【創作系譜論】
日本は今やファンタジーが完全に「お約束」になり、それをパロディ化するジャンルも確立した。その結実の一つだね。本放送見逃した人、アオイホノオで福田雄一に興味持った人はどうぞ
という、上に書いた
『アオイホノオの福田雄一が、低予算を逆手にファンタジーをパロ…「勇者ヨシヒコ」シリーズが連日放送(ファミリー劇場)』
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150314/p2、
……「勇者ヨシヒコ」シリーズの紹介記事の、最後の一文から続けよう。
んで、1700以上もブクマがついたこの真面目な震災関連記事を、こんな文脈で紹介するのは我ながらなんともだけど…(笑)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/03/11/311-for-the-historian_n_6845278.html
■「日本人的な美徳」の嘘——この震災を経験して、日本という国に対して、日本人に対して感じたことはありますか。
私はそういう考え方を否定する。結果としてそう言わないと説明できないものもあるだろうけど。戦国時代の日本人と今の日本人は同じ気質ですか?
——違いますね。
違うよね。タイムマシンに乗って100年前の日本に戻ったら、生きていけますか?
——難しそうです。
東北の農民の古き良き伝統みたいにトイレットペーパーをやめてお尻を縄でふきますか? 「日本人の気質」と言われるものは、その時々の社会的状況に過ぎないんです。自分の知っている過去20年間くらいのものを、都合よく気質と言っているだけ。
もひとつこれも
『専業主婦が一般的だったのはたった1世代』 - http://i-really.hatenablog.com/entry/20120806/1344228641
専業主婦が一般的だったのは高度経済成長期の数十年、たった1世代でしかないという事実
よくあることなんだけど、今現在の社会的な慣習を永続的なものだとみんな勘違いしちゃうんだよ。
みんなでクルマを持つようになってまだたった1世代。
腕時計をするようになって1世代だが、携帯のせいで売り上げが3分の1に激減
社会人のたしなみと誰も疑ってなかったはずのものが、1世代であっけなく終了……。
自分もトルコの政教分離体制などを引き合いに出して「国民の意識や『常識』を変える(誤字修正)のには20年から30年あればいい。これだけで『ずーっと前からの常識』『以前からの国民性』と思わせるぐらいに意識を変えて定着させることができる」と言ってた気がする。
で、「剣と魔法」「勇者と僧侶と魔法使いと、その敵の魔王」「怪物と宝物」が30年で常識となり、それをパロディにしても多くの層に伝わるようになった。、少なくとも忠臣蔵や国定忠治をパロディにするよりも圧倒的に多くの層にね……
いや、てんぷくトリオとか、すごく歌舞伎、芝居のパロディ多かったのですよ。元ネタが伝わるからみんなパロディをやった。当たり前だね。「こち亀」なんか、国定忠治や金色夜叉のパロディが伝わった時代と、ゲーム・ファンタジーのパロディが伝わる時代、一身にして二世を生きる稀有な例(笑)
この異世界ファンタジー、ぶっちゃけ「ドラクエ」「ウィザードリー」のパロディ作品、設定を逆手にとった作品がどんなふうに発表されてきたか、だれか年表をつくってください。(自分は知らないから、表層的になって抜けがたくさん出てくるだろう)
こう言ったって誰も作らないことは知ってるのだ。どんなにお粗末でも自分で作るしかない。
2007年 ぼくのわたしの勇者学 「斉木楠雄のΨ難」で知られる麻生周一が、ジャンプで1年程度連載。まあ、人気は…ね(笑) 2008年 今日の魔王様 某漫画喫茶で、こういう「ファンタジーパロ作品」が特集された棚にあった。背表紙を撮影して記録してた。発表年はウィキペで調べた 2009年 まおゆう 出版されたのが2010年で、2009年はネットの匿名投稿の時期らしい 2011年 「勇者ヨシヒコ」シリーズ TVドラマ。 2011年 はたらく魔王さま 小説がアニメや漫画になってるのだが、小説が元祖でいいんだよな? 2012年 俺たちの戦いはこれからだ 上と同様、漫画喫茶の特集コーナーから。掲載誌とかよくわからんちん 2012年 魔王様ちょっとそれとって!! 上と同様、漫画喫茶の特集コーナーから。 2014年 ダンジョン飯 個人的には「ひきだしからテラリウム」の人と知って「あーなるほど!」となったです ※この表は、記事のコメント欄と
ブクマ⇒http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/gryphon/20150314/p3
までを含めて、ひとつの表になります。
作ってみて分かった。・・・自分、ぜんぜん読んでないわ!知らないわ!!!
「詳しい人、そもそもはじめから好きで読んでいる人じゃないと、創作の起源や系譜なんて確実にはたどりようも無い」ということがあらためて分かったのである。
また、「たぶんそうだろう」という推測だが・・・ウィザードリー、ドラクエが出た時代はそのまま、日本のTPP前の著作権のあれやアレを逆手にとって(?)半分商業的、半分ファンの趣味的に、本体は真面目な作品をそのままパロディのネタにした同人作品が増えてきた時代じゃないか?
そういうのは元からパロディ自体が目的なんだから「ファンタジー作品の世界設定をパロディ化した」のはそりゃ、当たり前だよな(笑)。そういう裏のパロディが、いよいよ表に出てくるときに、一応登場人物はオリジナルにした・・・ということなのかもしんないすね。
それでも、「まあいいや、自分的には分かった感」も漂う。これ以上、積極的に歴史を埋める努力をしないので、もう少し緻密にたどれる人はやってみてください。(もちろん、何の実益もない)
書影をならべとく
- 作者:柊 裕一
- 発売日: 2009/12/22
- メディア: コミック
魔王様ちょっとそれとって!! 1 (ヤングジャンプコミックス)
- 作者:春野 友矢
- 発売日: 2012/10/23
- メディア: コミック
俺たちの戦いはこれからだ(1) (ガンガンコミックスONLINE)
- 作者:武藤 村石
- 発売日: 2012/02/22
- メディア: コミック
- 作者:和ヶ原 聡司
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 文庫
まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」
- 作者:橙乃 ままれ
- 発売日: 2010/12/29
- メディア: 単行本
- 作者:麻生 周一
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: コミック
- 作者:九井 諒子
- 発売日: 2015/01/15
- メディア: コミック
ちょっと過去記事
「魔王を倒した後の勇者は無職になる」パロディ動画 - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140313/p2
「約束を ひっくり返す お約束」〜魔王と勇者、デビルマン、まどか☆マギカ・・・そして・・・水戸黄門【創作系譜論】 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110903/p3
「うーむ、そういやそうだねえ…」とリンク先を読んで感心して、整理したいなあと思ったのが2011年だから、やはり準備が足りなかったんだよ(笑)
http://d.hatena.ne.jp/kajika_eps/20110820/p3
■魔王ブーム?な理由
29 :イラストに騙された名無しさん:2011/07/23(土) 18:28:22.51 id:DJDi1WIX
・「勇者が魔王を倒す」という基本が、共通認識としてラノベ読者層に受け入れられている
・↑の基本がきわめて単純、かつ必然的な意味がないため、アレンジがしやすい
・「魔王」「勇者」という役割も、実際には空白に等しいため、キャラ作りがしやすい
・既存作品の膨大なストックによってアイデアのネタが多い(四天王とか軍団長とか)
・魔王の時点で、魔王の軍勢か魔王城か、とにかくベースとなる舞台が確定している
30 :イラストに騙された名無しさん:2011/07/23(土) 18:36:46.67 ID:6CrV2a78
魔王と勇者という固定概念を弄繰り回すのがとても面白い
魔王が実は善良、とまではいわないけど庶民的で必死
勇者は正義の名の下に傲慢を押し付ける
最近はこんな流れが多いね
33 :イラストに騙された名無しさん:2011/07/23(土) 20:13:04.47 id:htjuo+4G
ラノベは共通認識である設定をひっくり返すというのが定番
魔王をおとなしく、人が良く、人懐っこいキャラにする
勇者を意地汚く、高慢でズル賢いキャラにする
これだけで、なんとなくストーリーめいたものが見える
要はスレイヤーズ・ゴクドーくんの頃からあんま変わってない
さっそく効果てきめん、もっと充実したリストや考察が見つかる
ブクマより。
id:mizunotori 自分が書いたのはこれくらい。
2ch発の魔王勇者系SSの隆盛と魔王勇者系ライトノベルの増加は関連しているのか? - WINDBIRD http://kazenotori.hatenablog.com/entry/20120302/1330685026
考察togetter
「魔王と勇者モノ」が出てきて親しまれた背景 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/265993
id:hobbling 2015/03/15 11:35
そういえば少し前にウィザードリィはハイファンタジーかパロディか?が話題になりましたね。初期から知ってる者からすれば内輪ネタだらけのパロディで、後期からしか知らないとハイファンタジーに見えてしまうと。http://b.hatena.ne.jp/entry/www.wizardryworld.com/bbs/view/index.aspx?seq=1176
憑かれた大学隠棲:再稼働リプレイスに一俵
@lm700j
@gryphonjapan http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150314/p3 …で思い出したのが
スレイヤーズの呪文から始まるプログラム言語的呪文の起源 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/428351
ご教示ありがとうございます。それを受けて個人的「感想戦」。
まずは読んでいただき、そして情報を教えていただき、ありがとうございました。
感謝申し上げるしかありません。また皆様の知識や分析に感服いたしました。
それを受けてつらつらと。
・表は上のような形で強化している(笑)。我ながらタチが悪いというかずぼらだが、でも実際、上のように試作⇒コメント欄やブクマで補足⇒作り直すより、それらすべてを一覧表と捉える のほうがいいんですよ。この前のこれで、味をしめました。
「同一作者の、複数の作品世界が交錯する事例」のまとめ(改題&集まった情報を追加) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150106/p2
・まず、教えてもらったのはいいが、やはり「土地勘」がなくて、あああれか!的にぴんと来るとかはないです、すいません。
どころか自分、前にも書いたがドラクエ全シリーズやってないんだぜ。(ウィザードリーはやってますが)
なら、そーいうやつがやるなって話かもしれんが、まあそれぐらい知らないから、この「魔王と勇者」パロディの群れに違和感=興味を抱いた、ってことで。というかやっちゃったんだから仕方ない。
・だが、そんな自分が記憶を励ますと、なんか聞いたなー、とひっかかるのが「魔法陣グルグル」という作品だ。なぜ知ったのだろう?と記憶をスキャンすると、確か山本弘氏が怒ってた文章を読んだんだよ!!
たしかこんな話だ(ネタバレ)。
「最終回で彼らは、いよいよラスボスの大魔王と戦う直前・・・になって『やーめた』といって魔王をほったらかして返る。そうして最後は『みんな幸せにくらしましたとさ』で終わる。いくらパターン、お約束を破った斬新な発想をと思ったとはいえ、それはルール違反だろう(記憶による大意)」
…いま、記憶だよりに字にしてみるとけっこうアッパレだね(笑)。これが最初期の「ファンタジーのお約束パロディ」だとしたら、すごい最先端だったのかもしれない。
魔法陣グルグル 新装版 (1) (ガンガンコミックスONLINE)
- 作者:衛藤 ヒロユキ
- 発売日: 2014/02/22
- メディア: コミック
・もう一つ、「今日からマ王」とというのが出てきて、あっと思った。というのはこれ、どういう関係なのか、改題したのか分からないが「今日からマのつく自由業」って作品あったでしょ。
むかしオバQに、「ラーメン食べてる小池さん」のお仕事は何なんだ、というエピソードがあって、そのタイトルが「上にドがつく小池さん」だったのだよ。オバQらが「小池さんはドロボーか?」と驚くと「動画マン」だったという、モデルの鈴木伸一氏をネタにした壮大な内輪受けの回でした(笑)。
http://www.shogakukan.co.jp/fzenshu/1st_lineup/obaq05.html
上にドがつく小池さん(66年26号)
そのタイトルのおかげで「マのつく自由業」と聞くと、小池さんを思い出すという・・・なんの関係もない話だな、これ。
- 作者:喬林 知
- 発売日: 2004/04/28
- メディア: 文庫
・もう少し真面目な話を。「BASTARD!」もブコメやコメント欄で出ましたが、これには驚いた。というのは、自分はこの作品を「パロディ」なんて意識はこれっぽっちも無かったのです。「正統派・王道」だと思ってたんだよ!!!
これは本当に根が深い問題で、「山田風太郎って伊賀の影丸みたい」、という人、「餓狼伝は修羅の門みたいだね」という人・・・。ナンシー関はたしかとんねるずの、秋元康作詞の「情けねぇ」「雨の西麻布」かなんかを聞いて「パロディであることは明白なのに、これを100%純粋に受け止める層もあるんだよな」と書いていたが、まことに同じことを別のジャンルでやっていたものだ。
・海外なんか…いや日本でも、「銀魂」をサムライ・チャンバラ・時代劇の「典型」として受容する層があるぽいよね。まぁこれはBASTARD!と同じでジャンプだと、相当な層が必然的に「最初に接する」○○ものになるので、それがパロディ含みだったらそうなるよと(笑)。
・そしてですね、要は発信源の大きな根っこに「ガンガン」があったと。ガンガンか。分からないわけだ…自分は「ガンガンの存在を、ガンチュウ(眼中)に入れないままずっと過ごしてきた」のですよ。しかしゲーム会社の雑誌ですからね。そこでパロディをやるというのは、古い感覚だと逆にイメージを壊す、とか慎重だったのかもしれないが、そこは時代、あるいはセンスで「片方では王道、並行してパロディ。それでノープロブレム!!」とやったのがたぶん偉かったのだな。それをOKしちゃえば、パチンコ雑誌でパチンコのルールを前提に描けるように、ファンタジー・ゲームのお約束を前提とした上でいくらでもいじくれる。観客が分かってるという前提で描けたのも発展の一因かな?
・そーいえば、またテーマを広げるけど、最近、ある作品(特にシリアス寄り)がヒットすると、姉妹誌、あるいは同じ雑誌で四コマとか、同じキャラクターを学園ものに翻案するとか、そういうパロディをやるようになった気がしますんですが(例:進撃の巨人)、これっていつから始まった風習なんですかね。
商売的にも儲かる、というか計算が見込めるのでしょうねえ。それにやらなきゃ、甲斐族的にというか非TPP的にというか、別のところが勝手に?やって、勝手に人気が出ちゃいかねないものね。それぐらいだったら自分のところでパロディもやって、そっちでも儲けたほうがいい…というのは資本主義のいいところでしょうか。
でも、このですね、『人気の出たシリアス寄りの作品を、自分たちの(姉妹)雑誌でパロディにしちゃう企画の歴史」を、だれかに書き残しておいてほしいもんです。
・自分が書いている、こういう「物語や設定のXXXXという工夫、誰が始めたの?どう変わっていったの?」的なテーマの記事は、この記事にもついている「創作論」、というタグをクリックするか、あるいは、記事内に意図的に入れている【創作系譜論】という言葉でこのブログ内を検索してください。
過去の記事がいろいろ出てきます。「創作論」はやや広め、【創作系譜論】はややテーマを絞ってあります。
・・・・・・・というような感想を追加。なんか、1日分の記事になるような分量をかいちゃったな(笑)
後日さらに資料追加 この方面は当方さらに不案内
ソードアート・オンラインのヒット、二次創作SS・Web小説の歴史、そして最近のラノベで流行するファンタジーについて - Togetterまとめ http://togetter.com/li/702831 @togetter_jpさんから
「小説家になろう」の異世界ファンタジーの源流は『ゼロの使い魔』? - Togetterまとめ http://togetter.com/li/798571 @togetter_jpさんから
さらにのち、この系譜につながる某大ヒット作品の作者の申告漏れが報じられた際
黒豹の鎮魂歌 - 男の魂に火をつけろ! (id:washburn1975 / @washburn1975) http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20150413
ぼくはずいぶん昔から「ドラクエもの」の漫画や小説が苦手で…
とあっさり「ドラクエもの」のひとことで定義され、このエントリの存在意義そのものが大きく揺らいだのだが、それはまた別の話(笑)