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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「可愛い魔女(魔法少女)」は日本生まれ?研究書「少女と魔法」が出版される(〜副題:結局横山光輝が天才なのか?)【創作系譜論】

えーと、この本の書評が2013年7月7日の朝日新聞書評欄に掲載されています。
http://book.asahi.com/
http://book.asahi.com/reviews/date/nextweek.html
朝日は果敢に(無謀に?)ネット閲覧の有料化に取り組んでいるけど、読書面は無料記事が多い。ただたしか、木曜日掲載かな?木曜日になればこれから紹介する書評の原文が読めるという前提で(後段に追記アリ)、要約抜粋.
 
・日本の魔法少女アニメ番組は40年以上も放映されている。これは世界的にもまれなメディア文化。
・西欧では魔女は成人女性の力、美、知の象徴=恐怖の対象。いい魔女でも白人の美女が定番
・しかし日本では「魔女と少女の合体」が生まれ、かわいらしく活発な「ガールヒーロー」になった。
・元祖?の魔法使いサリーはおしとやかで、静かな説得がきかないときに魔法を使う。そして最後は自己犠牲で友を救う。
・魔法とは「ガールヒーローが必要以上に男性化しない」ための「安全な武器」だった。
・しかしこういう優等生像は変遷する。
・そもそも成人女性でなくなぜ少女なのか。セクシーな女性キャラが大抵敵役なのはなぜか。
・その後「クリミーマミ」「セーラームーン」「プリキュア」などが論じられ、「女性同士の絆と母性の位置づけ」が語られる、云々。

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

なぜ女の子たちは「魔法少女」に魅了されるのか?

少女が魔法を駆使して大活躍する「魔法少女」アニメというジャンルが日本では40年以上続いている。本書は、それらのアニメを女性性やジェンダーイメージの観点からとらえ、日本の女の子たちがどのように理解し、共鳴し、消費し、利用してきたのかを、社会文化的文脈をふまえた詳細な作品分析と視聴者へのインタビューにより明らかにする。
著者について
須川亜紀子(すがわ・あきこ)
関西外国語大学国語学部専任講師。専攻=メディアとジェンダー・コミュニケーション学、文化研究。
共著書に『World Cinema5 特集:キアヌ・リーヴス』(勉誠出版)などがある。

※【追記】現在はAsahiブックコム、月曜日には既に日曜書評面の記事が公開されるようです!上で抜粋した書評の原文はこちら
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013070700007.html

 

「文化の元祖さがし」の一例として

魔女だか魔法少女となると、昔夕ご飯のときに再放送されていた「サリー」からいきなり「魔法少女まどか☆マギカ」にすっとぶ(要は全然見てない。姉妹いなかったし)小生が、この本に興味をもって紹介するのは、「キャラクターや物語パターンのルーツ探し」が大好きだからだ。
この前、意外なほど多くのひとに読んでいただいたこのシリーズと同類ですね。

明智光秀は「常識的、良識的な保守派」というイメージの真偽について(Togetter)
http://togetter.com/li/523680
■歴史上の人物の”パブリック・イメージ”を確立させたフィクション史について〜明智光秀を例に
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130625/p2
■(続報)「美の世界で秀吉と戦った千利休」というパターンの元祖は野上弥生子「秀吉と利休」か
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130627/p3
■「千利休の描かれ方の歴史」さらに続報。元祖は海音寺潮五郎? そしてさらにその前史が・・・
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130629/p2

こんなのも書いたな。
■「約束を ひっくり返す お約束」〜魔王と勇者、デビルマンまどか☆マギカ・・・そして・・・水戸黄門
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110903/p3

女性キャラクターというのもポリティカルコレクトネスの立場から描き方が変わったり、逆に「今までのパターンを正反対にしてみっか?」というだけで描き方変わったり、結果的にそれが一致したり(笑)とあるので、分析もたいへんだ。
過去にこんな本があったっけ。

戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)

戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)

ナウシカセーラームーン綾波レイ…日本の漫画・アニメには「戦う少女」のイメージが溢れている。筋肉質なアマゾネス系女戦士とは全く異なり、「トラウマ」を持たない可憐で無垢な戦闘美少女。この特殊な存在は、果たして日本文化のみに見られる現象なのか。彼女たち「ファリック・ガールズ」の特性と、それを愛好する「おたく」の心理的特性を、セクシュアリティの視角から徹底的に分析する。

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

著者からのコメント
紅一点。正しくは、萬緑叢中紅一点。かみくだけば、男の中に女がひとり。戦後生まれの子どもたちにとって、「紅一点」といえばテレビのヒーロードラマがまず思い浮かぶだろう。『秘密戦隊ゴレンジャー』にはモモレンジャー、『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊には友里アンヌ隊員。そして、私たちは学んだのである。女の子がすわれる席は、ひとつしか用意されていないんだな、と。そんな「紅一点の女」を中心に、戦後の子どもメディアを彩ったヒロインについて考察してみたのが本書である 。
(「はじめに」より)

「美少女」の現代史 (講談社現代新書)

「美少女」の現代史 (講談社現代新書)

著者からのコメント
 この本は、以下のような疑問を手がかりにして、書き進められました。
■なぜ宮崎駿は、あんなに少女ばかりを主人公にしてアニメを作るんだろうか?
■最近よく聞く「萌え」っていう言葉は、結局のところ何なんだ?
六本木ヒルズにぶら下がっていた巨大なまんがっぽい絵の現代美術のオブジェって、もしかしてすごく恥ずかしいような気がするんだけど、気のせいだろうか。
■「Z」以降のガンダムは、なんとなく見るのが辛いのはなぜだろう。
■ギャルゲーをプレイしていると、なぜか昔の少女まんがを思い出してしまう。
吾妻ひでおは、やはり歴史的にきちんと評価されるべきじゃないだろうか。
■小説はあまり読まないが、村上春樹はなんとなく読んでしまうのは、なぜだろう。
■最近のまんがやアニメや小説では、なぜあんなに「妹」がもてはやされるんだろうか。
等身大フィギュアはともかく、ラブドールはさすがにヤバイような気がするんだが、行ってしまっていいんだろうか。
■「ほしのこえ」を作ったのは男性なのに、なぜ女性の一人称で話が進むんだろうか。
■昔「男おいどん」を読んで泣けたのはなぜだろう。
■「少女民俗学」を書いた大塚英志も、「制服少女たちの選択」を書いた宮台真司も、なぜあんなに少女のことばかり気にするんだろうか。
■実写のセーラームーンの最近のルナは、さすがにやり過ぎじゃないかと思うんだが、とりあえず見てしまっている私がそこにいるのには困ったもんだ。

 上記の疑問を2つ以上感じたことのある方には、ぜひ本書のご講読をお勧めします。(ササキバラ・ゴウ

日本に「こどもヒーロー」が多すぎるのか、アメリカに「大人ヒーロー」が多すぎるのか

ただもともと、「日本だと子供がヒーローだったり、それを助ける重要メンバー(助手)に入らないとと読者が納得しない。アメリカだと逆に、こどもが強すぎると納得しない」
なんてことも言われるな。例も例外もたっぷりあるが、その流れで「魔女」→「魔法少女」なのかも


結局、横山光輝先生こそ大天才?「後世への影響力」では手塚、藤子、石ノ森以上?

【創作系譜論】
で、自分も多少流れは知っている・・・横山光輝が、アメリカのテレビドラマに出てくる「いい魔女」コメディドラマを翻案し、主人公を掲載誌むけに少女にして「サリー」を書いてヒットしたんでしょ?

てえことは・・・横山光輝「三国志」魔法少女」「超能力少年」「忍者」「操縦系ロボット」・・・・あれ、トータルの功績じゃ手塚治虫超えてね??
漫画評論界には
横山光輝はその影響力は振り返ってみると巨大すぎるほど巨大なのに、なぜか大物として語られることが少ない問題」
というのがありまして、唐沢俊一氏や夏目房之介氏、そしてみなもと太郎氏なんかがそのへんに関する文章を書いていましたな。
たしかに
横山光輝物語」
「『鉄人28号』創作秘話」(「サリー」でも「三国志」でもいいのだが)
横山光輝記念館」
横山光輝文化賞」
などはあってもいいんじゃなかなかなかろうか。横山氏が逝去したとき「国民栄誉賞を!」という声が出なかったのも、自分を含めてうかつ怠慢だった。

そういえば若いころ「トキワ荘のすぐ近所に住んでいた」んだよね。
トキワ荘のレジェンドたちとの交流はどれぐらいあったんだろう?


こういうのを書きながら、あらためてウィキペディアを読むと、やっぱり面白いし新知識がわんさか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E5%B1%B1%E5%85%89%E8%BC%9D
ここでは

鉄人28号』で巨大ロボットアニメの歴史が始まり、『魔法使いサリー』で魔法少女アニメの歴史が始まったと言われ、事実上、これらのジャンルの市場開拓者ともいえる。

と高く評価され「元祖」としての認定もあるしで、具眼の士はいるものだね。
三国志だって、今現在のような日本の大衆人気はなぜか、といわれりゃ
「日本に横山光輝がいたからです」
の答えで、乱暴ではあるけれども1にして10だ。まあ「創価学会のおかげです」とも間接的にはいえればいえるんだけど(笑)。(※掲載誌「コミックトム」は潮出版社。また名誉会長が三国志好き(笑))

ウィキペディアの「魔法使いサリー」も。
「18話で終わる予定が109話にまで延長された」ってすげーな(笑)。でも内容ぜんぜん覚えてないな。