「究極超人あ〜る」効果でスピリッツに目をひさびさに通した、という人もいるだろうから、このタイミングで同誌のミニ連載「くーねるまるた」を取り上げよう。
高尾じんぐという作家の作。他の作品はちょっとよく分からないですが・・・
内容を説明するのは、単純なストーリーながらむつかしくもある・・・
【あらすじ】
大好きな日本に留学を終えたあと、これといった目的もちゃんとした仕事や収入も無いながら滞日をつづけ、安アパートの一室で暮らしているポルトガル人女性・マルタ。
マルタは貧乏なので高価な食材が買えないながら、安い材料を使ったり知り合いからおすそ分けを受け、ポルトガル料理の技術やアイデアも応用してさまざまな貧乏料理を調理。
おいしく頂いて日々をたのしくくらしている。
このマンガにはまず最初に、まんまとしてやられた苦い記憶がある。
連載がはじまってしばらく「なぜ…ポルトガルなのだ?」とアタマをひねりに、ひねった。
やはりマンガに出てくる「XX国出身」は…意味なくどこかの出身だと割り当てることもそれなりに無いじゃないだろうけど、やはり物語上に「必然性」を持たせることが今なお必須な部分もあるはずだ。めずらしい「ポルトガル料理」の紹介?そこからストーリーを展開?かと思ったのだが、たしかにそういう話もあるけど、すべてそういうものでもなさそうだし、そもそもなぜ「ポルトガル料理」なんてマイナーなところを攻めてきたのか・・・この謎が解けなかった。
しかしある日の早朝、暁に鴉がカァと鳴いた一声を聞き、にわかに大悟!
「そうか!!『くーねるまるた』とは、ポルトガル風の名前『クーネル・マルタ』と『食うねる』まるたを、かけたものだったのか!!」
その後、第10話(復活ギャラリーフェイクの前編が載っている号なので、見られる方は確認せよ)でこの異名は公式にストーリーにも登場。
それより早かったとはいえ
よくぞ、このわしをたばかったものよ、
またしても一休のとんちにしてやられたわい!
とじたばた、くやしがったのでした。
このマルタ、「孤独のグルメ」の井之頭五郎と、クッキングパパの荒岩課長と、「花のズボラ飯」の駒沢花と、オバQとオバQとオバQとオバQを合わせたような(※実際、そんな比率なんです!)存在として自作の貧乏料理(ポルトガル風)をたべたり、、街歩きで実在の?名店のものを食ったり、いろんな人におごってもらって怠惰に?いや勤勉に「食っちゃ寝」をしております。
その貧しいながら、楽しそうでのんきな日々を見ていると、「大国(国力)、都市と外国人」ということについても思いがいたる。
つまり、これは研究者や文人墨客にもいえることだが…確固とした目的も意味もないまま「なんかここ、楽しそう!」「ここにいると、いいことありそう!」という外国人(国内では地方人、他郷人でもいい)がふらふらとそこに集まり、のほほんと日々を暮らす…たまにその出身ならではの文化、知恵を披露し、文化がじんわりと混交していく。
そういうのを「国力」「大国」というんじゃないかなあ…なんてことを考えてしまう。
それはある時期から今にかけてのロンドンであり、ニューヨークであり、パリなのであろう。
東京がそれに匹敵する存在になるなら、ありがたい話だ。
そしてたとえば、北京がそういう街になれば、大国としての中国はゆるぎないものになるだろう。香港はいうまでもなく、上海は既に、そう胸をはってもいいところかな?
「うちは資格・技能・収入・財産で、来る外国人を徹底的に選別して大成功しましたが何か?」とかシンガポールに言われそうだが、鶏鳴狗盗の故事(むだめしぐいを飼っておけばいつかは役に立つ)もあろう。
しかしポルトガル人の本領はここ!!衝撃のザリガニ喰らい!!!
しかし、このポルトガル人、ただものではない!!と皆をおどろかせたのはこのエピソード。
金もないのは事実だが、なんとこどものヒーロー、みんなのともだちザリガニを喰らうのである。シーシェパードならぬポンドシェパードがいれば抗議したかもしれないが、まあよく考えればエビである。いやザリガニだからカニ?田んぼの根を切る害獣でもある
寄生虫の問題はあろうが、ゆでれば、焼けば美味ともきく。わが父は少年時代食したとも、自分も小さい頃はそういう料理が食膳に出たとの噂もある。
日本のザリガニ食については
http://d.hatena.ne.jp/kazuyo1014/20121023/1350990528
を参照。
彼女にとってはごちそうの山だ。
まあ何にせよ、ザリガニを食材として普通に食し、そこにサワークリームだなんだを加えて料理にするとはたいしたタマよ…織田信長だったら「そのポルトガル人、安土に教会を置くことを許す!」とかいうところだ。
しかしこの食べられる、いただかれるざりがにの描写、絵にはザリガニへの愛を感じる。
【追記】彼女は文学にも造詣が深いインテリ
このことを追記しないと、ほんとにただの南蛮オバQになってしまう(笑)。たしか日本ではそーゆーことを専攻していたはずで、しばしば日本の、海外の児童文学にも言及する文学的素養をもつ教養人です。ザリガニの画像でも、ちょっと語っていますね。
ひょっとしてひそかに人気作?…まさか「このマンガがすごい!」ランクインあるか?
この作品は、もう少しあとで、しかも別の手法で紹介したかったのだが…今回取り上げたのは「読みきりの復活『あ〜る』の評判はどんなんかなー?」と、ひさびさ「2ch漫画版」を覗いて、スピリッツのスレを見たのが契機
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/comic/1346256582/
なんかやまほど「くーねるまるた」が取り上げられているのだ…
で、11月になるとそろそろ年末の各賞が気になってくる時期・・・というかそろそろ順位も決まり、本作りが始まっているか、投票などが終わる頃だろう。
「まるた」みたいな作品、ざりがにに興味を持ってもらうためにも貴重な存在であることはみとめる。しかしもし万が一、これがランクインとかしたら…なんかアレだが、「それはいかん」のじゃないか、と少し思うのである(笑)。格というか伝統というか…しれは因循姑息のいいぐさで、こういうものにこそ光を当てるべきなのかもしれないが。
そんなことを思いつつ紹介。近日「別の手法で紹介」もやる機会があるだろう。
いや、むしろ、その前哨だと思って欲しい。
【追記】その「別の手法で紹介」完成しました
■だれが一番旨いか、決めやがれ!!「日常料理系漫画GP」ここに開催!
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121107/p3
【追記】ビッグコミックは漫画家と編集部をあつかったショートギャグ漫画「明日にはあがります。」も好調で、いつかはスピリッツのわきを固める双璧となるかもしれない。