(当初「浦澤」となっていたのを直しました。どこかの時点で、そっちが正式表記だという変な勘違いをしておりました)
http://blog.livedoor.jp/roma_latina/archives/1399124.html
アレクサンダー大王死後は、その広大な大王領を巡り……大王の副官らの手で分割統治という道を辿った。
(略) 紀元前322年に起きた「ラミア戦争」を皮切りに展開された大王領を中心とした後継者争いの戦争を、歴史上では“ディアドコイ戦争”と呼んでいる。
このマクラの引用に、あんまり意味は無い。
「怪物」細野不二彦、なんだこのパワーは!!?
まず、ここから行こう。
スピリッツ編集部 @spiritsofficial
https://twitter.com/spiritsofficial/status/510798457854898177
【再掲】『細野不二彦短編集』は重版2刷! 好評発売中です!
多数連載を抱える細野不二彦先生が、職人芸のように仕上げた短編が詰まっていますぜ!
『アオイホノオ』世代にも、いま漫画家を目指す世代にも、手にとって頂きたい1冊です!ギャラリーフェイク・単行本未収録作品も!
- 作者: 細野不二彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/07/30
- メディア: コミック
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小学館で著者初の短編集です!
多作な細野不二彦先生がこの14年間、長期連載の合間をぬってビックコミック、ビックコミックスペリオール、スピリッツなどの各誌で発表した読切作品をまとめた<珠玉の1冊>です!
内容は、仮想世界と現実生活が交差する恋愛モノ、超がつくベテラン刑事が活躍する刑事モノ、そして、あの名作の読切!『ギャラリーフェイクANNEX』(単行本未収録)など、読み応えがあるものばかりです!
細野氏の職人的な「匠の技」を1話1話に感じさせます。著者のファンならずとも是非、細野ワールドに飛び込んでみてください!
この短編集が出た月は、傑作「電波の城」が23巻、最終巻が出たばかりだった。
自分は2013年度の傑作10選に選んでいるが、それをそのまんま
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140702/p2
から一部再録させてもらいます。
- 作者: 細野不二彦
- 出版社/メーカー: 小学館
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(前略)…23巻という長丁場ながら、ちゃんと始まりから終わりまできっちりと描いて終わらせましたよ。不必要な引き伸ばしも、はしょりも無かったと思う。
(中略、あとで紹介します)
細野不二彦、もうベテランというか超大家のはずだが、もう先々週から「商人道(あきんロード)」という新連載をはじめてやんの。(後略)
そーなんだよ。
しかも!!!!!!
舞台は商社! 灼熱の企業ドラマが始まる!
- 作者: 細野不二彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/09/30
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「シェールガスを掘りにいくぞ!」
中堅商社、ヒノマル物産で働く大佛晃人(おさらぎ あきひと)は、若手ながら24時間働くモウレツ型、いわば絶滅危惧種の商社マン! そんな彼にとって、社内に数々の伝説を残す熊代常務は目標といえる存在であった。
あるとき、上司のミスをなすりつけられ、閑職に追いやられる寸前で、彼は熊代常務からシェールガス・チームに社内ヘッドハントされる。そのプロジェクトは次世代型のビジネスであり、彼にとっては夢の実現の第一歩であった!
「オレもいつか、ヒノマル伝説つくりてえ!」
しかしプロジェクト提携のため、中国・北京に飛んだ彼らが待ち受けるものは、魑魅魍魎とした中国人の三国志・四国志さながらの世界! そして日本人同士の足の引っ張り合いにも巻き込まれ、先行きは前途多難に......
- この世には、商社マンにしかできないビジネスがある -
大佛たちは果たしてビッグビジネスを、成功に導くことができるのか!?
商社を舞台にした灼熱の企業ドラマが始まったばかりである!
【編集担当からのおすすめ情報】
商社マンは、いまもなお就職人気ランキング上位の職業です。希代のストーリーテラー・細野不二彦が、美術業界、テレビ業界の次に選んだ題材は最先端のエネルギービジネス!現場にも足を運び、丹念に取材をして作り上げている、作者渾身の企業ドラマです!
主人公がとにかく熱いです!
商社を舞台にしたストーリーマンガは意外と少なく、大学生から社会人まで、ビジネス現場の“熱”が伝わってきてスゴい! と評判の作品です!
おい!!!今月末にもう1巻が発売だよ!!!!!!
なんだよそれ!!!まず単純に、仕事量的にオカシイだろ!!!!!
けっきょく、
(定期的に中断をはさんだとはいえ)2006年-2014年にわたった、23巻ぶんの長期連載終了⇒最終単行本発売⇒新連載スタート⇒単行本1巻発売(その期間2カ月)って
…準備期間とかどうしたんだよ。取材の成果はどういうふうにまとめたんだよ!!
この人が体力的にもバリバリの、脂の乗り切った若手とかいうならともかく、「アオイホノオ」では、1980年初頭にホノオモユルが「俺のやりたかったこと(かっこいい絵柄でSFギャグを描く)を先にやりやがった!!』となぜか上から目線で悔しがる、そんな存在・・・つまりは大ベテランだがな。
それがこれだ。まさに怪物…。
おまけにこの作品、「中国に埋蔵されているシェールガスの開発」をテーマにしているため、必然的に「中国の上層部の腐敗と権力闘争、そしてそこから生み出される、ある種の善と悪が一体となったバイタリティ」が描かれている…そのカウンターパートとなる日本人商社マンのそれも含めてね。
連載に前後して「反腐敗」を掲げての中国上層部の対立や危機意識はますますヒートアップし、「周永康事件」も起きた
http://bylines.news.yahoo.co.jp/endohomare/20140804-00037945/
こんなにタイムリーな題材に切り結ぶというのもまたすさまじい。
いや!!!まだ驚くことがあるぞ!!!
http://natalie.mu/comic/news/122153
細野不二彦&長尾謙一郎、月スピに新作読切
2014年7月27日 18:36 76発売中の月刊!スピリッツ9月号(小学館)には、細野不二彦と長尾謙一郎が読み切り作品で登場している。
細野の「恋するATAMI」は、熱海を舞台に童貞男子の恋を描くラブストーリー。現実世界の女性に絶望し、ゲームの女の子との拡張現実を楽しめるイベントを訪れた彼だったが、心は満たされない。時を同じくして熱海には、彼がもともと憧れていた元同僚の女性がいた。なお7月30日には細野の短編集と、「電波の城」最終23巻が同時に発売される。
この作品は「短編集」にそのまま収録されていて、そういう点では仕事量的には一石二鳥だったかもしれないが、逆に言うと、「短編集の一本は実質かきおろしに近かった」と言える。
妖怪のしわざだよ、こんなん……。
ちなみに内容も「AR」「恋愛ゲーム」なんて、作者の実年齢を考えれば秋本治なみにトレンドを追って、最前線で勝負しているところもおもしろい、というよりおそろしい。
いまブクマにて
id:otokinoki
アオイホノオを見ると、大阪のちょっとズレたオタク歴史観を磨けるが、細野不二彦を追うと、東京の小賢しい少年の絡みたオタク歴史観をかいま見られる。
というコメントをもらったが、「あどりぶシネ倶楽部」で、当時の「オタク批判」をさらに批判する作品を描いたり、ギャラリーフェイクで、あのオタク的文化を「現代アート」として売り込むアーティスト…、「村上隆」批判としかいいようがない作品を描いたりと、常にそういうものに寄り添う意識があった。そしていまだに。
…もうこれで十分か?おれも十分だと思うが、まだあるんだからしょうがねえ。
http://webaction.jp/action/
タクシー業界人情コメディ!!
ヒメタク
細野不二彦
関東地方の蛇ヶ原市にある児見山タクシーは、
様々なはみだし者の運転手が集まり、地元民からは
"ゴミ山タクシー"と呼ばれていた。そんなタクシー会社に
新人女性運転手、陽芽<ひめ>がやってきて…!?
しかもこれ…読みきりとかじゃなく「月イチ連載」。
細野不二彦、タクシー業界描く月イチ連載始動 - コミックナタリー http://natalie.mu/comic/news/121258
「細野不二彦」は何人いるのか、とかが気になってきた。
そして「手塚治虫継承戦争」(vs浦沢直樹)という、勝手な見立て
この話は、当ブログでは何度も書いているので聞き飽きた方もおられるでしょうが、そこは勘弁してもらって。
上の「2013年度漫画十傑」を書いた際の一文を再紹介。
「手塚治虫の後継者」と言って違和感が無いのはいまや細野不二彦、浦沢直樹の2強な気がするのだが、きっちりと話を尻すぼみにせずに終わらせる…という点では細野氏のほうがやや優勢か。それは手塚の後継者として有効か不利かはなんともだが(笑)
あたしはやや連発気味に「藤子・F・不二雄テイスト」という言葉を使うのだが、「手塚治虫テイスト」という言葉は上の二人以外にはあまり使わない。
それは主に2点あって、
(1)藤子・F・不二雄でさえ手塚の影響下にあるほどの広がりがあり、それゆえ今の世代の漫画家は「直系」というより、間に藤子F氏、あるいは石ノ森章太郎氏、永井豪氏、松本零士氏のような存在をはさんだ「孫弟子」的な存在が多くなっていること。
(2)「ブラックジャック創作秘話」が「このマンガがすごい!」の1位になり、ドラマ化されたように、現在の「手塚治虫」像は作品だけでなくその異様なまでの創作量、情熱、こどもっぽい競争心…なども含めて作られていること
がある。まあこんなのが理由になるのか、客観基準はわからないけど、個人の感覚として。
だが。
近年、意図的に?「手塚治虫の後継者たる」というイメージが膨らんだ男がいる。
それが「浦沢直樹」だった。
なんでそうなるのかといえば、絵柄が「劇画」ではないが、いわゆる「アニメ絵」といわれるものではないという中庸性、ストーリーが、風呂敷の最後のたたみ方は別として(笑)、骨太かつ重厚な作品であること、「21世紀少年」などがシリーズで映画化もされてヒットし、「巨匠」という扱いになったという事実…そして何よりかにより、手塚治虫の遺族から正式な許可を受けてのリメイクのさきがけとなった「PLUTO」を描いた、ということにあります。
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ほかと違って「浦沢直樹が」という主語が、「手塚治虫作品を」リメイクするという目的語より大きいか、あるいは同等だったというところがある。
そして、その後に取り組んだのが「ビリーバット」でしょ。
これはリメイクではないけど、時を越える超自然的な存在を狂言回し的に使って、いろんな国、いろんな歴史(実在の人物も絡む)をオムニバスのように紹介しつつ、そこに一本の線がつながっていく…という作品だった。
すると、真実か勝手な周囲の想像なのか……
「浦沢直樹は、ついに意識的に、手塚治虫の”直系の”後継者たらんとする野望を抱き始めた。だからリメイクの形で自分流の鉄腕アトム『PLUTO』を描いた。その後に、浦沢流の”火の鳥”である『BILLY BAT』を描き始めたのだ…」
- 作者: 手塚治虫
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これは私の見立てではなく、どこかで読んだものなんだけど、本人や周囲の意識がどうであろうとも、こう見立てたほうが面白いと思う(笑)。
なので、それに乗っかるのである。
そしてのっかった上で
「だが、その浦沢直樹の野望に立ちふさがる、もう一人の王位継承候補者が細野不二彦だった。彼もまた、自分流の『I・L』『奇子』として、ミステリアスな悪女を中心にしたサスペンスドラマ『電波の城』を描いた。そして、細野流『グリンゴ』として『商人道(あきんロード)』を、細野流『ミッドナイト』として『ヒメタク』を描きはじめた…しかも、どうだ、このぐらいの仕事量をこなしてこそ手塚後継者だ!と見せつけるために同時連載している」
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■追記
ブクマでも語っている人がいたので思い出したけど「ギャラリーフェイク」=細野版ブラックジャック、という見立ても追加できるんだよね。
同作品の最終回のとき、そういう話をちょっと書いてます。
ギャラリーフェイク、突然?の終了・・・フジタが残した一連の「名勝負」 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050201/p2
そもそも今、日本の漫画界では『ブラックジャックもの』というジャンルができている、という普遍的な話につなげてたりする。
いや、こう考えたほうが面白い、という見立てです見立て。あくまでも(笑)
だいいち、これは○○版の手塚「XXXX」リメイクだ!というのは一種の「バーナム効果」であって、どんな漫画家の作品でも、手塚治虫の膨大な著作リストをひもとけばこじつけ可能だ。
バーナム効果(バーナムこうか、英: Barnum effect)とは、誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう心理学の現象。
(略)
被験者に何らかの心理検査を実施し、その検査結果を無視して事前に被験者とは無関係に用意した「あなたはロマンチストな面を持っています」「あなたは快活に振舞っていても心の中で不安を抱えている事があります」といった診断を被験者に与えた場合、被験者の多くが自分の診断は適切なものだと感じてしまうが、この現象を「バーナム効果」と呼んでいる。
自分で今までのアレをすべてひっくり返すようなツッコミをしても世話が無いのだが、そもそもの「細野不二彦の仕事量と、その質がこの年齢になってからものすごい。まるで手塚治虫のようだ…」という話の強調にはなったから、まぁいいや。
皆さんも勝手に、手塚治虫=アレクサンダー大王の後継者をめぐる漫画家の「ディアドコイ戦争」の妄想を拡大させてくださいませ。
この二人、という見立てにはけっこう自信があるけど、もっと意外な別人こそが、『見立て』の角度を変えることで「手塚治虫の真・継承者」と言えるのかもしれない。
この続編的記事あります。2017年に始まった漫画連載を受けてのもの
再掲載
— gryphon(まとめ用RT多) (@gryphonjapan) 2017年5月1日
鉄人漫画家・細野不二彦の新作は「大人の日常居候SF」? この男、まじで「平成の手塚治虫(+W藤子)」になる気か? - 見えない道場本舗 (id:gryphon / @gryphonjapan) https://t.co/iXNRCVcBx5
鉄人漫画家・細野不二彦の新作は「大人の日常居候SF」? この男、まじで「平成の手塚治虫(+W藤子)」になる気か? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20170302/p6