決のために必要なのかもしれない。

いま見つけたツイート

https://twitter.com/akehyon/status/583142438610419713
田畑暁生(Akeo Tabata) @akehyon · 4月1日
原田泰『ベーシック・インカム中公新書を読んでいるが、すっかり説得されてしまった。大阪市では、生活保護の不正受給を取り締まるために全24区に「不正受給調査専任チーム」を置いているそうだが(p109)、その人件費の方がはるかに高いだろう。バカバカしい話だ。

余談だ、本題に戻ろう。
制度を単純化して、監視、管理、選別、条件審査などをなくす…それによって優遇措置などもなくなり、きめ細かい行政はできなくなるが、その単純化されたコストの分だけみながオトク、な制度はほかにあるか。


あたくしは伝聞であるが、ドイツの鉄道に改札はない、とかいう話を聞いたことがあった。
・改札をしないなら、改札の切符切りの人件費が浮く(無人改札前ならなおさらだ)
不正乗車は、たまの抜き打ちの車内改札で抑止する。切符なしのときの罰金は言い訳無用、例外無用で高い額にする。

らしいんだね。
今は無人改札機の導入によって、コスト計算の前提も変わるかもしれないけど、これなんかは「不正を出来る限りなくすため、その防止、監視のコストをかける」「多少の不正は織り込んだ上で、監視や管理を撤廃してその分のコストをなくす」
の競争としてはすっごく分かりやすいかもしれない。

このふたつの方式の厳密な競争とかを、学問的に比較してほしい気がする。

信用乗車方式

信用乗車方式(しんようじょうしゃほうしき)とは、公共交通機関を利用する際、乗客が乗車券を自己管理することで駅員や乗務員による運賃の収受や乗車券の改札を省略する方式[1]。信用乗車制、チケットキャンセラー方式とも呼ばれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E7%94%A8%E4%B9%97%E8%BB%8A%E6%96%B9%E5%BC%8F

一律的な税率の税金については、疲れたしあとで調べよう。
そもそもまだ、フリードマン流の頭の体操であり、世界で実施したり実績が挙がった例はないし…と書こうとしたところであれ?????

ロシアで導入されてるって書いている!!
しかも、「実績が確実に上がった」「ロシアの新興国としての復活はこの制度による」とまで書かれている!!
これ、知らなかった……。

フラット・タックス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9


フラット・タックス(Flat Tax)とは、累進課税とは異なり、税率を一律にした税制。フラット税、一律課税、または均等税とも訳される[1]。1981年、スタンフォード大学のホール(R.E.Hall)とラブシュカ(A.Rabushka)が考案した。
2001年、ロシアのプーチン大統領がフラットタックスを導入した結果、脱税が減り、また地下経済も課税対象として把握されたことで、税収が大幅に増えるという実績を残し[2]、各国がフラットタックス導入を実施または検討している[3]


(略)


1981年に考案されたフラットタックスの議論の背景には、1970年代の経済停滞期のアメリカにおいて、包括的所得概念に基づく所得税の限界や問題点が指摘されていたことがあった。包括的所得税では、現実の課税対象の確定に不明瞭な点も多く、未実現の利得や帰属所得の捕捉ないし評価が困難であった。たとえば、地価経済における所得や、未実現の利得の一つであるキャピタル・ゲインは、実現されなければ課税されない[4]。また、当時の米国では節税コンサルタント・ビジネスやタックス・シェルター(課税逃れ商品)が拡大しており、内国歳入庁 は、商品開発者に報告義務を課して封じ込めようとしたが、業者は次々に新しい商品を開発し当局からの封じ込めを逃れていき、その結果、税制も租税回避商品も複雑化が進んだ。このような所得税の持つ複雑さと曖昧さは、改善すべき課題として認識された[5]。
こうして、1980年代以降は、税率を一律にし、また税務上の手続きを簡素化かつ明瞭にするものとしてフラット・タックスという税案に関する議論が高まった


(略)
2001年、ロシアのプーチン大統領がフラットタックスを導入した。それまでは12%、20%、30%の累進課税制度であった税制(最高税率30%が5000ドル超から適用されていた)を、一律13%の個人所得税率とした。導入した結果、脱税や、とりわけ闇経済の資金が課税対象として把握することができ、また、ロシア社会でも租税回避を嫌う風潮が生まれたとされる。この税制改革によってロシアは税収が大幅に増えるという実績を残した。ロシアの経済復興の主要要因に、このフラットタックス導入があるともされる

しかしだ、世界はいまやピケティ旋風が吹き荒れ「資産への累進課税強化」がホットな話題。格差の問題はどうなるのかね…まあ彼らは「金持ちは累進課税を強化すると、あの手この手の節税、脱税の手段を財をものに言わせてやり始める。それぐらいなら低い税率でシンプルに課税したほうが、実際に国庫に入る実入りは大きい」という答えを用意しているらしい(自分が読んだ本ではそんな感じだった)


ということで、「無条件で、一律に○○○とやれば、それは条件付けをしたときよりコストが安くなってWIN−WINなのでは?」というのは、福祉支給にも税金の取り立てにも、あるいは不正乗車の防止にも考え得るひとつの見方。
ホームレスに住居を与えもすれば、多くの不正乗車客を見逃すかもしれない。超大金持ちも貧乏人も等しく税率13%の社会が生まれるかもしれない。
かっこよくいえば、悪魔の顔も天使の顔も併せ持つ。


ただ、制度を設計する時に、この視点から一度検証の洗礼を浴びせることは、非常に有益なのではないかな、と思いました。