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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「とくばな刑事 トクガワ」〜特撮番組における「第三の悪役」について【創作系譜論】

【創作系譜論】
【注意】
・今から書き始めるけど、手法を含めて基本的に意味が無い(役に立たない)文章になるので、文章に意味および有用性を求める人はあらかじめ避けること。
・「とくばな」というのはふと思いついた造語で「特撮話」のことです。いわゆる「めしばな刑事タチバナ」のパロディです。
・「めしばな刑事タチバナ」はグルメ?漫画のひとつ。現在ドラマも放送中。内容についてはここなど参照。
http://yamakamu.com/archives/3044639.html
http://yamakamu.com/archives/3094956.html
・このフォーマットで特撮を語ります。ただし断っておきますが、自分の知識はごく一時代の一部分に限られています。むしろそれ以外の知識を読者に補ってもらうことを望むものです。

・アイコンの登場人物はそのままパロディ元を流用していますが「タチバナ=トクガワ」と覚えてもらえば、あとは「後輩刑事」「厳しい課長」「温厚な副署長(はげ)」「取り調べられる容疑者」「婦警」という役回りだと覚えてください。名前は特に気にする必要はありません。

「第三悪役」捜査線

「だからよお、俺はこれが盗品だなんて知らないで買ったんだって」

「1回や2回じゃないだろ!オマエの店が、ずっと盗品の美術品を買い叩いて、高値で転売してたことは分かってるんだ」


「ちがうちがう、俺はあくまでも『善意の第三者』よ。証拠はおありで・・?」

「ふっ、第三者と来たか。・・・”第三”が絡むと話が複雑になるんだよな・・・特撮の”第三悪役”のように」

「なに、その第三悪役って」

「日本の特撮ドラマを飛躍的に高度にした原動力だよ・・・。たとえば、オマエは正義の味方の敵というと、どんなやつらがいると思う?」

「えっ、そりゃあ洞窟みたいなアジトの中心に、悪のボスがいて、幹部がいて、怪人と戦闘員がいて・・・」

「そいつらは正義の味方より強いか?」

「いえ、全然弱いです。毎週負けます」
「負けないと話進まないじゃん」

「ふっ・・・確かにそれが基本だ。だがその基本を覆したのが”第三悪役”だとしたら? つまりだ、正義の味方と基本の悪、そして第三悪役の三つ巴になるんだよ!」

「まるで三国志みたいだな」

「そう、お前さんやるじゃない!評論家の故中島梓氏も、第三悪役が『三国志』的な楽しみを与えてくれる、と仰ってたぞ」

わが心のフラッシュマン (ちくま文庫―ロマン革命)

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「つまり「悪のA帝国」と正義の味方がドンパチやってる縄張りに、突然B帝国が登場するわけですか?」

「いや、そういう例もゼロとは言わないがむしろ・・・よし、少し性根を込めて語るか。つまりだな、第三悪役といってもいろいろ種類があるんだ。(1)1匹狼型(2)雇われ傭兵型(3)組織の不満分子型・・・まあ、それが微妙に組み合わさることがずっと多いがな」

「長くなりそうねえ・・・」

「というか前フリですでに長いから、皆興味ない人は読まなくなってる。大丈夫だ・・・まず”ハカイダー”から始めようか」

「あ、ハカイダーなら僕も知ってますよ。キカイダーのライバル。あまりの人気でその後単独のリメイク映画とかもできましたものね。」

「おい待てよ、ハカイダーって”第三の悪役”か?プロフェッサーギルに作られた、組織内の悪の幹部じゃないか?」

「お前さん、ますますやるね・・・それはハカイダーのルーツ、そしてその”進化”に関係してくるんだ。構造的な問題ともいえるんだよ。実は最近、書店で見た雑誌に『昭和40年男』というのがある。団塊ジュニアのための”レトロ”を狙うという小憎らしい雑誌でな・・・最新号が<悪役>特集で、表紙がブッチャー。

昭和40年男 2013年 06月号 [雑誌]

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そして中のけっこう長い特集に、ハカイダーがあったんだ。ここで、ある”仮説”が証明される・・・」

「仮説ってなんです?」

「この記事を書いてる中の人は、時々思い立ったようにtogetterを作るんだが、「第三悪役」とも多いに重なる・・・というか、同一現象の言い換え的な意味もある「特撮番組の悪の組織内部での内紛・乗っ取り」について質疑したまとめがある。

■特撮ヒーロー番組、「悪の組織で内紛・乗っ取りが発生!」の系譜は?
http://togetter.com/li/421488

で「もとは時代劇。東映特撮は遺伝子的に、時代劇の影響を受けて内容を発展させてきた」という指摘があったんだ。・・・おれは度肝を抜かれたね。年寄りが見るものと馬鹿にしていた時代劇が、特撮のあらたな地平を開拓していったんだ」

「どんなふうに時代劇なの?時代劇の第三の悪役=ハカイダーなの?」

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S.I.C.クラシックス2007 ハカイダー&ハカイダーバイク

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「まあ待て・・・そこにいくには段階を踏まなきゃいかん。まず『武蔵と小次郎』からはじめようか・・・俺なりに『昭和40年男』の記事を拡大解釈しつつ論じるとこうなる。まず悪役は当初、正義の味方が登場したら毎週バッタバッタとやられていけばよかった。それは時代劇でも、特撮でも然りだ。ただその中で、剣豪小説なども影響するのか・・・悪の中に、武力というか個人的戦闘力で、主人公と互角の人物を配置する。それが、ちょっとオリジナルとは違うが『武蔵と小次郎』だな。あえて武蔵を正義の味方と読みかえれば、ニュアンスは分かるだろう」

「時代劇で言うと雑魚の手下がやられた後に、越後屋が奥の座敷に逃げ込んで『先生、おねがいします!』と浪人の用心棒に頼むような感じかね?」

「うわっ、副署長、いつから来てたんです?」

「さすがですな副署長。まず手下達を派手に倒すアクションを見せたあと、今度は一対一の決闘、主人公がやられるかも・・・という見せ場をもう一度作る、そのやり方を踏襲したわけです。しかし、それだけでは収まらなかった・・・。つまりそういう、主人公と(戦闘力で)五分の悪役の見せ場はやはり一対一の決闘。だけど、悪役が一対一というと・・・」

「たしかに不自然だわな。ひとりが主人公と互角なら、ほかの雑魚が加勢すれば全員で主人公フルボッコにできるもんな」

「そう、だから主人公と五分の悪役を敵組織に配置すると、そこから『孤高』とか『悪だがフェア』『悪の親玉とは距離がある』などが徐々に派生していく・・・ハカイダーも、結局そうやって組織を離脱した」

「え、そうなんですか?トクペディアを見てみよう」

・・・「ハカイダー」

キカイダー打倒のためにはいかなる手段も選ばず、自分の目的を妨害するダークロボットを攻撃・・・その一方で卑怯なやり方を嫌う・・・キカイダー抹殺に執念を燃やすが、やがてギルの命令に逆らうようになり(本人は特に逆らっている気はない)、ダークから追われる身となる。宿敵としていたキカイダーをアカ地雷ガマに倒され、42話でゲシュタルト崩壊を起こしてしまい、創造主である(彼はそう思っていた)ギルを殺そうとする・・・

「あ、ほんとだ」

「なるほど、格好いいわね」

ハカイダーはテーマソングもあるんだぞ。上のリンクにもあるが、左利きで左で拳銃を操る、という設定もあってな、そういうところが大物らしかった」

「しかしそうやってみると時代劇は東映以上に、黒澤映画っぽくもないか?「用心棒」「椿三十郎」「隠し砦の三悪人」・・・、どれも悪、敵側に対しては、見せ場となる一対一の決闘シーンがあったぞ」

隠し砦の三悪人」って、舞台を宇宙に変えると展開もプロットもそのまま「スターウォーズ」になるっていうアレですね。その決闘がオビワンvsダースベイダーになるのか・・・

隠し砦の三悪人<普及版> [DVD]

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「もちろん、黒澤映画の影響を日本の特撮屋たちが受けてないはずは無いんです。ただ、上に挙げた『昭和40年男』は、ハカイダー的な第サンの悪役のルーツというか典型を、もっと前の外国映画に求めていまして・・・」

「な、なんだっていうんだ」

「シェーン」(1953年)ですよ・・・

シェーン [DVD]

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極めつけは、何と言っても殺し屋ウイルソンです。寡黙で静かな物腰、黒ずくめの出で立ち、酒は飲まずコーヒーを好むところなどは思わずニンマリとしてしまいます。不気味な殺し屋スタイルのプロトタイプといえますよ。
http://www.nnet.ne.jp/~imaki/favorite1/favorite1.htm

「おお・・・それはたしかに異論は無い。黒澤の”椿”二作は60年代の作品だし、たしかに先行しているな。悪だが雇われの助っ人で、行動様式もダンディ。下品な雑魚とは距離がある」

「ただ、それが原型としてもそこから一歩進んで、孤高の美学ゆえに敵組織からも離れ・・・主人公の仲間になるのも”アリ”かもしれませんが、やはりここは一匹狼として、主人公とはあくまで敵対、というポジションに来た連中を推したい」

「異議なし」

「・・・あ、思い出した。漫画だけど、特撮に影響をそのまま受けた作品だから言っていいですか?『ガイバー』のアプトム、それから『ウィングマン』のキータクラーってそんな感じじゃありませんか?」

「オマエも成長したな。ああいう『漫画でトクサツする』作品は、日本文化大好きの外国人が日本人以上にニンジャやキモノに詳しいように、特撮以上に特撮であろうとするんだ。だからハカイダー的な存在が出ないわけないわな。ちなみにガイバーは、アプトムに加えて、最初に言ったきりまだそこに入っていけない『(2)組織乗っ取り型』のギュオーも同時進行で存在するという、ある意味四つ巴・・・いやガイバー側も分裂してて、敵組織もあのあとああなったからXつ巴・・・の、えらく豪華な構成だぞ」

「だからあの連載、誰もついていけないぐらい長いのか。このスレも誰もついてこない長さになってるけどな」

じゃあまだ最初の構想からは知りきれトンボもいいところだけど「日本の”第三の悪役”はすべてハカイダーを押さえておけばいいということで」

 

「貴様ら!!さっきから黙って聞いておれば!!」

「うわっ、課長!!たたたただいま、すぐ取り調べに戻りますので・・・」

「違う!腹が立つのは、バイオマンの『シルバ』について触れないで話を終わらせようとしていることだ!どう考えても、あれが最強最高の”第三悪役”だろうが!!」

「むう・・・一理ありますな」

「トクペディアで・・・」

「バイオマン」項目から
バイオハンター・シルバ
第37話より登場。銀色のボディが特徴で、シルバの名もそこから由来する(銀=シルバーから。)。バイオ粒子を戦争に利用される恐れがあるとして「バイオ星平和連合」と対立していた組織「反バイオ同盟」の作った殺人ロボット。バイオ星の消滅と共に滅んだと思われていたがバルジオン共々脱出し地球に来ていた。主な武器は反バイオ粒子を放つ拳銃・バイバスターで、後述するバイオキラーガン以上の威力と、0.03秒の抜き撃ちで高い命中率を誇る。また、肘から出すシルバニードルは射出も可能な遠近兼用武器・・・(後略)

「ふっ、四の五の言わずこのテーマ曲を聴くといいわ・・・体温が5度あがるぞ」

「ただシルバは、悪役としての”目的”がなかった。ターミネーターの影響を受けて『そうプログラムされた、だから戦う』というニヒリズムよりさらに前の、完全な無感情・無目的さが、ワンアンドオンリーの魅力はありながらも、流れを作ることがなかった原因でしょうなあ」

「それがいいのだ!野心や欲望は、本来の悪の組織に任せておけばいいし、ライバル心のたぐいは、ほっとけばヤムチャになって終わりだ。まったく別の原理で、正義も悪もかき回す。これが第三悪役のあるべき姿だろう。欲をいえばキン肉マンの完璧超人もこんなふうになってほしかったが」

「ちょっと違うが『カムイ伝』の水無月右近も、水の極意を悟った後は面白い立ち居地にいたな」。あれも悪の野心とは別の位置だったから面白かった」

「・・・ちょっと。おとなしく聴いてりゃ、出世の見込みがなくなった連中がぐだぐだと・・・野心満々の第三悪役の何が悪いのよ。そっちこそ魅力じゃないの」


「あれっ?まさかの覚醒?興味なかったと思ってたのに」

「話を聞いて、あの方も第三悪役だったって気づいたのよ・・・で、あんたら出世できない連中が、サー・カウラー様Disってんじゃないわよ、って言ってるのっツ!」

「あわわわ、トクペディア検索・・・」

「フラッシュマン」項目より
サー・カウラー
第15話より登場。暗黒のハンターとして名を馳せる宇宙人で、20年前に5人を誘拐した張本人。傭兵部隊を率いて暗殺、テロ、謀略などの仕事を請け負うプロフェッショナルだったが、メスに招かれエイリアンハンターとして・・・「その名を聞くだけで宇宙中の生命が震え上がる」と称され・・・策略家としての一面も備える・・・・性格は残忍である反面、親分肌で自分に忠誠を誓う部下に対する責任感は強く、約束を守る義理堅い面もある・・・胡椒をかけられた後にクラーゲンを呼び出した際にくしゃみをしてしまったというコミカルな面が描かれた。最初はケフレンに従っていたが、本来ケフレンとの仲は悪く、メスの乗っ取りを目論む野心を抱いて・・・(後略)

「まさに完璧な悪役じゃない?だから中島梓さんも『わが心のフラッシュマン』なんて評論本を一冊書いたのよ」

「人間型の悪役なんだな・・・俳優は中田譲治か」

「『様』をつけろ、このクズ」


「トクペディア・・・」

中田譲治
「オファーを受けたものの出演を受諾するか悩み、『巨獣特捜ジャスピオン』に出演した友人の高畑淳子に相談したところ、「本当に面白い。絶対にやるべき」と言われたため出演を決意したという。長石は続く『光戦隊マスクマン』でゲスト声優、『超獣戦隊ライブマン』でもレギュラーで中田を起用している。」

「(2)雇われ傭兵型の典型だが、野心満々すぎて乗っ取りもたくらむ(3)組織の不満分子型の要素も併せ持っている・・・実を言うと大本命に近い存在が、意外なところから、推されたな・・・」

「あら彼は、女性が推し役になるのが当然よ。ちなみにロードス島戦記カシュー王とサー・カウラーのデザインは同じ出渕裕さんで、カウラーを演じた中田さんのイメージをそのまま使ったのよね」

「まてい!バイオハンターシルバだって、まさに出渕裕の傑作デザインだぞ!やつが乗り込むバルジオンもな!!」

・・・ん?あまりかっこよくない・・・

このあとレイダー(シャリバン)、ダークナイトダイナマン)、アポロガイスト仮面ライダーX)、トップガンダー(メタルダー)などなどが入り乱れて話は続くのですが、収拾がつかなくなったので、ここにて読みきり。


あとがき

・時代劇や西部劇の影響から、その後の広がり(とくに90年代以降、特撮以外・・・など)とかまでは、とても把握しきれていません。自分の対応できる範囲でしか語れないことはご容赦を。
・で、本来はこういうのを「読む」側に回りたいのですね(べつに「めしばな」フォーマットが必要なわけじゃないですが)。内容の間違いや薄さに不満の人が、こういうのを書いてくれれば、一番うれしい話です。
・にしても、我ながらムダというか「誰が得する」、の文章だなあ!!!コメント欄にも書いたが、うちのブログの読者中5人ぐらいが面白がってくれることを祈ります(笑)

コメント欄より

Crew 2013/05/18 15:47
このサー・カウラーをモデルにしたカシュー王は、最初はカシュー王の部下として描かれたものを、出渕氏が小説版の挿絵でこれを誤ってカシュー王として描いてしまい、以後はこちらが正式なカシュー王像になってしまったと言う経緯がありましたね。
カシュー王が傭兵上がりと言う設定になったのは、このサー・カウラーをモデルにした外見に引きずられて後付でそうなった可能性もあるのかも。
 
gryphon 2013/05/18 21:59
カシュー
え、そんなキン肉星王子のようなとりちがえがあったとは知りませんでした。
 
kit 2013/05/19 02:18
「わが心のフラッシュマン」は、扉に出渕さんのサイン入りのものを持ってます(自慢)。

バイオマン』のシルバは、wikiにも載ってますが出渕さん自身が、「ハカイダーリスペクト」であることを明言してますね
(たしか月刊少年キャプテン増刊のエッセイで、「若いうちからこういうことをしてはいけません」と書いていました。)。

中島梓さんも書いてましたが、オモチャデザインの前提がある善玉側よりも、デザイナーが好き放題できる悪役側のほうが優れたものになりますよね。
平成特撮では、『仮面ライダー龍騎』(傑作)で、ライバル的存在であったのに、最終的に主役の座を乗っ取ってしまった「仮面ライダーナイト」が印象的でしたね。

近藤勇に関するコメントは、別のエントリで使います・・・)