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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ラマダンを守りつつ戦うムスリム・大砂嵐。だが「すべてが神道神事」ともいえる相撲の各挙措は?

ラマダンって今日だか明日あけるのか…とにかく間もなくだそうです。

この行事、大砂嵐関のおかげで一気に有名になりましたですね。
ちょうどぴったり、千秋楽まであるみたいで。

千秋楽までラマダン 大砂嵐「水飲めないのはきつい」
大相撲名古屋場所初日 (7月13日 愛知県体育館
http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2014/07/14/kiji/K20140714008560520.html
Photo By スポニチ
 エジプト出身で、イスラム教徒の大砂嵐がラマダン(断食月)期間中ながら好スタートを切った。

 玉鷲を相手に強烈な右のかち上げで先手を取ると即座に左からはたき込み。千秋楽までラマダンの期間と重なっており、日没後まで食事を取ることも水を飲むこともできない。午後5時を回っていた取組後の支度部屋では、さすがに「今何時?あと2時間8分か…。食べるのは普通だけど、水が飲めないのはきつい」と両足を震わせていた。

大砂嵐、断食月とがっぷり四つ 名古屋で試練の15日間
http://digital.asahi.com/articles/ASG7P5G1JG7PUTQP01K.html

「腹減った。頭がふらふらする」。場所5日目、17日の取組後の支度部屋。横綱初挑戦で鶴竜に勝った大砂嵐が口にしたのは、初金星の喜びよりも空腹のつらさだった。
(略)
 大砂嵐は取組後、愛知県稲沢市の宿舎に戻る車中で日没を迎えると、すぐにコンビニで飲料を買って一気飲み。宿舎では自らカモ肉のフライやエジプト料理で定番のモロヘイヤスープを作り、普段より多めに食べる。夜明け前に前夜の料理を温め直して腹を満たす。昨年はラマダン中に体重が7キロも減ったため、今年はご飯にバターを混ぜるなど、カロリーが減らないように心がける。

そういえば、一昨年はロンドン五輪とも重なってたねえ。
エジプト出身タレント・フイフイ氏の、こういうツイートもあった。

https://twitter.com/FIFI_Egypt/status/492262717525221377
フィフィ ‏@FIFI_Egypt 7月24日
連敗止めた大砂嵐、日が昇っている間は一切の飲食を断つラマダン(断食月)で体力の心配はありますが、精神力が鍛えられるアスリートも多いんですよ。また、断食は強制でなく本人の意志に委ねられています。頑張れ!てか、浴衣にピラミッドって可愛い♪ pic.twitter.com/9KLpT9u1cA

しかしそんな中でも、大崩れするどころか2金星を含めて現在6勝7敗。アッラーの加護はやはりあるのでしょうか…

さて本題。そんなムスリムの戒律と、他の相撲の所作≒神道神事の関係は?

まず

http://jmaweb.net/free/aboutislam
イスラームの根本教義とは、アッラーが、万物の唯一の創造主であり、彼のみが森羅万象を司っており、何物もその意志なくしては一瞬たりとも存在し得ないことを悟り、その命(めい)のみに服従し、唯神のみに崇拝を捧げ尽くすことに他ならない。そしてそれこそがイスラーム信仰告白句「ラーイラーハイッラッラー(アッラーの他に神はなし)」の意味なのである。

で、昨日も紹介した内館牧子氏の、横綱審議会委員会時代の記録『「横審の魔女」と呼ばれて』より。

「横審の魔女」と呼ばれて

「横審の魔女」と呼ばれて

ここに朝青龍が左手で手刀を切る、うんぬんという話題がでています

双葉山が理事長のとき、1966ねんに手刀の規則が明文化されています。
軍配に向かって左・右・中の順で切る。
左が神産巣日神(かみむすびのかみ)、右が高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、中が天御中主神(あまのみなかぬしのかみ)で五穀の守り三神に感謝する礼だとされていますから、心(という字を書く)というのは間違っています。心の書き順は左・中・右ですしね(88P)

私には、「神事にからんだ部分だけは、断固譲らずに次の世代につなげていく必要がある。土俵の女人禁制は変革すべきところではなくて、保守すべきところだ」という思いがありました…(略)武蔵野美術大学記号論を学びましたので、卒論は「相撲の所作で検証する降神」というテーマだったんです(p17)

たとえば土俵の周囲に四色の「四本柱」があります。古来から、日本には四本柱を立てて上部をゆわえると、そこに神が降りてくるという宗教観があります…((略)、いまは物理的な柱はないが)協会は四色の「房」にして残したんです。東西南北を結界し、春夏秋冬を結界する房を残したことによってあそこには今も厳然と『柱』がある。(P19)

ことほどさように、大相撲はあちら、こちらに(神道の)神がおわす。
見る人から見れば「偶像崇拝」まみれ、ともいえるだろう。



では、どういうことなんだろうか。
私的な結論としては、

神社とイスラーム-http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120517/p4
 
ラマダン、女性の髪、スポーツ参加、同性婚…宗教間、或いは同一宗教間の違いについて-http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120811/p3
 
お寺に座禅を組みにいった、トルコ人(※ムスリム)の話。(毎日新聞「発信箱」) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121102/p5
 
宗教における「見なしの自由」を擁護する…彼の為でなく、我が為でもなく。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111109/p3

という、当ブログの過去記事の正しさをますます補強してくれるよなあ、という自画自賛に落ち着くのです(笑)
大砂嵐関が、ラマダンはムスリムとして、(明らかにスポーツ的には振りであってすら)守らなければいけない戒律だと考える一方で、降神の四本の房で結界された土俵にあがり、協会が「五穀の守り三神に感謝する礼」だと明確に定めている手刀を切って懸賞金を受け取っていても、当人が問題ないと思っているのなら、それでいいのでしょう。


全ムスリームが彼に服従する義務がある(らしい。少なくとも当人にとってはそう)IS国のカリフ・バグダーティとかの解釈はまた違うのかもしれないが、別に大砂嵐関がそれに従う義理もない。


さて、あと二日。勝ち越しなるかならぬか。
もし今回も勝ち越して、彼が今後三役や横綱を狙えるなら、ラマダンを場所中も守る敬虔さを受けて、四股名を「神砂嵐」としてほしいな、と個人的には思う(アッラーは「神」かというのも、まあいろいろと議論の余地はあるのだが)。


この場合、たんにワムウっぽくてかっこいい、というだけなんだけど(笑)