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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

理想の鉄道マン、理想の日本人描いた「カレチ」最終章、ついにタブーの<国鉄組合不正>に踏み込む。

モーニングで地味ながら着実にいいドラマを描いていた、鉄道マンを描く『カレチ』(池田邦彦)。カレチとは「客扱い専務車掌」のことをいうそうだ。
27号からの5週連続の章が「完結編」となり、5巻で終わることがアナウンスされている。
というかこの章のタイトルが「分割民営化」だしな・・・

作者の欄外コメントから

この作品もいよいよ最終章を迎えました。のんきな天然キャラだった荻野カレチも厳しい表情をすることが多くなりました。現実そのままmではないまでも、歴史に沿ってストーリーを展開せざるを得ない本作品の主人公の宿命なのでしょうが、なんとか彼なりの幸福に導いてやりたいです。 池田邦彦

この「カレチ」はやっぱり、実に日本人らしい作品・・・登場人物はそしてやっぱり、日本人らしい人物だ、と思う。
日本人らしい、という言い方を安易に使うのは語弊があると重々分かっているので補足すうと、こういう日本人が平均的にいたり、みんながみんなこうであるわけじゃない。
ただ、これはだれが言ったのかな・・・ケネディか誰かだったかと思うが
「国家は、その国民がどんな人物を敬愛し記憶しているかによっても体現される」という言葉がある。
おそらく、この「カレチ」の主人公である荻野カレチの言動や出処進退は、かなり「日本人の理想」に近いんじゃないかと思うのです。
それはたとえばモーニングの人気キャラクター
島耕作
鬼灯補佐官
凡田夏之介
ムッタ・ナンバ
タッツミー
なんかと比べてもだ・・・比べる対象がいろいろあれだけど(笑)かまわずつづける。

カレチ(1) (モーニング KC)

カレチ(1) (モーニング KC)

この作品は、乗客のために一生懸命になり過ぎる新米カレチ(※)・荻野の成長を、昭和の鉄道旅行のノスタルジーたっぷりに描き出す、読み切りシリーズです。

※カレチ=長距離列車に乗務する、客扱専務車掌。

昭和40年代後半、大阪車掌区──。乗客のために一生懸命になりすぎる新米カレチ・荻野の奮闘と成長を描く懐かしさ一杯の読み切りシリーズ! ちばてつや賞大賞受賞作『RAIL GIRL~三河の花~』と、特別描き下ろし『みどりの昭和の鉄道たんけん』も収録!!
著者について
池田 邦彦
1965年生まれ、東京都出身。駅に住む母子を情愛豊かに描いた『RAIL GIRL~三河の花~』で第54回ちばてつや賞・大賞を受賞。その後は、昭和40年代後半の国鉄を舞台に、新米車掌の成長を描く『カレチ』(読み切りシリーズ)を不定期連載中。

カレチ(4) (モーニング KC)

カレチ(4) (モーニング KC)

その日本人らしさ、日本人の理想とは・・・(独断)
ヘタリア」で日本が擬人化され初登場したとき「特技は空気を読むことです」とのたもうた。
これもみごとに日本ぽくて十分に合格点です。
だが、”日本”の特技としてあえて言うなら・・・これが一番らしい、気がするんですわ。

「特技は グランドデザインや基本目標に関わらず 与えられた持ち場の中で 120%の仕事をすることです」

言わんとすること分かるかな。
つい抽象的になってしまうな。まあ国民性なんておおまかにしかつかめないものだ。
そしてこれはいいほうにも転ぶが、たとえばワタミっぽいなにものか、になるおそれもあるかもしれない。
1、2巻などのエピソードを紹介してもいいのだが、最終章の重要人物である整備職員の描き方を紹介しよう。
 
水のみ器の故障の修理のために、この職員は主人公と同じ列車に乗り込む。

職員「終わったよ」
主人公「お疲れ様でした 運転に支障がある故障でもないのに…出張していただいてすみませんでした ただ今日はこの混みようでしたので 青森まで水が飲めないのではお客さんに申し訳なかったもので」
職員「・・・次で降りて戻るから」
主人公の後輩「・・・ったく、無愛想にもほどがあるよな」
主人公「それは言いすぎだぞ その証拠に この冷水器を見てごらんよ」
後輩「わ! まるで新品みたいにピッカピカ!」
主人公「修理だけで終えずに隅々まで磨き上げる…これぞプロ(職人)の仕事だよ」

やはりこういう振る舞いは、日本人の心情の琴線に触れることがより多い気がするが、それに違和感がある方は職人一般でも、鉄道マン一般でも、プロ一般としてもかまわない。


ともかく「カレチ」は主人公を始めとして、こうやって自分の持ち場で120%以上の仕事を自発的にしていくような人物像を巧みに描いてきた。だから島耕作にはいらっときても、カレチにはいらっとあまり来ない(笑)
本当はもう少し網羅的にいくつかのエピソードを紹介したいのだが、仕方なく略す。

しかしそんな職場でも?ゆえに・・・闇の「国鉄と組合」

ただそういう、古きよき時代の、職務に120%どころか200%の責任感を持っていた時代の鉄道マンを描くとしたら、たぶん絶対に描かれないだろうなあ・・・と思っていた。それが「国鉄カラ出張」だ。
ところが最終章、おもいっきりそれを描いている。最初読んだとき、かなり驚いた。

国鉄の分割民営化に至る経緯と、その際の経営側と組合(複数あり、相互に対立していた)の暗闘は実にどろどろとしていて、しかも謎が多すぎ、全体像としてはとてもつかみきれない。政治側はなにしろ”平成の妖怪”中曽根康弘だ。社会主義勢力(80年代、彼らはいた!!)の力をそぐとの思惑があったとも言われる。
そして”鬼の松崎”の「転向」、国労vs動労、鉄労・・・そしてJRになっても、

マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実

マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実

という作品が描かれるほどに強固な組合組織(動労系)は残り、鬼こと松崎明の存在感は21世紀まで保たれた。
そんな組合の合従連衡まではとても描けない話だとは思うが・・・それでも、上のコマでも十分息苦しさは伝わるよね。
「職場一律にカラ出張」を強制させられて「君だけもらわないのはまずいよ!」「職場慣行には従ってほしいな」「空気嫁」となる、そんな職場は別の意味での”ブラックさ”に満ちているだろう。

これは実は、現在発売されている号のひとつ手前。
今週号ではどうなっているのか、実は忙しくて未読。これから読んでみたいと思います