INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ドーハの悲劇」の際、イラク駐日大使館から国旗が盗まれた。そのとき、イラクは…

この前「外国国章損壊罪」について調べる機会があった。
この法律は以前から『「礼拝所不敬」と並んで、そもそも日本の憲法上は、表現の自由との兼ね合いで違憲にならないんだろうか?』という疑問が、今なお払拭できないのでね
<関連>
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110303/p2
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110304/p2
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100922/p3
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091226/p4
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080421/p4

この前、21日、twitter小倉秀夫弁護士とやり取りした。

せっかくこの話題(※小倉氏が国旗関連の何かを、他の人と議論していたと記憶)だからお聞きしますが、極端に考えると「外国国章損壊罪」って日本の憲法上、存在自体矛盾が生じませんかね? 公的・私的論の対立なんてのもありますが。@Hideo_Ogura
posted at 17:05:41

Hideo_Ogura あれは、「そういうことをして外国との関係を悪化させるのはやめてね」という話です。RT (略)

実務的にはそうでしょうね。ただ究極の理念的には「対外関係がどうなっても、自由の価値はそれに勝る」「外国もそれを理解すべきだ」というほうが筋は通りそう/QT(略)


さて長い前フリを終えて本題に・・・。それに関連してこの日、
ウィキペディアの「外国国章損壊罪」も見てみたんよ。

そしたら、印象に残る、1エピソードがありました。

1993年(平成5年)の「ドーハの悲劇」の際に、日本のサポーターが駐日イラク大使館の国旗を引き降ろし持ち去った行為が該当する(イラク公館側は“日本人の愛国心の表れ、郵便受けにでも返しておいてくれれば”と告訴しなかった)。

※もっとも犯人が逮捕されたわけでも名乗り出たわけでもないので「サポーターが盗んだ…」は状況からの推論ではある。状況的にはかなり疑わせるものがあるが。、日本のサッカー応援団は国際比較上、それなりにマナーがいいほうだとは聞くものの、それが事実なら1990年代にはこういうアホバカくされげどうも、一部にはいたらしい、ということだ。時代はJリーグの発足直後、まだサッカーの応援団文化も”成熟”にはほど遠かったことも関係するかもしれない。


ただ、本当に犯人は日本応援フーリガンか?、は置いておいて、イラク大使館の「郵便受けにでも返しておいてくれれば」という言葉はなかなかのものだな。国を代表する大使館は時には強硬姿勢を見せる必要も戦略上出てくるし、逆にこういう”寛大さ”を見せるのも戦略の一環だったりするけど、ともあれこうやって過去の事例を読んでいた一読者に強い印象を持たせて、紹介しようと思わせるものがあった。
時は湾岸戦争からわずか2年後、フセイン政権はその敗北で崩壊するという予測をくつがえし、圧倒的な強権の弾圧でクルドの反乱などを押さえつけて地固めをした…その直後。大使館も旧イラク政権の人々ということになります。この当時の駐日大使などは、いま、どこで何をしているのだろうか。調べていけば分かるのだろうけど。
また、1993年といえばまだWin95 もなく「インターネット前史」。単純な私の検索レベルでは、上の顛末を補強するような資料は見つからなかった。ウィキペディアも、上の引用エピソードには脚注、出典の明記はない。
コピペを繰り返した形の記事が「産経新聞」の名であったけど。

イラク大使館国旗盗まれる W杯最終予選直後
1993.11.05 東京夕刊 11頁 第1社会 (全352字) 
 東京都港区赤坂の在日イラク大使館のポールに掲げてあったイラク国旗がサッカーワールドカップ最終予選終了後の先月二十九日未明、何者かに盗まれていたこと が五日までの赤坂署の調べで分かった。  同署は日本代表がイラク代表と引き分け、ワールドカップ出場への道が閉ざされ た直後の犯行のため、悪質ないたずらの可能性もあるとみて捜査している。

 調べによると、ポールは大使館前の道路に面して立っており、高さ約十メートル。さくなどがなく、だれでも近付けるという。国旗は二十四時間掲げられていた。  最終予選後の二十九日午前二時ごろ、イスマイル・サイド・アルカダヒ臨時大使 (五八)らが大使館付近でJリーグのテーマソングを歌う若者たちの声を聞いていた。朝になって国旗がなくなっているのに気づき、同日午前十時ごろ、赤坂署に連絡した。  産経新聞

「郵便ポストに…」という発言があるとしても後日談だろうから、単純な事件記事には載ってないだろうな。

国家の「ジョーク力」について

大使館の国旗が盗難されるというのは深刻な問題で「ジョーク力」というのも変だけど、広い概念だと思ってください。

国民の税金による艦船の衝突被害だって、深刻な問題なのだが、ここで責任者がこう語ったことを論難する人はいないだろう。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080305/p4
「国家の「ジョーク力」」というのは、何度か書いたけど、
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20071221#p4
たとえば中国なんかがこのへんの機微を抑えてくると、さらに大国としての存在感が増してくると思う(米国留学生などが多数いるので、そういう流れにおのずとなるだろう)。