日程などはこの前でお伝えしたとおり。
11月7日、池袋ジュンク堂で中井祐樹vsプチ鹿島トークショー - 見えない道場本舗 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141102/p1
さて、今回のトークショーのきっかけとなった中井氏の初著書「希望の格闘技」とは。
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』『七帝柔道記』の大宅賞作家・増田俊也氏が大絶賛!
- 作者: 中井祐樹
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2014/08/07
- メディア: 単行本
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格闘技界のレジェンドが初めて語る勝負哲学。
いま振り返る伝説のゴルドー戦・ヒクソン戦、「折れない気持ち」のつくり方、わが「最強」論、教えることと学ぶこと、武道とスポーツ、教育としての格闘技、プロとは何か、幸福論……。
その言葉の射程は格闘技にとどまらず、あらゆるスポーツ、そして人生にまで広く、届く。
なぜなら、闘うことと生きることは、同義だからだ。
格闘技で人生を肯定し、格闘技で人生を豊かにしたい、全ての人に捧げる一冊。
巻末に増田俊也氏との特別対談収録。
氏の道場ネットワーク「パラエストラ」会員向けにフェイスブックなどで書いた文章などが基となっている。
序章は「私の闘い」と題して伝説のVTJ95を中心に、北大で七帝柔道に入ったこと、目の負傷でMMAを引退することになったあと、柔術に転向してそこに打ち込むまでの話なども描かれている。
ほかの、氏がそんな競技者、指導者としての人生で考えた、極端に言うと「箴言集」といっていい。
章ごとの文章は数ページぐらいの短文で、読みやすい。
少し引用して、感想を述べたい。
あの試合を振り返って
VTJについてはたくさんの記録があり、
http://hujudo.sakura.ne.jp/vtj.html
という有名な文章もある。だから新事実がいろいろ出てくる、というような証言集ではないが、当時者の証言はそれでも面白いディテールに満ちている。
ヒクソン戦について、彼はこう語る。
パンチやキックは出しませんでした。いや、実際は出せなかった。手首をつかまれ、それが切れずに「中心」が崩された。あの時点で終了だったのでしょう
『「中心」が崩される』……当事者の証言というのは面白いものだ。その後格闘技界にも、タックルを切る、切らないの攻防に焦点が当たるようになり、MS-IMEの単語登録にも載っていない「体幹」という言葉が頻繁に使われるようになった。
戦前、私は口に出したかどうかは覚えていませんが、「ヒクソンまでは100パーセント行くから」と思っていました。裏を返せば、これは勝つ心構えではありまえん。脳は全く、イメージどおりの結末を導くものです。
ふーむ「佐々木小次郎敗れたり。なぜ鞘を捨てた」というのも、あながち講談ではなさそうだ。
「流派・団体を超えて」で思い出した「中井革命」。それが無ければ…
第一章の「流派・団体を超えて」という文章から。
格闘技は考え方の違いでいくらでも細分化し、いろいろな流派やルール・団体が生まれてきた。私はその考えの一つひとつを尊重したい、といつも考えている。尊重することのひとつの具現化は、そこに参加することである。
私はかつてパラエストラ東京設立時、格闘技専門誌のインタビューで「全団体のオフィシャルジムになりたい」と発言したことがある。
この一文で思い出した。
中井氏がパラエストラ(当時パレストラ)を創った時、「このジムからパンクラシストを出したい」と発言したのだった。格通のインタビューだったかな。
いまだったら、フツーすぎて何の引っ掛かりもないでしょ。
だが当時はそれを読んで
工工エエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエ工工工!
だったんすよ!!!!!
というか、そうじゃなかったらこんなインタビュー記事の一節を覚えてないわ。
ゆとり世代は知らないだろうかな。当時の修斗とパンクラスの関係はだね……自分は当時のネットにUPされた文章、それなりに「名前をつけて保存」している。
修斗が2002年4月30日に発表した見解とかね…。
そんな中で「ジムからパンクラシストを出したい」と言ったのは、静かなる革命だった。
そして実際にパンクラスにパラエストラ勢はつぎつぎと登場し…登場し、というか制圧して、所属選手の勝率で競う「ハイブリッド・リーグ」でも優勝したことがあるはずだ。ちなみにホームチームのパンクラスIsmのリーグ戦績は(略)。
※コメント欄より。
ハイブリッドリーグは2011年と2012年に実施されましたが、優勝はそれぞれ高田道場とロデオスタイルですよ。
さらに言えば…これはもう一つのありえた「現在」である。
「今度の週末は、お前柔術の練習来る?」
「その日はA道場に出稽古やね」
「エッ、まずいよ。あそこはXXXから黒帯もらったとこだろ?うちの系統と違うんだから、出稽古とか常識はずれだよ」
……なんでも、あのオープンで陽気な人が多いといわれるブラジルで、武ラジリアン柔術はそういう黒帯伝授で作られた集団、氏族的な縄張り争いや張り合い方が厳しく、オープンに道場交流をする日本の光景を見て驚くのだという。
これはなぜか、といえば、基本的には「この国に中井祐樹がいた」という説明で終わる。「日本の漫画の隆盛は、手塚治虫がいたからだ」というようにね。
革命家ということなら、真っ先に鎌倉時代の北条泰時を思い出す。
「正当性」が正統性を超えた例…が北条泰時の「御成敗式目」だった - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110814/p3
いちばん成功した革命家は、そもそも革命したことにすら気付かれない。知らないうちにスタンダードを握ってしまうものなのだ。
いくつかの箇所では、「この”中井革命”の経験から話しているのかな?」と思うところもある。
最後にこのテーゼを紹介して終わろう
増田俊也氏との対談が最後に収録されているが、こういう言葉がある。
失礼だと思うんですけども、僕は「格闘技、全部同じですよ」とも言う。ストラクチャーが同じだからです。要は型をやって、次戦で仕えるかどうか試して、実証して、身体にいいかどうか件t証して、それを繰り返しているだけじゃないですか。全部、同じです。
「いや、基本のやり方は違う」。
いや、それは各人の考え方の違いだから。
「一にして全、全にして一」と、錬金術師の言葉じゃないが。
この前に「同じ」という言葉には
敬意も
意地も
差なんてどうってことないという感覚も
ぜんぶ同包されている、という説明もある。
これをどう解釈すべきか??……いろいろ自分なりの妄想を組み立てることもできるが,
もし可能な人なら仕事帰りに、本日のジュンク堂に立ち寄ってヒント、鍵を探してくるのがいいだろう。
そしてこの本も買い、サインをもらうとよろし。
プチ鹿島「教養としてのプロレス」を読む(双葉新書)〜「プロレス的」の再定義に挑む革命の書 -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140903/p1
- 作者: プチ鹿島
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2014/08/06
- メディア: 新書
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ジュンク堂では新書は3階、プロレス・格闘技関連書籍は2階。雑誌のバックナンバーも多数あり。
KIMURA vol.0 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~
- 作者: 増田俊也,原田久仁信
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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漫画は地下1階。
解説の対談記事はこちら。
原田久仁信×増田俊也
大河漫画連載「KIMURA」を語る。
(「ゴング格闘技」2013年8月号での対談)
http://blog.livedoor.jp/masuda_toshinari-about/archives/30254680.html